第9話
寒い。全身の震えが止まらない。ここはどこ? 助けて――。
「ユリーナ。目を覚ましたようね。大丈夫?」
「お姉様」
ここは、私の部屋だわ。そっか。助けがちゃんと来たのね。
「覚えてる? 池に落ちたのよ」
お姉様の言葉に、覚えていると頷いた。
「そう。お話は後で聞くは、まずはゆっくり休んで、体調治しましょう」
私は、熱があるんだと思う。布団をかぶっているのに寒い。
そういえば、どういう話になったのかしら? 私がルミージュ嬢を突き落とした事になっているのかしら?
どちらにしてもリゾール殿下のヒロイン役が、遠のいたかもしれないわ。
それにマイステリー様も驚いたでしょうね。私はきっと、彼女を突き落とした事になっているだろうから。嫌われたかしら? だとしたら……どうしよう。
マイステリー様にどう思われているか気になるなんて……。
彼を諦めなきゃ、婚約者がいるのだから。でもどうせ奪うなら――。
何を考えているの私は!
お姉様からリゾール殿下を奪うのは、この国の未来の為でしょう!
でも実際は、どうしてこの国が滅びていくのか原因は知らないのよね。それがわかれば、二人が婚約したままでも問題ないのでは……。
だめだわ。熱で頭がおかしくなっているわ。
今は、何も考えないでおきましょう。熱が下がれば、ちゃんとした思考が戻るわ。
□
「顔色もよくなったし、熱も下がって今日一日休めば大丈夫ですって。お医者様が言っていたわ」
「うん。ごめんなさい。心配かけて」
「一体何があったの?」
「………」
本当の事を言っても信じてもらえるのかしら?
それよりも相手と真逆の話だったら、勘違いですまないからどちらかが大ウソつきになるわ。
「答えられない?」
「……わ、私が落ちそうになって、それを助けてくれようとしたルミージュ嬢も一緒に池に落ちてしまわれたの。あの、ルミージュ嬢にお怪我はなかったかしら?」
「彼女は、大丈夫よ。熱も出さず元気だわ」
「よかった……」
「もう寝なさい。夕飯は一緒に食べましょう」
「はい。お姉様」
お姉様は、何も言わず出て行った。
ルミージュ嬢がなんて言っているか教えて欲しかったな。それにしても頑丈な体なのね、ルミージュ嬢って。
マイステリー様に、看病してもらってすぐに元気になったのかもしれないわね。
もう一層の事、私にも婚約者が出来ないかしら、そうしたら――。だめだわ。熱は下がったはずなのに、また変な事考えてるわ。
どうしたらいいのかしら、この想い。
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