第4話
「もうあなたは。探しましたのよ。こんな所で何をしていたの?」
「えっと……この池の噂を聞いて」
「噂? あなた、好きな方がいたの?」
「え? なぜですか?」
そう言うと、お姉様とリゾール殿下は顔を見合わせる。
「この池は、恋の成就を願うところだと聞いたが……。誰が流した噂かは知らないが、そんな魔法はないよ」
リゾール殿下は、微笑んで言った。
私が知っている内容と違うわ!
魔法の池で、強く願っている事が叶うと聞いた。いや、ゲームではそういう設定だったのですが?
何かこの世界って、微妙に私の知っている世界と違うのかしら?
「ユリーナ、学園の方がみんな良い人とは限りませんわ。気をつけなさい」
「違います、お姉様。ちょっと転んで、足を見て頂いていたのです」
「あらでも、全然平気そうではないですか」
立ち上がった私を見て、お姉様が言った。あ、治してもらったから。どうしよう。
「そ、それは……ちょっと痛かっただけで何ともなかったようです。それに彼はクラスメイトです。お姉様」
「そう。わかったわ。では今日はもう帰りましょう」
「はい」
大丈夫。焦らなくても彼には明日また会えるのですから。
□
「おはようございます。昨日は、ありがとうございました」
「おはようございます。あ、えっと、じゃちょっと用事がありますので……」
「え?」
そそくさと、マイステリー様はその場を逃げる様に去って行きました。
ヒロインのお姉さまに話して、近づくなと言われたとか? ってあり得ないか。私を避ける様に言う理由がないものね。
「ユリーナ様。マイステリー様とお知り合いですの?」
と、ほぼ全員が私を取りかもむ様に集まった。
もしかして彼は、有名人だったのかしら?
「昨日、ちょっと……」
「昨日? 何がありましたの!?」
「え……」
何、この気迫!
みんな、興味津々ではないですか。
「あの皆さまは、マイステリー様をよくご存じで? お姉様がいらっしゃいましたよね?」
「マイステリー様のお姉様は、素晴らしい魔法使いですのよ」
「なので、彼を狙っている令嬢は数知れず。二、三年生お姉様方もってお話ですわ」
「そうなのですか!」
うんうんと皆頷いた。
やはり、お姉様は魔法に長けた方! いい情報を手に入れたわ! もしかして、ゲームとは容姿が違うのかもしれませんわね。
「あの、お姉様のお名前ってご存知?」
「え? お名前ですか? カーリア様ですよ。知らないのですか?」
「あ、いえ。えーと……ど、ど忘れしてしまいまして」
「ですわよね」
って、皆さまはなぜ知っているのでしょうか!?
いえそれよりも、早速探しにいかなくてはいけないわ。
二、三年生は、一般クラスと魔法クラスとに分かれるのですからリゾール殿下と同じ、魔法クラスですわね。
あ、容姿の事も確認した方が……いや、これを聞いたらおかしいわね。言っている事が矛盾してしまうわ。
十人ほどしかいないのですから探しましょう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます