第260話 鳩羽村ダンジョン(5)
「それにしても……」
俺は、並んでいる列の前の方を見る。
人数としては300人ほどいるだろうか?
殆どが20代から50代くらいの冒険者と言ったところだ。
まぁ、日本ダンジョン探索者協会が発行する冒険者カードは成人限定だからな。
それに、ダンジョンを潜る肉体労働をするにも年齢的に限度があるだろうし。
「あれは……」
考察しながら前の方を見ていると、高さ5メートル、横幅10メートルほどのドーム上のコンクリート製の建物の中に冒険者が入る際、日本ダンジョン探索者協会の人間にカードを提示している。
どうやら、ダンジョンに入る際に身分証として冒険者カードを提示しているようだが――。
「あの、相沢さん」
「はい? 何でしょうか?」
「ダンジョンに入る際に皆さんカードを渡していますよね」
「はい! でも、それって何時ものことですよね? 身分証の確認は、どこの支部でもダンジョンに入る際には行われているはずですよ?」
「……」
これは非常に不味い。
俺の冒険者カードは、日本国首相夏目総理から渡された物で冒険者ランクはS!
つまり最高峰の冒険者と言う事になっている――、たぶん……。
「――でも、皆さん驚かれますね」
「驚く?」
「はい。Sランク冒険者が新米に近い私と一緒に行動してくれるなんて滅多にないので」
「そうなんですか?」
「え?」
「いや、自分はレベルで組む相手を選んだりはしていなかったので、それに組んでいたのは後輩の佐々木くらいだったので、その辺は疎いので」
「ああ、なるほど……」
一瞬、不審に思われてしまったようだが、何とか納得させることができた。
それよりも新米と言っていたが、
ステータス
名前 相沢(あいざわ) 凛(りん)
職業 自営業 ※小料理屋店主
年齢 23歳
身長 155センチ
体重 46キログラム
レベル9
HP90/HP90
MP90/MP90
体力12(+)
敏捷15(+)
腕力14(+)
魔力 0(+)
幸運 6(+)
魅力21(+)
所有ポイント8
スキル「神眼」で確認したところ――、たしかに、レベルは低い。
自分で新米と言うだけのことはある。
まぁ、自分で自分の力量が分かっている奴は基本的に大丈夫だがな。
力量が分かってない奴ほど、大言壮語になるし相手の実力を見誤る。
――列は、前方に100人ほど並んでいるが、後ろにもすでに100人以上が並んでしまっている。
このままでは30分もせずに俺がSランク冒険者だと回りにバレてしまうだろう。
それだけは何とか避けたい。
――仕方ない! あの方法でいくしかないな!
「相沢さん」
「何でしょうか?」
「自分は、佐々木家本家とやりあっている状況なので高レベル冒険者だとバレるのは戦略上マズイです」
「――え? で、でも、Sランク冒険者なら全員が日本ダンジョン探索者協会の名簿に名前と顔写真が乗っているはずですよ?」
――マジか! それは非常に困る。
すぐにスマホで確認する。
「確認するときは、冒険者カードの左下のIDを打ち込めばすぐに出てきますよ?」
首を傾げて不思議そうに思っている相沢さんがアドバイスをくれる。
その通り、日本ダンジョン探索者協会のサイトを開きメンバーリストの所からIDを打ち込んで検索する。
すると――、そこには!
ピーナッツマンの着ぐるみを着た冒険者というか俺の姿写真が使われている。
しかもランクが、SSランクになっており――、日本ダンジョン探索者協会の中でも佐々木を抜いてトップランカーになっている。
これは間違いなく冒険者カードを出したら詰む。
「ふう……」
「どうかしましたか?」
「ちょっと自分は正体を隠しているので、少し待っていてください。それと、自分の正体の事は絶対に内緒にしてください」
「――え? どういうことですか?」
「すぐに分かります。それより、自分の正体は絶対に言わないでください。もし、言った場合は、迷宮探索の手伝いを辞退します」
「……分かりました。何か、特別なことがSランク冒険者の方にはあるんですね」
「はい。それでは、少しだけ列を離れます」
俺は、すぐに列から離れて路地裏まで小走りで向かったところで上空へ向けて跳躍。
5階建ての日本ダンジョン探索者協会の屋上に降り立ったところで回りを見渡す。
念のためスキル「神眼」で確認もしておくが人の姿もカメラも無い。
これなら大丈夫だ。
俺はアイテムボックスからピーナッツマンの着ぐるみを取り出した。
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