その二

 次なる過程は「ロクロすげ」。柄となる竹の先端に取りつける頭ロクロ。傘を開く際に柄を上下に移動させるものが手元ロクロという。この二つのロクロに絹糸で骨を付ける。


 次は「つなぎ」。親骨の先端より二十一cmのところにある節と、先端を二股に割った小骨を絹糸で繋いでいく。


 四番目は「かな糸かけ」。飾りの為、親骨にかな糸を四本かける。節を貫いた細い竹に細めの木綿糸を通し、これを専用道具とする。


 五番目は「へり紙張り」。ガラと呼ばれる道具に和紙を巻き、回しながら親骨の外周りに糊付けしていく。この紙の事を『へり紙』と呼ぶ。



六番目は「へり紙折り」かな糸を包むように等間隔にへり紙を折っていく。


 七番目は「中おき」。中糸の上に、装飾としての和紙を張る。


 八番目は「胴張り」。いよいよ最後の行程だ。刷毛で直接糊を骨に塗り、和紙を張る。糊は粉にした蕨の根を煮て、これに渋柿を混ぜて使うのだが、この糊作りはもっぱら見習いである令和の仕事である。その後、装飾のため和紙を手元や天井部分に張る。そして表面に紅殻を四回、渋柿を二回塗り、艶出しと防腐剤の効果を施す。更にその上から黄土を混ぜた亜麻仁油を塗って防水加工をして、乾燥させて完成となる。


 京和傘など各流派により名称や行程が異なるが、基本的な事は同じである。これらの行程を分業して行うのだが普通だが、立花家では上記の八つの行程を一人で行う事がしきたりとなっていた。


 蛇の目傘、番傘、和日傘、舞台用舞傘など、およそ十五種類ほどの和傘がある。(※)


 注文も承っているが、作業部屋の隣は「アトリエ立花」となっており、そこで作り置きした和傘を何点か置いて、販売も行っていた。アトリエを任されているのは主に令和の母、静江だ。学校が休みだったり、空いた時間に、和人が店先に立つ。彼は接客にも向いていた。



(※「匠の姿」vol.4、青梅和傘参照)

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