第4-1頁 狂気と勇気の向こう側
異世界転移した私達は、キノコタンの女王…ルイスと出会う。
ルイスからキノコタン同士の戦争について聞かされた私達は、ルイスに手を貸すことを決意する。
「4頁目ですね!頑張ってください!」
「ほら、六花〜。コーヒー入れたぞ」
昨晩の戦闘準備でやれることはやったつもりだ。それはほかの3人も同じのはず。
大戦…やっぱり怖いなぁ。
ルイスの家の寝床に寝転がりながら顔を壁に向け、考え事をすること30分、ようやく少し目が覚めてゆっくりと立ち上がった。
「うわ、まだ暗いじゃん…」
偶然見えた窓の向こうの景色を前にして、思わず口から心の声が漏れてしまった。
この世界に来てから三日目の朝を迎えたが、今朝も周りはまだ暗闇と静寂に包まれており、私の気持ちも自然としんみりする。
ため息をついた後、眠気を完全に消すために散歩に出かけることにした。
散歩は健康にいいって聞くし、早朝の散歩は気持ちいいよね!
二度寝が出来ない体質と聞いて、大体の人達が言うのは「羨ましいなぁ〜」だ。
確かに、二度寝で遅刻したー!と言うリスクは100%無いが、今のように、超早朝に起きてしまうと色々めんどくさい。
二度寝をしたくても出来ない系の私は、今のように散歩をするしかすることが無い。もちろん前世だと仕事が山のようにあったから散歩とかしてる時間は無かったが。
この世界でも暇つぶしを見つけないと。
キノコタンの領地をそっと抜け出し、100メートルほど歩いていくと、この世界に来て2種類目の魔物と遭遇した。
私の前にいるそれは、白銀の毛並みを持つ四足歩行の犬or狼で、犬系特有の飛び出た口、信号機の赤を思わせる灼眼。
「ぐるるる…」といかにもお腹を空かせたような唸りを上げ、見るからに強靭な牙の間から溢れ出すヨダレを垂らす魔物は、1歩、また1歩と距離を詰めてくる…。
「ッ…!!」
声はおろか、音にもならない悲鳴は喉を通して、空気となって外気へ出ていった。
え、待って!こいついかにも中盤に出てくる弱キャラっぽいんだけど!私まだ駆け出しだよ!?
しかし、ここで相手に背を向けると、それは死を意味する。
意を決した私は腰に提げた細剣を引き抜き、地面に放り投げた。
「ぐるぅ?」
今から戦う相手が自ら武器を放り投げるという予想外の展開に、狼型魔物も驚いて後ずさる。
見せびらかすように
「ふふ、よくこれを見といて。これが今からあなたの身体を斬るんだからね!」
無造作に地面に落とされた細剣を、私の物体操作術で浮かす。
ゆっくりと、空を舞うイメージ…。集中して、相手を蹴散らせ!
「動け
ゆっくりと細剣は、地面から離れて、くるりと横回転し、魔物に剣先を向けた。長年武器庫に眠っていた代物だが、一応剣としての威厳と誇りはあるらしい。
ついでにホコリも被っている。
揺れる月光と夜雲を細剣の鋼が反射させ、辺りに張り詰めた緊張感が自然と拡がる。
「ぐるらぁー!」
刹那、魔物は私に向かって飛びかかってきた。
爪の生えた前足をこちらに向けて、大口を開けながら飛びかかる魔物の姿はまるで…血に飢えた獣のような、ソレだ。
実際獣なのか?
「うわぁっ!」
私は急な飛びかかりに驚き、細剣を私の前に動かして、上手くガード。
ぬかるんだ地面を強く踏みしめて追撃の準備。
「ゲームだったらジャストガード!とかでてもいいんじゃない…かな!!」
口を細剣に抑えられて悔しがっている魔物を、今度は力を込めて細剣を前に動かし、振り飛ばす。
もちろんこれで倒れる訳もなく、地面に足が着くや否や、方向転換をせずに魔物はこちらに向かってくる。
再突進ということで速さもそれなりに増えている。
「え、まだやるの…?出来れば逃げてくれるのが一番いいんだけど!」
攻撃パターンが一種類しか無いのか、再び飛びかかって来た魔物に、今度はポケットにしまっていた石をぶつける。もちろん能力で。
「ぐらぅ!」
能力を使うことでプロ野球のボールの程のスピードが出た小石に、身体を痛めつけられた魔物は、地面に倒れ込み、一瞬怯んだ。
それにすかさず細剣を近寄らせて、少しでも動いたらすぐに突き刺せる位置で固定させる。
「ほらほら、もっと来なよ。少しずつ痛めつけて、ゆっくり殺してあげるよ」
あ、やっべ素が出ちまった!てへっ♡
「うるらぁ!」
しかし、人間の言葉が通じないのか、魔物は3度目の飛びかかりをしてきた。確実に私を仕留めるつもりで実行した飛びかかりは空中で取り消すことは出来ずに…
「…チェックメイト」
魔物は、腹に刺さるように動かされた細剣に突き刺された。
グサッ…と言う少々グロテスクな雑音が、暗闇の森に響き渡った。
その雑音は私には、生命の虚しさと死を告げる悲しい鐘音に聞こえた。
・・・・
「あーぁ、どうしようこれ。結芽子に頼んで片付けてもらおうか…」
魔物との戦闘からわずか数秒の事だ。私の目の前に広がる騒然とした景色に、私は思わず息を漏らした。
結芽子の能力なら魔物の死体も無腐敗で片付けることが出来るはずだ。
そこへ、私を追ってきたのか1人の少女が現れた。
「ん?人間だ…、こんな時間に何してるんだ?」
声はルイスにそっくりだが、どこかが違う。
「あ、いや…違うの!こ、ここ、これは私がやったんじゃなくて…」
細剣に刺されて横たわる魔物を隠すように私は少女の前に立つ。
「え?すんすん… …なんか血の匂いがするな」
「えぇ!?そ、そそそそうかな?と、とりあえず夜の森は危険だから移動しない?」
「確かに夜の森は悪い魔物が出没するからな。立ち話もなんだし、私の家に来い」
その言葉を聞き流すように、私はこそこそと現場の後片付けをし始めた。
あーぁ、血はどうにもならないや…。
ちわーっす!今回も読んでくれてありがとうな!
今回あとがきを担当するのは、この俺…月見里 蜜柑だ!
えーっと、台本によれば、
ファールルイスの由来は、ファール(堕ちた)ルイスから来ているようだな!正式名称はファールクイーンだけど、静紅は[ファールルイス]って呼んでるな。俺もファールルイスの方が好きだな!
次回も読んでくれよな!
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