第22話

 これは操っているというより、記憶操作っぽいわ。とわかった所でどうする事も出来そうにないけど。


 「蹴ったのは、僕です」

 「え……」

 「待ちなさい。いきなり何を言い出すのですか」


 マイステリー様の驚きの発言に、学園長も驚いてそう言った。

 どういう事? マイステリー様には効いてないって事? 私を庇ってくれてるって事?

 それとも、これも作戦?


 「あなたは、婚約者より彼女を庇うのですか?」


 先生がそう言った。


 「婚約者ね。彼女が勝手に言っている事だろう?」

 「な、何を言ってます」


 先生が驚いている。

 あれ? 婚約者じゃないの? いやでも、カーリア様もそう言っていたわ。どういう事?


 はぁ……と、マイステリー様がため息をついた。


 「では、今すぐ、父上に聞くと言い」

 「そんな必要はない」


 学園長がそう言いきった。


 「私は、くれぐれもあなたとあなたの婚約者を頼むと直接言われました」

 「そんなわけあるか……」


 ボソッとマイステリー様が呟いた。


 「……学園長。マイステリーとルミージュ嬢が婚約したのはいつでしょう? 学園に入ってからですか?」


 突然、リゾール殿下が学園長に問う。


 「そこまでは、知りませんが……」

 「では、いつ彼のお父上とお会いになって聞いたのですか?」

 「いつ? ついこないだです」

 「こないだとは? どれぐらい前ですか?」


 学園長の答えに、さらにマイステリー様が問うと、学園長は顔をしかめた。


 「そんな事どうでも宜しいでしょう」

 「どうして、そこは答えて下さらないのですか? 覚えてないからですよね? いつ、どのように聞いたのか定かではない。でも聞いた記憶はある。そうではないですか?」


 マイステリー様がそう言うと、ばつが悪そうに学園長は頷いた。


 「申し訳ありませんが、そこら辺の記憶があやふやなのです。ですが、確かに聞きました」

 「あやふやか……。マリニール。君がユリーナから話を聞いたのはいつだ?」


 リゾール殿下が今度は、お姉様に聞いた。もしかして、リゾール殿下には魔法が掛かっていない?


 「え? 昨日よ。ユリーナの様子が変だから問いただしたの」

 「では、その話を私にしたのは、なぜ今朝なのだ?」

 「え? もう遅かったからかしら……?」

 「帰って来てすぐに問いただしたのだろう?」

 「はい。そのはずです」

 「ずっと変だとは思っていたが、つじつまが合っているようで、どことなくおかしいな」

 「どこがですか?」


  学園長の問いに、リゾール殿下は皆を見渡してから答えた。


 「昨日の事なのに、昨日は誰もその事に触れていない。親からも抗議はなかったのだろう?」

 「そ、それは、彼女が黙っていたからでしょう」

 「それは、おかしい。さきほどあなたは、私にこう言ったのですよ。マイステリーが歩けないルミージュ嬢を家まで運んだと――」


 校長がハッとした顔つきになる。

 え? そういう話だったの?

 もしかして、術に掛かっているのって、お姉様と学園長と先生の三人だけかもしれない。

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