A Queen of the night ~ 月夜に咲く花に恋をした ~
ao
第1話 プロローグ ある喫茶店で――
カラン、カラン。
扉についた小さくシックな鐘が音を鳴らす。
「いらっしゃい」
「こんにちわ~」
爽やかに微笑み入って来たのは、常連の鈴木さんだ。
おかっぱのような髪型に、きらりと大きなピアスをつけ女性らしく洒落た白にブルーのラインが入ったストライプ模様のシャツに、パンタロンのような黒のズボンを合わせた彼女は、カウンターに座ると「いつもの」そう言った。
彼女の”いつもの”を作るため厨房に入る。
卵を二つと厚切りにカットしたベーコン。それと一斤の角パンを厚さ5センチ分はあろうかと言う大きさに裂き、バターをたっぷり塗ってオーブンに入れた。
パンが焼き上がるまでに、卵を溶き塩と砂糖を入れ更に混ぜてから加熱したフライパンに流しこむ。
じゅ~と焼ける音がなり卵の香りが漂い始めれば、フライパンの中をかき混ぜスクランブルエッグにする。
それを皿に載せ色味の強いスクランブルエッグに合わせるように、冷蔵庫から取り出した作り置きのポテトサラダとキャベツ、ニンジンを刻んで混ぜた生野菜を皿に乗せ、更にカットしたトマトを飾った。
フライパンを再び過熱させ、少なめの油で今度は厚切りのベーコンを焼く。
香ばしい肉の焼ける匂いが漂いはじめたところで、ブラックペッパーと塩を振りかけ裏に返せば、こんがりとした焼き目が現れる。
滲みでる油と裏の焼き目を見ながらカリっとするベーコンを焼きあげ、一口サイズに包丁で切り分けスクランブルエッグの横にコロコロと載せた。
スープは、鳥肉、玉ねぎ、じゃがいも、ニンジンとシメジなどのキノコ類を入れたクリームスープだ。とろみがついた白いスープに、色とりどりの野菜やキノコ類が浮かびいい感じ仕上がっている。
ピーっとなったオーブンをあければ、熱気と共にバターの香りが漂った。
右手に鍋つかみを嵌め、天板を取り出せばそこには溶けたバターがしみ込んだ角パンが、きつね色になり湯気を登らせる。
それを別の皿に乗せ、更にバターをひとかけら上から載せて甘いはちみつをたっぷり滴るほどかけた。
それら全てをトレイに乗せて、厨房を後にカウンターへと戻る。
「お待たせ」
「あぁ、美味しそう! ん~~~良い香り!」
「はは、喜んでもらえて良かった」
彼女の前にトレイごと置き、食後のコーヒーを準備する。
両手を合わせ「いただきます」と言うと、フォークでベーコンを一口。数回もぐもぐ口を動かして居たかと思えば、彼女の顔に花が咲いたような笑顔が広がった。
「ふふ。本当に美味しいです」
「そう。良かった」
美味しそうに食べる彼女を眺めながら、あの子もあぁして本当に美味しそうに食べていたなと思いだす。
彼女が好んで座った席へと視線を向けた――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます