第3-1頁 黄昏焦がれる南西森


トラックに引かれて異世界に転移した私達は、森の中で1人の少女、[ルイス=キノコタン・クイーン]と出会った。




「ほら、3頁ページ目なんだから、よく見るのよ!」


「静紅さん。そんなツンデレキャラでしたっけ?」


「以後お見知りおきを!」




 目の前の少女の名前はルイスと言うらしい。呼び方は、ルイス=クイーン・キノコタンなのでどれが名前か分からないが、一応ルイスにしておく。


 ルイスはぺこりとお嬢様らしいお辞儀をしながら言った。


 それに私は出来るだけ優しく応答する。




「うん、よろしくねー」




「よろしくお願いします!キノコタンについてまた今度詳しく聞かせてください!」




 六花は相変わらず好奇心旺盛&興味津々だなぁ。ま、それもいいことなのだが。


 好奇心は時には危ないものに繋がることもあるから気をつけてね。




「って事で、この子はルイスちゃん。二人ともよろしくしてあげてなぁ」




「はーいっ!ルイスさん、これからお願いね」




「あ、ルイスって呼び捨てでいいですよ」




 後から聞いたことだがルイス曰く、女王だからと言って敬われるのが苦手なので友達感覚がいいらしい。女王と言っても、突然変異で知能が人間並みのキノコタンとして生まれただけなので敬われる筋合いはないらしい。


 手のひらをこちらに向けてストップの意を見せるルイスに「あ、分かった」と私が言った後、六花がとある提案をしてきた。




「それで、これからどうしましょう」




「うーーん、森で野宿ってのも気が引けるし…、テントに戻ろっかな」




 夜の森は寒くて暗い、さらに異世界の森は人間には危ない気がする。特に魔物とか。キノコタンみたいに弱い魔物だけが生息しているとは思えないしね。


 それに引き換えテントは平らな見晴らしの良い草原に建ててあるので、月明かりも届くし安全だろう。




「それじゃ、蜜柑さん達は一度この森を出るんですね」




「おう、そうさせてもらうぜ!」




 蜜柑のグーサインを代表に、この場の全員がそれに同意した。


 暗い森、寒い空気を肌で感じながら私達はとことこと木々の間を歩いた。


 森で一度ルイスと別れて、私達はキャンプへ戻った。


 その時は私も結構疲れていたので寝たかったのだ。




 久しぶりにゆっくり寝れる!ひゃっふぅい!


 なんて思うと足取りがさらに軽くなる。というか、ほぼスキップ気分だ。


 異世界に来て、久しぶりに子供に戻った感じがして、少し感動したことは誰にも内緒だ。




 テントに戻って、昼のうちに採ったキノコタンを焼いて食べることにした。昼に調達した食料で、そのまま放置していたので鮮度的に心配だったが、その心配は意外とすぐ解決した。




「ほい、能力でいつでも出来たてだぜ!」




 そう、蜜柑の能力[食物鮮度操作術]という長々とした字列の能力は、対象の鮮度を操作できるという優れもの。


 例えば腐った物を新鮮に、新鮮な物をあえて腐らせたり…などが出来る。大豆に使って納豆にしたりなど、活用法は様々だ。


 蜜柑のこれ、現代日本だったら超大活躍だろうな。




「美味しいなぁこれ〜」




「そうだね、お酒が欲しくなるよー」




 結芽子の感動に私はあえて頷いた。それにはもちろん理由があり…




「昼より美味しくなってま…」




「どわっはぁ!ひ、昼は何も食べてないから!ほんと、ナニモタベテナイカラ」




 私は、椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がり、六花の口を抑えた。


 危ない危ない、つまみ食いをしたのは内緒なんだから…。




「なんでカタコトやねん!」




 結芽子は笑ってくれたが、蜜柑は全てを察したようにこちらを見た。




 ば、バレた!?




 完全にそう思っていたが、蜜柑はぐっと背伸びをして、眉間を押さえながら気分の悪そうな顔をして言った。




「でも今俺達が食べてるのは、キノコタン…、ルイスの同胞だぜ?ま、美味いから良いけどよ」




 ダメだよ、それは言ったらダメだよ蜜柑!




「うっ…。そう言えばそうやな…」




 結芽子はキノコタンの切り身から離れる。




 ほらー、結芽子が食欲なくしたじゃないか!




 その様子を見ていた六花は、機転の利いた対応を取ろうと口を開いた。




「い、いえ!そ、そうです。悪キノコタンなのでノーカンですよ!」




 手をヒラヒラさせて不安を和らげる六花を見て、結芽子は考えを変えてくれたのか、




「そ、そうやんな!ノーカンノーカン♪」




 そう言いながらも、なんだか最後まで気が引ける食事だった。


 一応、美味しかったです。




「「「ごちそうさまでした!」」」




 竹串代わりに使った木の棒を焚き火の薪なんかに代用できるのではないか、という蜜柑の名案を使い、今は焚き火を焚いている。


 もちろん、数本の極細の木の枝じゃ火がついてもすぐに消えてしまうので、そこは森に入っていた時に、結芽子の能力で収納した太めの木の枝も使う。


 仕上げに私のポケットに入っていたライターで完成だ。


 珍しく沈黙の空気になっている私達に違和感を覚え、私はゆっくり口を開けた。




「そう言えばさ、昼に蜜柑達はなんか食べたの?」




「あぁ、森の木の実とか色々食べてたから大丈夫だぜ」




 異世界の木の実とかすぐに食べて大丈夫なのだろうか…、どんなときも堂々として調子に乗っているのが蜜柑のいい所なのだが、そんなに自信満々で「木の実食べたから大丈夫だぜ」とか言われると逆に心配になる。




 いつの間にか焚き火の火は絶やされ、黒い灰だけが残っていた。煙が立ち上る星空を見ながら私はうとうとし始めていることに気づき、すぐにテントの中に入って、4人で寝た。成人女性が4人も入るテントなんて大層なものではなくて、一般的なソロキャン用のテントだ。


 マジで寝付けない、長い長い夜を過ごしたのだった。




 お前ら、まじで狭いよー!!




 ぎゅうぎゅうのテントの隅で1人涙を流したのは秘密だ。






皆さんこんにちはこんばんは!




静紅こと、水鶏口 静紅です!


今回のあとがきは私が担当しまーすっ!


さて、トラックに引かれて転移した私、静紅は森の中でとある少女と出会いました。その少女の名前は、


[ルイス=キノコタン・クイーン]と言って、キノコタン達の女王をしているようです!


いいなぁ〜、私もオシャレして女王したいなぁ。




え?時間がまた押してる??でも台本はまだ続きが……え??




は、はい!




次回もよろしくです!

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