日本に、帰りたい......
悠々
第1話勇者レベル1は俺より強い
目が覚めた時、すでに俺は見たことのない森の中にいた。自分が異世界に来たと分かったのはこの後、毒々しい紫色の葉っぱを揺らす不気味な木の中、オオカミの様な化け物に追いかけられてだった。
走って走って走って、もう駄目だと思ったとき、森の近くにあった街から来た冒険者と呼ばれる人たちに助けて貰えた。
身分を証明するものもなければ、俺を知る人もいない。そんな怪しい人を雇う普通の仕事はなく、唯一就職できたのは、冒険者という化け物を倒す傭兵みたいなものだけ。
「オオカミに襲われて逃げ回った俺が、モンスターと戦う……ね」
無理だろ。だって、俺少し前まで……っていうか昨日までは引きこもってゲームしてたんだぞ? まだ高校生の頃ならわかる、若くて体力も少しはあった。でも俺いま25だぞ? 体力なんて皆無に等しい。
「でも、お金稼がないと、また路地で野宿……それだけは、嫌なんだよなぁ」
昨日、お金のない俺は路地で寝た。野宿なんて初めての俺は知った、布団は素晴らしかったと。日本の生活、半分は寝ていた俺が、石畳のでは一睡もできなかった。
石畳が、冷たいんだ。まるで命を吸われてるみたいでさ、どんどん体温が低くなっていって、最後には死んでしまう、そう考えちゃって寝られなかった。
「スライム討伐……異世界ものの話だと弱いと見せかけて強いなんて話あるけど、他の人にい聞いた感じ本当に弱いみたいだし、俺でも倒せるかもしれない」
スライム討伐の依頼書を、壁から破り取り、カウンターに持っていった。
「ぐっはぁぁぁぁ!」
冒険者になった時、最初の装備として盾と剣が国から支給された。しかし、重くてもてなかぅあ俺は剣だけを持ってスライムと戦いに来たのだが。
「こ、今度こそ! うおおぉぉぉ、ぐぁあぁぁあぁx」
嘘だろ? 俺、スライムに一度も剣当てられてない。勇者は街から追い出されてレベル一でも倒せる相手だぞ? そんなスライムにぼこぼこにされてるって、もしかして俺弱すぎ?
「痛い、体中が燃えるように痛い、もう駄目だ、やっぱり俺にモンスター対峙なんて無理だったんだ」
もう、体を支えてもいられない、倒れる。はぁ、俺死ぬまでスライムに凧殴りにされんのかなぁ、嫌だなぁ。
重力に負け、前の方に受け身も取らず倒れると、何かがクッションになり痛みはなかった。なにもクッションになるものはなかった、何が下にあるんだろうと、気になった俺は体を起こし、下を見ると、そこには潰されているスライムの姿があった。
「もしかしてこれ、体当たり途中に偶然カウンターが入った感じかな? 頑張って剣を振って攻撃して、追い込まれて死を覚悟したのに、最後はこれか」
魔法の存在する異世界に来たのに、魔法は使えず。
身体能力は街で店を開いてる人よりも遅く。
剣を使うより、体重プレスの方が強い。
「なんか、思ってたのと違う……俺の思っていた異世界生活はこんなんじゃない!……日本に! 帰りたぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
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