ドラッグウォーター
影神
命と犯罪者
もしも何でも治る薬があったらあなたは使いますか?
あなた、もしくは大切な誰かの為に、、
『ドラッグウォーター』
それは後に、万能薬と呼ばれるものとなったが、
それと同時に違法薬品と呼ばれるものである。
世界には薬物治療というものがあるのをご存知か?
薬物治療とは薬を使用して行う医学的な治療のことである。
医学的に行われる治療には、手術や心理療法などの様々な
治療方があるが、そのなかで薬物を投与する治療を総称して
薬物治療とよぶ。薬物を患者に投与することで、病気の治癒、
改善を目指す治療のことである。
誰しも皆生きていれば必ず病気になる。
病気には必ずと言ってもいい程、苦痛を伴う場合もある。
ある年、覚せい剤を製造した疑いで、
覚せい剤取締法違反容疑で男が逮捕された。
捜査で自宅を家宅捜索した際、
大量の化学薬品、ビーカーなどが押収された。
ニュースはそれで終わった。
だが、それだけではなかった。
部屋では製造方法が書かれた
マニュアルなどが見つかっていた。
しかし、メディアには一切報道されなかった。
だが、ある一部の者はある情報筋から
情報をリークする事に成功した。
彼は裏で「病気に効果のある水」と称して
製造及び、販売を行っていた。
勿論、裏で販売していた為、
世間にも知られる事はなかった。
彼は海外の有名な大学をでていて、
IQがずば抜けて高かった。
そんな彼が何故このようなものを作ったのか。
私はこう、推測する。
彼の家は貧しく、両親を病気で亡くした。
その後、大学を出て、愛する者と所帯を持つも、
彼女も病気により、亡くなってしまう。
その後彼は勤めていた製薬会社を辞め、
例の商品を製造する事となった。
彼は警察の調べにより、このように述べている。
「世の中には、病気で苦しんでいる者が沢山いる。
少しでも、両親や彼女のような人を救えるように。
私のような思いを誰かがしなくて済むように。」
と。
彼の証言に、肩を持つものも少なくはなかった。
だが、大事なのは彼の製造した
『ドラッグウォーター』であった。
彼の作った『ドラッグウォーター』は
未だに見付かってはいない。
噂では、既に流通し終わり、
在庫はないとのことだった。
私はそれが欲しい。
それを血眼になってまで、探している。
私には小さな娘がいる。
娘は小さながらに難病指定の病気にかかってしまった。
娘は薬を飲みながらも、毎日苦痛に耐え続け、笑顔で
「お父さん、今日もちゃんとお薬飲めたよ?」
と、辛いのを隠すかのように作り笑いをする。
私はそれに、耐えられなくなった。
「何故あんな小さな子供が、あんな小さな娘が、」
私は少しでも娘が楽になるのであれば、何にでも手を染めよう。
娘の作り笑いを見るほど、日に日に私はそう思うようになった。
彼は数年、刑務所にぶちこまれたが、
刑期後、彼の消息はすぐにわからなくなった。
それから、しばらくして私の愛する娘は息を引き取った。
私は最後の頼みを失い、娘も失った。
私はやさぐれる様に、酒に溺れることになった。
全てがどうでも良くなった。
そんな日々を送っていた時、
ある一本の電話が私の元へとかかってきた。
私「もしもし、、」
相手「突然すいません。
あなたが『ドラッグウォーター』に
御執心というのを伺ったものでして、」
私「もう、遅い。娘は死んだ。」
相手「そうでしたか、、
どんなにお辛いことかと思うと、
お慰めの言葉もありません。
心よりお悔やみ申し上げます、、
もう少し私が早ければ。
あなたは娘さんのような人をこれ以上、
増やしたくないとは思いませんか??」
私「、、」
相手「私は『ドラッグウォーター』を服用しました。」
私「!!?」
相手「興味がおありでしたら、お迎えに上がりますが。」
私「病気は治ったのか!???」
相手「そちらの話もお会い出来次第。」
私「わかった。頼んだ」
相手「1つだけ条件があります。」
私「条件??」
相手「あなた様をお迎えに上がる際、
目隠しをさせて頂きたく、、」
私「極秘ということか。」
相手「はい。ご理解して頂けると。」
私「わかった。」
相手「ではお迎えに上がりますので、しばらくお待ち下さい。」
電話が切れて数十分程で私の家のチャイムがなる。
玄関を開けるとスーツ姿の、がたいのいい男がいた。
「お迎えにあがりました。」
私「頼んだ。」
私は目隠しをされ、車へと乗せられた。
車は2時間ぐらいか、大体そのぐらい走っていた。
車が停まると、私は外へ出されてしばらく歩いた。
足がとまると、目隠しが外された。
