第20話

 ビールドリィ子爵家。魔力重視の家系で、娘は爵位が高い所に嫁に出し、地位を確立して来た。噂では、厳しく魔法に関して指導されているとか。

 それが、ルミージュ嬢のビールドリィ家の特徴。


 そして、アイスグリード伯爵家。代々魔法が扱える家系で魔法を重んじていて、魔法に長けた者が家名を継ぎ、侯爵家以上の権力を持っている。

 ここが、マイステリー様とカーリア様のアイスグリード家の特徴。


 このことからルミージュ嬢がマイステリー様と婚約するのはわかるけど、カーリア様が後を継がずに、嫁に行った事が確かに腑に落ちないわね。

 マイステリー様が、魔法を使える事をご両親は知らないのだから。

 カーリア様の話からすると、ルミージュ嬢との婚約の話が出るまでは、カーリア様が継ぐみたいだったし。


 ルミージュ嬢が言った通り、ビールドリィ家が裏で何かしらの手を回したのかしら?

 この国は、爵位だけではなく魔法の力でも優劣がつく。だからこそ、ビールドリィ家は、のし上がって来た。


 だからと言って、私を学園から追い出す事なんて出来るのかしら?

 まあ私のメンタルがやられて、自主退学ならあり得るかもしれない。それをするって事かしら?


 学園では、爵位より魔法の優劣がモノを言う。さすがに王太子にたてつく者はいないけど。

 だから私に言いに来たのですからね。


 私が学園からいなくなる前に、マイステリー様を直接説得しないと。使えると認めさせれば、後は池の封印を施せばいいのですから。



 こないわね……。

 私は、マイステリー様をミャと出会った場所で待っていると呼び出した。けど、来てくれない。

 勝手な事をしたのを怒っているのよね。彼の意に反する事ばかりしてきたものね。


 「彼は、来ないわよ」

 「え? ルミージュ嬢!?」


 なぜ彼女がここに?


 「あなた、私の忠告を聞く気がないようね」

 「ごめんなさい。でも、マイステリー様に使える様になって頂かないといけないから……」

 「だから! それが余計な事だと言っているのよ! 彼の能力が目覚めたら私が権力を握れない! あなた、昨日の私の話しを聞いて理解してなかったのね! 今までにない絶好のチャンスなのよ? 実権を握れるなんてそうそうない」


 な、何を言っているの? 本当に乗っ取る為にマイステリー様と婚約をしたというの?


 「本当にそれが出来ると思っているの?」

 「出来るわよ。表舞台に立つのはマイステリー様。私が裏で操るの。今から見せてあげるわ。あなたを葬ってあげる」

 「え!」


 葬るですって!! どういう事? そんな事が出来る魔法があるって事なのかしら?

 でもまって、それならマイステリー様を最初から操ればいいんじゃない? 私に出来るなら出来るわよね。


 「嘘でしょう? そんな事が出来るならマイステリー様を手懐けているわよね」

 「ふふふ。どうかしらね~。明日が楽しみだわ」


 え? 明日? 彼女は一体、何をする気なの?

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