第四話 降っても晴れても その一

「俺さ、前から思ってたんだけど……」

「ん?」


 突如として切羽詰まったように切り出す兄に、和人は不思議そうな眼差しを向ける。


「跡継ぎはお前のが向いているんじゃないかな、て」

「はぁ-----っ?!」


 素っ頓狂な声を上げ明らかに解せないというように眉をしかめる弟。


「いやほら、俺と違ってお前は何やらせても器用だしさ、俺なんかまだ一人で傘作り任されてないし。お前なら商売も上手いし、頭良いし、モテるし……」

(そうだよ、灯里だって。親の言いなりになって好きでもない奴に嫁ぐ必要なんか無いんだ)


 さすがに唐突過ぎたかと必死で理由を説明しながら。


「何だよ突然……」

「あ、灯里の奴だってホントは……」

「どうしたの? 喧嘩?」


 不満の意を表明すべく口を開き始めた和人と同時に、居間の入り口にふわりと立つ灯里。このタイミングで当の本人がやって来るとは今引導を渡せと言うことか、と漠然と感じる令和。


「茶団子作ったから持って来たんだけど、二人とも居間にいる、て聞いたから」


 と藤色の風呂敷包みを掲げて見せる。


「私が、何?」


 無邪気に微笑みかける彼女の笑顔を眩しく感じながらも、弟の奇異な者を見るような視線が目元に刺さる。どう誤魔化しも効かない状況に半ばやけっぱちになった令和は、今まで逡巡してきた想いを一気にまくしたてた。

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