第2話ゴブリン怖い、ゴブリン怖い

異世界の生活が始まって、一か月が過ぎて、少しだけ今の生活にも慣れてきた。一番大切なのは、三重を捨てることだった。異世界ものと言えば剣、そう思っていた俺だけど、まともに触れないことが分かったその日、武器屋で売った。その日の晩御飯になった。

次の日からは盾を装備してスライム討伐へと向かった。でも、これも失敗だった。スライムの体当たりは早くって、思い盾をスライムの攻撃地点に持っていくのが間に合わず普通に攻撃を喰らっていた。たまに、偶然攻撃地点に盾があった時も、衝撃を受け止めきれず、腹に鉄の盾がめり込んで、余計痛かった。

そんな俺は、その日の夜、剣を撃ったところと同じ店で盾を売って、その日の晩御飯にした。武器屋のおっさんが俺をみて哀れんだのか、お金を多めに暮れて、軽いダガーまでついでにくれた。お金を稼いだら、いつか恩返ししよう、そう、心に誓った。

「ダガーは軽くて振りやすい。おかげでスライムも簡単に倒せるようになって、ようやく俺も、次のステージへと来ることができた」

スライム討伐を順調にクリアできるようになった俺に、今日国から別のモンスターを倒してみないかと、依頼書が出された。

ゴブリン、異世界ものでスライムよりも人気なマイナーモンスター。彼らは小学生くらいの大きさで、強くはないが数いるのが基本。日本の異世界ものの小説と同じような感じだった。

「あいつらの装備は手入れされてなくて切れ味がひどいからな、こっちの軽い鎧でも刺さらなくなるくらいには守れるぞ、痛みはあるけどな」

「いつもありがとうございます。ホント、ダガー件といい、お世話になりっぱなしで」

「お前さんほど弱い奴見たことがなかったからな、つい救いの手を出しちまったのさ」

悪気はないのか知らないけど、普通に傷つく。わかってても、弱いと言われるのは辛い。

「それじゃ、この鎧買います。それで値段の事なんですが……」

「分かってるよ、お前さんが買うんだ、安くしといてやる」

本来の半分近い値段で鎧を買った俺は、ゴブリンの住む洞窟へと向かった。武器屋の人が軽くて動きやすいものを選んでくれたからか、今回はまともな装備でモンスターと戦える、これならゴブリンなんて余裕かもしれない。

「ここが、依頼書に書いてあった場所だよな? うっ! この洞窟、すげぇ臭い……」

壁に人が通れるくらいの穴が開いており、中は真っ暗。山に作られたトンネルみたいな場所だった。ポケットに入れておいたハンカチで鼻をかばうように首の後ろで結び、準備しておいたランタンに火をともし片手に持ち、空いた方にはダガーを持つ。

俺、今この世界に来て初めて冒険者っぽい格好してる! 武器も鎧もあるんだ、今日の俺は、負ける気がしない!




「いやぁぁぁぁぁぁ! 許してぇぇぇぇぇ!」

怖い怖い怖い怖い怖い怖い! 怖すぎるっ!

暗い道をランタンで明るくしながら入っていった俺は、ゴブリンたち全員に侵入したことが一瞬でばれた。明るかったから。

国からはゴブリンの姿は子供で、攻撃手段も切れ味の悪い刃物だけ、簡単に倒せると聞いていた。でも、そうだよな!

「ギャッギャッギャッ」

そうだよね普通に怖いよね! だってこれ、日本で小学校に入ったら、クラスの子たちが全員包丁持って突撃してくるみたいなもんだもんね! そりゃ怖いよ! 俺だったら怖すぎてトラウマもんだよ! もう小学校の近く通れないよ!

「お願いだから! 今回だけは見逃してぇぇぇぇぇ! 日本に帰りたぁぁぁぁぁぁい!」

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