目の前には車イスに乗った年配のおじいさんがいた。
「着いて早々悪いが本題にうつそう。」
私は奥へと通される。ここは何かの研究施設のようだ。
彼がとまると、私は驚愕した。彼が研究者を紹介する。
彼はあの『ドラッグウォーター』の製作者だった。
おじいさん「彼は君が知っての通り、
刑期後に行方不明となった。
そして、私がこの研究施設で身元を預かった。
彼は素晴らしいモノを作った。人類を覆すものを。
まあ、詳しくは彼から聞いてくれ。」
そう言うとおじいさんは席を外した。
男「お会いするのは初めてですね。
私は元々刑務所で殺される予定でした。
それをあの方に救ってもらったのです。
私の作った『ドラッグウォーター』というのは、
結論として病気そのもの治すものではありません。
感覚そのものを麻痺させる薬なのです。
ものすごく簡単に説明すると、痛みを無くす、
又は痛みを感じさせないというものです。
それは一見すると、万能薬とも囚われがちですが、
私の製作したものはまだ完璧なものではなかったのです。
なぜ、私は刑務所で殺される予定だったか。
国はそのような薬を作られては困るからです。
考え方を変えましょう。
痛みを感じないということが、現実に起きてしまったら。
人間は兵器として、殺し合う人形となってしまうのです。
そう、軍事利用です。
もし、それが他国にでも流出してしまったら、
それを一番恐れたのです。
それを避ける為に彼は、私の薬を正しいことに
利用するために匿ってくれました。
私が彼に出会わなければ、きっと私は何処かの国で
細菌兵器としての薬、又は兵器を作らされていたでしょう。」
私は話を聞き、涙を流す。
結構『ドラッグウォーター』があっても、
娘を救うことは出来なかった。
娘の病気が治ることはなかったのだ。
私は膝から崩れ落ちる。
男「話を戻しますが、今の段階で
痛覚のみを抑制する事に成功しています。
今までは、感覚に通ずる神経も含めて麻痺し、
薬物に存在する依存性も抜けきれませんでした。
ですが、今では依存性が減りある国では既に使用されていて、
少しずつではありますが、成果が出ています。
そしていずれは、その病気本体を忘れるようにと作っています。
例えば足が動かないとしましょう。
それを、その感覚を麻痺させます。
機能できない足を機能するように麻痺させる。
機能しない時点で、足は麻痺しています。
その麻痺を治すのは難しい。だから逆に足を治すのではなく、
動かない足。という前提の体への信号を麻痺させるのです。
まあ、まだまだ研究中なので、理論上の話しですがね。
そこであの方は同じ同志、つまり悪用しない人を集めています。
あなたは娘さんの件があり、薬の正しい使用方法というものを
理解しているということで、彼の眼鏡にかなったのでしょう。
国によってはやはり、使用出来ない薬というものがあります。
薬だけではなく、治療法や医療方法なども様々です。
そうゆうものをある基準の元、
皆が平等に皆が治療出来るよう、彼は活動しているのです。
1日でもそうなるよう是非ともあなたにも協力して頂きたい。」
私は私の時間の許す限り、彼の遺志に賛同する。
日本では認可されていない治療法や医療法が、
海外では認可されていることがある。
勿論、デメリットは必ずと言ってもない方がいい。
誰もが安心して、副作用なく、病気を治すことが出来たら、
もう少し助かる命があるのかもしれないし、
患者は違った世界を見ることができるかもしれない。
法律によって、違法なこと。
でもそれをすることによって救える命があったら。
あなたは法をおかしてでも、間違っていても
命を救いたいと思いますか??
子供の時によく聞かされた話をしよう。
嘘は正しくないか、正しいか。簡単な2択だ。
勿論、嘘は正しくはないと子供ながらに答える。
しかし、大人はこう続ける。
あるところに病気の女の子がいる。
彼女は今すぐにでも薬を飲まないと死んでしまうが、
彼女は薬をどうしても飲みたくないと言う。
彼女に「薬ではなく、ラムネだよ。」
とでも嘘を付き、薬を与えれば彼女は助かるが、
本心で「薬を飲まなきゃ死んでしまうから」
と言っても彼女は薬を飲まない為死んでしまう。
さあ、君はどうする??
それと同様救える命はあるが、
破ってはいけないから諦めるのか。
救える命があるから、
犯罪者になってまでも命を助けるか。
命と犯罪ではどちらの方が重いのだろう?
ドラッグウォーター 影神 @kagegami
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