第8話

 はぁ……。


 「どういたしましたの? 先ほどからため息ばかり」


 いけない私ったらお食事中だと言うのに。


 「いえ。何でもありませんの」

 「そう。それならいいのですけど。何でも相談してね」

 「はい。ありがとうございます、お姉様」


 こんな優しいお姉様からリゾール殿下を奪うなんて出来ない……。ううん、ダメよ。何かきっかけを探さないと!

 とりあえず思いつく場所へ行ってみるよの。そうすれば、何がどう変わっているかわかるはずよ。


 次の日、色々イベントが起こる場所へと足を運んだけど、イベントが怒る気配がない。というか、他の攻略対象者に全然遭遇していない気がするわ。

 ま、まさかと思うけど、一年遅れているのはリゾール殿下のイベントだけ?

 だとしたら絶望的だわ。マイステリー様とすり替わっているのだから。

 他の対象者でも二人の関係が壊れたはず。なのに、私は安堵している。


 ダ、ダメよ。危機感を持たなくちゃ。

 ヒロインがいないから色々変わっているだろうし、やっぱり一番いいのは、お姉様について歩くことかしら?


 って、ここ……池。色々考えて歩いていたらここに来てしまった。

 マイステリー様と初めてあった場所。実際は教室で会っていたのだけど、あの時はヒロインの事で頭がいっぱいだった。

 ここは、ヒロインとリゾール殿下が出会う場所。足を怪我したリゾール殿下をヒロインがヒールで治癒して治す。そこから紡がれていく。そしてお姉様が、嫉妬に狂い出す始まりの場所だった。


 「私は、どうしたらいいのでしょうか?」

 「ドロボウ猫」

 「え?」


 振り向くと何故かルミージュ嬢が叫びながら走って来た。そして、身を投げた!?


 「きゃー」


 ジャバーン!

 え~~!! 何やってるのこの人は!


 「きゃ……ここ、深い!」

 「ちょっと大丈夫!? 誰か~誰か来て。掴まって!」


 まさかと思うけど、私に落とされた事にしようと飛び込んだ訳ではないよね? そこまでお姉様は、していなかったわよ!

 出した手をぐいっと引っ張られた!


 「きゃー!」


 ジャパーン!

 引っ張られた私も落ちた。いえ、落とされた!

 なぜ? ちゃんと謝ったじゃない!


 本当にここ深いわ。足が届かない。制服が濡れて重くて体が思う様に動かない。

 助けてお姉様。助けて……マイステリー様!


 そう思った時、マイステリー様が助けてくれた!?

 もう私、重症だわ。認めるわ。彼が好き。好きになっちゃたんだわ。

 でも……彼には婚約者がいる。ううん。私はリゾール殿下の婚約者になるのよ。諦めないといけないの。

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