第261話 ピーナッツマン参上!
――ザワザワと戸惑いと共に歓声が空間を支配していく。
そんな音を聞きながら俺は、日本ダンジョン探索者協会津市鳩羽村支店の隣に併設されていたダンジョン入口に近づく。
「ピーナッツマンだ!」
「あれが、本物の!?」
「ば、ばかな!? あれがSSランク最強にして最高峰の冒険者にして探索者――、現代の英雄と呼ばれる日本ダンジョン探索者協会のリーサルウェポン・ピーナッツマン」
「偽物だろ!」
「こんな安全なダンジョンにピーナッツマンなんて大物が来るわけが――」
ダンジョンに入ろうとしていた冒険者たちから次々と憶測が飛び交う。
良かった。
本当に! 良かった。
着ぐるみの予備があって――。
――さてと……。
俺はスキルの項目を開く。
そして――、スキル「演武LV10」をOFFからONに切り替える。
「我が名はピーナッツマン! 故合ってここに参上!」
腕を十字に組んだあと、御みやげ物屋で購入したマントを体を回転させながら翻す。
「「「「「「うおおおおおおおお」」」」」」
俺の宣言に大勢の冒険者たちが色めき立つ。
「ピーナッツマン! ピーナッツマン! ピーナッツマン! ピーナッツマン! ピーナッツマン! ピーナッツマン! ピーナッツマン! ピーナッツマン!」
完全に千葉県名物落花生の別名ピーナッツマンの名前がシュプレヒコールされる。
それは波及することすれ衰えることはない。
どうやらSランク冒険者というのは思っていたよりも人気者らしい。
「あの……、ピーナッツマンさん」
「どうかしたのかね?」
少しだけ話し方を変えて話しかけてきた日本ダンジョン探索者協会の職員の対応をする。
「私、鳩羽村ダンジョンの支部長をしている宮本(みやもと) あきらと言いますが――」
「ふむ……」
「ここには、何の所要で来られたのでしょうか?」
何の所要と言われても困るな。
とくに用事など全くなかった!
まぁ、相沢に弱みを握られたから仕方なくダンジョン内を探索する事になっただけだが――。
だが――、正当な理由も無しに高ランク冒険者が来るのはマズイのか?
「ここには依頼で来た」
「依頼ですか? 私どもは何の上申もしていませんが――」
「ふっ――」
俺は鼻で笑う。
まさに、貴様ごときに何が分かるのか? と、いう意味あいを込めて――。
だが、俺も何と説明していいのか分からない。
どうしようかと考えていたところで、常人を遥かに超えるほど強化した俺のステータスが気になる小声を拾う。
それは並んでいた冒険者が話していた内容で――。
「(やっぱりピーナッツマンが来たって事は、ダンジョン内で行方不明になる人が最近は多いからなのかな?)」
「(え? でも、それって噂でしょ?)」
――これだ!
まさしく天啓!
「このピーナッツマンが来たのは、最近! ここの安全と呼ばれている鳩羽村ダンジョンで冒険者の失踪が増えているという憶測を調査する為と、その傍ら調査をそこのご婦人に依頼されたからだ!」
俺は、手のひらを向ける。
その先には相沢さんが列に並んでいて口をポカーンと開けていた。
「――え? わ、私ですか? えっと……、ええええええええ! ま、まさか……」
それ以上はいけない。
それ以上、話せば俺の正体がバレてしまう。
「相沢さん、約束を――」
「――! は、はい! よろしくお願いします」
「ま、待ってください! それは、デマです!」
必死な表情で――、しかも周りの日本ダンジョン探索者協会の職員達は全員が表情を青くしている。
ま、まさか――、こ、これは……。
俺の言ったことが本当だったのか?
そうなると色々とアレなことになるんだが……。
「だから言ったであろう? このピーナッツマンがデマかどうかをキチンと調査してくると! これは、全ての冒険者の為であり、同時に日本ダンジョン探索者協会の名誉の為でもある!」
「――ッ!? そ、それは……」
「異論はないな?」
「は、はい」
俺は冒険者カードを支部長に見せつけるようにして列に並んでいた相沢の近くに移動する。
「遅くなってすまない。このピーナッツマンが依頼を完遂しようではないか!」
「(山岸さん、ノリノリですね)」
冷静になったのか冷ややかな目で俺を見てくる相沢。
そういう目で人を見るのは良くないと思うぞ?
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