表紙への想い
「ほんと!? 続き読む読む!」
俺が自分の席で座っていてりっちゃんがそばに立っていて、そこに芽依がやってきたのでグッドタイミング。続きが書けたので印刷したやつを渡すことにした。今回も五冊持ってきた。控えの一冊含めて今回も刷ったのは六冊だな。
俺が学生カバンに手を入れながら、りっちゃんと目が合った。ちょっとにこっとしたりっちゃん。
「芽依。実は表紙を付けたんだ」
「表紙? タイトル書いてあったじゃん?」
「いや、あんなシンプルイズザベストすぎるやつじゃなくて……」
また目が合った。またにこっとしてきた。
「……えっ! まさか!」
この段階でなにやら驚きの表情をしている芽依だったが、俺は……すごくカラフルな表紙になった冊子を、芽依に五冊まとめて差し出した。
「うわわわわーーー!! きゃーーーんりっちゃんよかったねぇよかったねぇーーー!!」
「め、芽依ちゃんっ」
めっちゃ飛びつく芽依ちゃん。またも周りから視線ビシバシ。そろそろ俺はあははのは顔マスターの称号を得られるかもしんない。
「はっ! ありがとうございまーす! はい、一冊は哲雪くんから手渡しねっ」
一冊返ってきた。おかえり。
「それじゃ私早速回してくるから! うわーすごいすごいすごいよこれー!」
芽依はるんるん度Maxで教室から出ていった。
「芽依、この表紙を見ていきなり飛び出してきた言葉がりっちゃんよかったねぇだったな。どういう意味だったんだ?」
あの日伝説の画用紙絵をもらった俺は、りっちゃんに印刷用の表紙を描いてほしいと願い出た。快くおっけーしてくれた。
伝説の画用紙絵はそのまま表紙に使えそうな気もするけど……あの絵は表紙にせず自分で持っておきたいって言ったら、斜め下目線かつてれてれ笑顔なまま優しい優しい利々絵ぱんちをもらってしまった。
透明なファイルに入れて伝説のしおりの後ろに立て掛けている。今度額縁入手してこよかな。実は追加で日付と名前を入れてもらった。渡藤国国宝に認定されました。
それはともかく、目の前のりっちゃんはにこっとしながら首をかしげていただけだった。やっぱ笑顔りっちゃんかわいいよ。
「とにかく芽依はあそこまで喜び爆発させてたんだ。りっちゃんの絵はやっぱすげぇな!」
てれてれりっちゃんもイイネ!!
「あ、ほら、りっちゃん。今回は気合入れて書いたからなっ」
改めて冊子の向きを整えて、りっちゃんに両手で差し出した。りっちゃん見てるぅー。
表紙の絵を描いてもらうため、冊子になる部分の最初の方の展開は見てもらったが、大半はまだ見せてない内容だ。
「……本当にありがとう、てっちゃん」
「どういたしまして。って表紙描いてくれって言ったの俺なんスけどぉ!?」
「くすっ。ううん、てっちゃんのお願いなら、頑張ってかなえてあげたい。だからいっぱいお願いしてね」
「りっちゃんいいやつすぎ」
にこにこりっちゃん。ああ、うん、ほんと学園恋愛物の小説書いててよかったわ。
「……ありがとうっ」
すてきなりっちゃんボイスが響いたところで
「ちょっ」
差し出した冊子を受け取るかと思いきや、俺の両手を握ってきた。そんなににこにこしなくても……いやいいんだけど! いいんだけどね!? ここ教室!!
俺はうにゅうにゅ手をずらして、りっちゃんに冊子を渡しきった。
その冊子の表紙には、教室の窓の前に男女三人ずつ六人が並んでいて、空へ向かって指差したり横目で見たりあごに手を当ててシャキーンしてたり手すりの下から見上げてるやつとかもいるが、みんなそれぞれに笑顔だ。
上部にかっこいいタイトル。この文字は二人で相談して決めた。星のラインが改造丸文字の後ろを通っている。
あの雲何に見えるよー? ってシーンが入ってるからこういう絵になったらしい。ということは次の冊子を作るときにはまた別の絵が来るってこと? 毎回こんなにウキャーな気持ちになってしまっていいのだろうか?
俺の彼女さんは、腕クロスで冊子を大事そうに抱えていた。こっちから見えている面は裏面なので、印刷した日付と、俺の名前、そしてりっちゃんの名前が見えていた。
~短編36話 おしまい~
短編36話 数あるしおり右下とあの子 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます