第19話

 自宅謹慎になった私は、一日ミャと遊んで過ごす。

 ミャがいてよかったわ。


 うん? あれ? よく見ると小さな水晶? がリボンに縫い付けてある!?


 「ミャ、ちょっとごめんね」


 私はリボンをほどいた。

 やっぱりだわ。直径三ミリもないビーズが縫い付け合った。だれが? カーリア様?


 リボンを裏返して驚いた……。


 ――好きな人と添い遂げられますように


 え? 好きな人? 添い遂げる!?


 カーリア様は結婚するからマイステリー様が書いた?

 私の事? ま、まさかね。でも……どうしてこんなところに書いたのかしら?

 私は、リボンをミャに着けて戻した。

 願掛け?

 ミャにお願い事とか?


 はぁ。リボンを外さなければよかった。また想いがぶり返して来た。

 マイステリー様が好きという想いが。



 一日だけの謹慎が終わり、行きたくないけど次の日学校へ登校した。

 やっぱりだけど、女子全員がルミージュ嬢についているので、ポツンと私ひとりだった。


 そして放課後。ルミージュ嬢が私を呼び出した。


 「あなた、リゾール殿下に嘘を吹き込んだわね」


 二人っきり。クラスメイトもいない。責め立てるとかではないみたいね。


 「そんな事はしてないわ」

 「だったらなぜ、マイステリー様に殿下が魔法を扱えるはずだと言いに来たのよ」

 「それは、私がお願いしたからだと思うわ。詳しくは話せないけど、マイステリー様にはあるの。それに目覚めてもらわないといけないと思って……」

 「あなた、何様のつもり? 魔法を扱えないあなたが、マイステリー様が魔法を使えると見抜いたと? どうやって信じ込ませたかは存じませんが、彼を振り回すのをやめて頂けますか?」

 「振り回すって……」

 「とういうか、迷惑よ。いい? マイステリー様には魔力はない! 彼の家系はね、後を継いだ魔力がある者が、権力を握るのよ? この意味わかる? だからあなたは絶対に認めてもらえないの。カーリア様をアイスグリード家から追い出す事ができたのだから、後は彼が学園を卒業するだけなの。邪魔しないでくれる?」

 「え? 追い出した?」


 どういう事? 結婚して嫁ぐのではないの?


 「別に言ってもいいわよ~。でもね、今まで嘘をついてきたあなたが言っても誰も信じてくれないわ。というか、あなたを学園から追い出してやるから。せめて、学園を卒業したいのなら私の指示に従うのね。あなたの姉が学園を卒業すれば、あなたを守ってくれる者などこの学園には、いないのよ?」

 「え……」


 ルミージュ嬢がクスリと笑う。


 「でもまあ自滅してくれるなんて、本当におバカなのね、あなたって。いい? これが最後の忠告。彼にまとわりつかないで!」


 そう言うと、ルミージュ嬢は去って行った。

 マイステリー様を好きではなどころか、利用しているって事? 自分が権力を握る為に?


 どうしたらいいの私は。

 ルミージュ嬢の言う通り、お姉様が学園を卒業すれば私を庇ってくれる人はいなくなる。


 ――だったら居る間に、マイステリー様を守るのよ!

 私でなくてもいい。彼女と婚約破棄してもらって、魔法が使える人に婚約者になってもらう。もうそれしかないわ!

 本当は私がなりたいけど、マイステリー様の幸せの為よ!

 カーリア様。嘘の代償は大きいってのは本当ね。

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