第34話:かつての仲間との闘い
「フォン・レン!何故こんな所にいる!貴様もテオ同様に魔界に寝返ったのか?それとも金で買われたか!」
アポロニオの怒りはフォンにも向けられた。
「勘違いするなって。あたしはただの武者修行中さ」
フォンはそんなアポロニオの怒りも意に介さずというように流した。
「あんたらとテオとの諍いに興味はないよ。やりあいたいなら好きなだけやりなって。なんならあたしが立会人になってやろうか?」
「ふん、所詮は東方国から来た力頼みの野蛮な人間ということか。だがそれもよかろう、ここで我々とこの裏切り者との戦いを見届けるのだ!どちらへの加勢も無用と知れ!」
「ご自由に」
フォンは肩をすくめた。
「これで邪魔は入らなくなったな。テオフラス、大人しく我々の正義の裁きを受けるがよい!」
アポロニオの一方的な宣言に、しかしテオは首肯した。
もはや闘いは避けられないだろう。
ならばやることは一つ、生き延びる方法を取るだけだ。
「なあなあ、お姉さん」
腕組みしてその様子を見守っているフォンの腕をキツネが突いた。
「あんたらテオ兄さんやあの三人と知り合いなんだろ。あいつらって強いのか?」
「ああ、強いね」
フォンは頷いた。
「特にあの真ん中の金髪、あいつはアポロニオって言うんだが恐ろしく強い。特に剣技は人界じゃ一番だろうね。あたしだって素手でやりあって無事に済むかどうか。しかも勇者だから魔法耐性まで持ってるからね」
フォンは続けてサラを指差した。
「あの女はサラと言ってインビクト王国のお姫様だ。僧侶としても優秀で、テオを抜きにしたら支援魔法は王国一だろうね。サラがアポロニオを支援魔法で助けたらかなり厄介なことになるよ」
「あの男は……モブなんとかと言ったかな。あいつのことはよく知らないけどローブをまとってるから魔道士だろうね。おおかたテオを倒すために急遽雇ったんだろうな。実力はテオに及ばないに決まってるけどね」
「なるほど……つまり、流石のテオ兄さんと言えども勝てるかどうかはわからない、と」
「それはないね。相手がアポロニオとサラでもテオに敵う訳がないっ、て……あいつ人の話は最後まで聞けっての」
フォンの話を最後まで聞かずにキツネは走り出していた。
「これは面白ことになってきたぞ」
◆
緩やかな風が丘を舞っている。
しかし、頂上には張り詰めたような空気が漂っていた。
「アラム、その人から離れてください」
テオが口を開いた。
その相手は、いつの間にかサラの背後に回り、ナイフを喉元にあてていたアラムだ。
「いいのか?」
アラムが聞き返した。
「これは私と彼らの問題です。手出しは無用です」
アラムはしばらくテオを見つめていたが、やがて軽く首を振ってサラから離れた。
「失礼しました」
テオは軽く更に頭を下げ、改めてアポロニオに向き直った。
「はじめましょう」
その言葉を合図にアポロニオがテオに突進する。
袈裟斬り、胴払い、唐竹割り、逆袈裟、突き、目で追うことすらできない凄まじい連撃だ。
しかしテオの防御魔法の前に全ての攻撃が弾かれる。
「
モブランの魔法が発動し、テオの防御魔法が崩れ去る。
「もらった!」
下段から突き上げるようなアポロニオの突き!
しかし辛うじて再度展開したテオの防御魔法が寸前でそれを防ぐ。
「くぅっ!もう見てられないよ!」
ヨハンが悲痛な叫び声をあげた。
「なんとかならないの?三対一じゃテオが勝てるわけないよ!」
懇願するようにメリサを見上げるが、メリサは頭を振った。
「これはあの四人の問題だ。私が手を出すわけにはいかない。主様もそれをわかっているからこそ手を出さないでいるのだ」
「さあさあ、張った張った!テオの相手は我らが魔王ルシファルザスを倒したという勇者アポロニオとその一行だ!ただ今のオッズはテオ0.八に対してアポロニオチーム一.二だよ!」
そんなヨハンとメリサをよそにキツネは観客を相手に賭け金を集めている。
「アポロニオに銀貨五枚だ!」
「俺はテオに銀貨三枚!」
「アポロニオに金貨一枚出すぞ!」
「あの野郎~」
ヨハンが拳を震わせた。
「キツネ!いくらなんでもやっていいことと悪いことが……!」
「おうヨハン、良いところに来たな。ちょっと手伝ってくれよ」
「ふざけんなっ!テオが必死になってるのにあんたって奴は……」
その時、観客の間でどよめきが起きた。
「テオっ!」
ヨハンが叫び声をあげる。
そこには肩口から血を流し、跪くテオがいた。
「この勝負、もらったぞ!」
アポロニオがアルゾルトを振るう。
テオの展開する防御魔法はモブランの
テオは攻撃魔法を展開することもできずに防御一辺倒になっている。
「頑張って!テオっ!」
ヨハンの叫びもテオには届かない。
「さあさあ、これで締めきりだ!オッズはテオ0.四、アポロニオ一.六だ!」
キツネが声を張り上げる。
「終わりだ!」
アポロニオの叫びと共に防御魔法が解除されたテオの頭にアルゾルトが振り下ろされる。
凄まじい斬撃音が丘に響き渡った。
しかし、その剣はテオの頭に届いていなかった。
寸前でその剣を止めていたのは、巨大な大鎌ハーベスターだ。
「我も混ぜてもらおうかの」
テオの前に立ち、ルーシーが不敵に笑った。
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