第4話

 「もうあなたは。探しましたのよ。こんな所で何をしていたの?」

 「えっと……この池の噂を聞いて」

 「噂? あなた、好きな方がいたの?」

 「え? なぜですか?」


 そう言うと、お姉様とリゾール殿下は顔を見合わせる。


 「この池は、恋の成就を願うところだと聞いたが……。誰が流した噂かは知らないが、そんな魔法はないよ」


 リゾール殿下は、微笑んで言った。

 私が知っている内容と違うわ!

 魔法の池で、強く願っている事が叶うと聞いた。いや、ゲームではそういう設定だったのですが?


 何かこの世界って、微妙に私の知っている世界と違うのかしら?


 「ユリーナ、学園の方がみんな良い人とは限りませんわ。気をつけなさい」

 「違います、お姉様。ちょっと転んで、足を見て頂いていたのです」

 「あらでも、全然平気そうではないですか」


 立ち上がった私を見て、お姉様が言った。あ、治してもらったから。どうしよう。


 「そ、それは……ちょっと痛かっただけで何ともなかったようです。それに彼はクラスメイトです。お姉様」

 「そう。わかったわ。では今日はもう帰りましょう」

 「はい」


 大丈夫。焦らなくても彼には明日また会えるのですから。



 「おはようございます。昨日は、ありがとうございました」

 「おはようございます。あ、えっと、じゃちょっと用事がありますので……」

 「え?」


 そそくさと、マイステリー様はその場を逃げる様に去って行きました。

 ヒロインのお姉さまに話して、近づくなと言われたとか? ってあり得ないか。私を避ける様に言う理由がないものね。


 「ユリーナ様。マイステリー様とお知り合いですの?」


 と、ほぼ全員が私を取りかもむ様に集まった。

 もしかして彼は、有名人だったのかしら?


 「昨日、ちょっと……」

 「昨日? 何がありましたの!?」

 「え……」


 何、この気迫!

 みんな、興味津々ではないですか。


 「あの皆さまは、マイステリー様をよくご存じで? お姉様がいらっしゃいましたよね?」

 「マイステリー様のお姉様は、素晴らしい魔法使いですのよ」

 「なので、彼を狙っている令嬢は数知れず。二、三年生お姉様方もってお話ですわ」

 「そうなのですか!」


 うんうんと皆頷いた。

 やはり、お姉様は魔法に長けた方! いい情報を手に入れたわ! もしかして、ゲームとは容姿が違うのかもしれませんわね。


 「あの、お姉様のお名前ってご存知?」

 「え? お名前ですか? カーリア様ですよ。知らないのですか?」

 「あ、いえ。えーと……ど、ど忘れしてしまいまして」

 「ですわよね」


 って、皆さまはなぜ知っているのでしょうか!?

 いえそれよりも、早速探しにいかなくてはいけないわ。

 二、三年生は、一般クラスと魔法クラスとに分かれるのですからリゾール殿下と同じ、魔法クラスですわね。

 あ、容姿の事も確認した方が……いや、これを聞いたらおかしいわね。言っている事が矛盾してしまうわ。

 十人ほどしかいないのですから探しましょう!

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