第16話

 結局昨日もあまり眠れませんでしたわ。

 逃げ帰った私は、そのままディナーも食べずに部屋にこもってしまいました。

 あぁ、マイステリー様を一人残して帰って来てしまいましたわ。先生に何かいわれてかもしれない。謝った方がいいかしら? でも怒って口を聞いてくださないかもしれませんわね。


 「おはようございます」


 教室に入ると、なんだかいつもと雰囲気が違う。

 ルミージュ嬢の周りに人が集まっている?


 「ユリーナ嬢、聞きたい事がありますわ」

 「昨日、マイステリー様とお二人である教室にいらしたとか。見かけた方がいらっしゃるのですよ? 知っておりますわよね? ルミージュ嬢の婚約者だと」


 見られていたの? 話は聞かれてはいないみたい。よかった。


 「あ、あれは魔法の練習と言うか……」

 「出来ない者同士で仲良くやりましょうって声でも掛けたの? 酷いわ。グスン」

 「ルミージュ嬢は、ショックで泣いておいでなのよ!」


 まさか、こんな事になるなんて!

 まずいわ。マイステリー様がまたお姉様に何か言われるかもしれない。


 「聞いて来たわ!」

 「どうだった?」

 「先生の話では、ルミージュ嬢が言ったって言っていたわ。それで二人で授業を受けたと……」


 先生に聞きに行ってくるなんて……。嘘がバレた。


 「私、そんな事言ってないわ! だいたい、マイステリー様は魔法は使えませんのよ! だから婚約者に私が選ばれたのよ!」

 「信じられないわ。ルミージュ嬢の名を語るなんて!」


 そうよね。悪いのは私だわ。


 「ごめんなさい」

 「何故、こんな事したのよ!」

 「……一緒にやりたくて」

 「あさましいわね」

 「一緒にやりたい気持ちはわかるわ。でも、私の名を語ったのは許せないわ。自分で言っても来てもらえないから私の名を語ったのでしょう? 卑怯だわ! マイステリー様を嵌めるんて!」

 「え……」


 そ、そうだわ。私、マイステリー様を嵌めたんだわ。そうよね。だからあんなに怒っていた。


 「本当にごめんなさい」

 「僕は、怒ってないからもうそこら辺にしてあげて」


 え? マイステリー様。


 「マイステリー様は、お優しいのね。感謝するのね!」

 「ありがとうございます。ごめんなさい」


 もう一度、頭を下げ謝った。そして、いたたまれなくなって教室から逃げ出した。

 もうだめです。

 私も嘘つきだから……カーリア様、ごめんなさい。

 自身の欲に溺れた結果よね。

 彼女達の言う通り。悪いのは私だわ。それでもマイステリー様はかばってくれた。でもそれは、痛々しすぎる私を助けてくれただけよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る