第14話

 どうして私? どういう事?

 ゲームでは、ヒロインであるカーリア様は未来が見えた。最後はそうだったかもしれない。だから回避できた。

 けどどうしてこの話を私に? リゾール殿下に話していないの?

 やっぱり戦争が起きるのね。


 「戦争が起きるのね!」

 「戦争? ……いえ、違うわ。どこからそんな発想が出てくるのかしら?」


 カーリア様に笑われてしまった。

 よく考えれば、そんな内容なら陛下に言うわよね。私に言っても仕方がない。


 「では、一体どんな危機が迫っているのですか?」

 「池よ。知っている? 学園にある池のお話」

 「はい。何でも恋の成就とか……」

 「えぇ。そう信じて水晶を投げ入れる。強い想いが詰まった水晶をね。それには、魔力も込められているの。それが暴走するのよ」

 「え!?」

 「気がつかないうちに魔力を込めちゃっているのよ」


 なるほど。ロッドに魔力を込める様な感じなのかしら? でもそれと私とどんな関係があるのかしら?


 「私は何をすればいいのでしょうか?」

 「マイステリーの心を開いてほしいの」

 「え!?」

 「やっとわかったのよ。マイステリーには、封印する力があるの。でもその力を心を閉じてしまった事で封印してしまっているの。きっかけがないと解けないわ」


 解けないわって。私にどうやって解けというのでしょう?


 「マイステリーは、あなたに惹かれているみたいなの」

 「え……」


 っポッと、顔が熱くなるのを感じた。

 その話は本当かしら。気づいたからミャを私に預ける様に言ったのかしらね。


 「お願い。あの子に本物の愛を教えてあげて! 勿論、私も両親も注いだのよ。でも、色々な期待や私のやきもちやらで、上手く伝わらなかった」


 愛ですって!?


 「……む、無理です! 私は、カーリア様が思っているような人間ではないんです! 酷い女なんです」


 そうよ。理由はどうであれ、自分の姉の婚約者を奪おうとした。姉を悪役令嬢にしようとした。

 そして、ルミージュ嬢からマイステリー様を奪いたいと思ったのです。


 「ユリーナさん。自分を責めないで。こうなったのは、私のせいですから。嘘で変えてしまったのです。未来が見える者が大きな嘘をつく代償です」

 「え……」


 それって、ヒールの事なの?


 「あなたしかもう頼れません。ルミージュ嬢では、マイステリーの心を開かせる事はできないのです。自分が一番ではなく、相手を一番に考える者ではないといけないのです。私は、数か月後にお嫁に行きます」

 「え!」

 「父が、マイステリーを跡取りにする考えは変わらず、嫁になるものに魔法を扱える者をと、ルミージュ嬢と婚約させたのです。結局、嘘をついて内緒にさせたけど、意味がなかったのです。当たり前よね」

 「あの……マイステリー様が、魔法を使える事を両親に言ったりはしなかったのですか?」

 「……言おうと思いました。ですが、言っても使えないフリするからと言われて。結局、保身に走ったのです。ごめんなさい。あなたに押し付ける形になって」

 「いいえ。やります。私!」


 そうよ。よく考えれば、お姉様からリゾール様を奪おうとしたのは、この為じゃない! 対象がマイステリー様になっただけ。

 なんて私は、都合がいい女なんでしょう。でもこれで、国を救えるんだわ。

 マイステリー様とも……。


 「ありがとう。ユリーナさん」


 カーリア様は、深々と頭を下げて帰って行った。

 私は、少し気が楽になったわ。酷いわよね。彼を奪う口実が出来たって喜んでいるのだから。

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