第11話

 「では、ロッドに力を込めるイメージでやってみましょう」


 魔法の授業の実践が始まった。

 魔法自体ができなくても、魔力さえあればロッドを通して魔法を使える事がある。それで魔法を使えれば、魔法クラスへと進級する。


 取りあえず、ロッドに力を込めるのよ! 何でもいい。水でも火でも出て!

 だけど虚しく何も起こらなかった。


 「やっぱり無能令嬢だったわね」


 ボソッとルミージュ嬢が言った。

 わかってはいた。お姉様も魔法が扱えなかったのだから。

 しかたがありませんわ。予知夢とか言ってまずは、お姉様に話してみましょう。


 「ユリーナさん、ちょっとよろしいでしょうか?」

 「はい。なんでしょうか、先生」

 「そのロッド見せて頂いて宜しいかしら?」

 「はい。どうぞ」


 渡したロッドを先生は、色んな角度から見ている。なんだろう? 別に不正はしてないけど。まあ、魔法を扱えなかったんだから、そんな事は思わないか。


 「やはりそうだわ。あなた魔法の才能はあるようよ」

 「え!? 本当ですか?」

 「目に見えない魔法も存在するの。そう言うのは、今回の授業ではわからないの。違う方法を使ってみましょう。他の先生に相談してみます」

 「はい! 宜しくお願いします」


 やったぁ。これで止められるかも! 希望が見えてきたわ。


 「嬉しそうね」


 またルミージュ嬢だわ。どうして、私を構うのかしら? もうマイステリー様に近づいていないと言うのに。


 「期待しない方がいいと思うわよ。どうせ、ロッドがないと使えないのですから。私とは違うわ」


 そうよね。彼女は魔法を使える。


 「マイステリー様を支えるのは私の役目。婚約者の私のね! 魔法を使えない彼を支えるのよ!」

 「え! 使えないって……」


 そういえばマイステリー様は、私と同じくロッドを持って、今日の授業を受けていた。しかも何も起こってない。私と同じ。ううん。先生にすら素質があるってばれていない!? もしかして誰も知らないの?


 なぜ隠しているのかしら? 家族にも隠しているのかしら? でないと先生は知っていなくてはおかしいわよね。

 それなのに私にはヒールを使ってくれた? なぜ?

 婚約者さえ知らないのに。


 ――ダメ、自分が特別扱いされているなんて思っては!

 優しいから治してくれたのよ。そうよ。そうでなければおかしいわ!


 「彼も婚約者の私と結婚したいはずよ。お姉様に家を継がせない為にね! あなたには無理でしょう?」


 え!? 後継ぎ問題? どういう事?

 あ! そうか。ゲームでは、ヒロインはリゾール殿下と結婚するから必然的に、マイステリー様が後を継げたけど、そんな問題が起きていたなんて。


 ルミージュ嬢は、マイステリー様が後継ぎにと思っているようだけど、彼女にも隠しているのだからマイステリー様は、後を継ぎたくないのかもしれない。

 でもどうしてかしらね。

 っは! 私が考えるのは、彼の事ではないでしょう。でも、気になるわね……。

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