総集編 1〜100頁までの軌跡 その4

【注意】

 この回は総集編です。

 1〜100話までの内容をまとめましたが、それでも10分の1も伝えてません!

 もっと伝えたいことがあるのに文字数がっ…!

 というわけで、総集編の後に気になった部分だけでも本編を読んで頂けると幸いです!


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 ・・・・・



 第七章 マーメイド・ラプソディー



 工業と温泉の街【クラ=スプリングス】から王都に帰ってきた静紅達。

 静紅と結芽子がカルディナと会っている間に、蜜柑達が購入したお土産を知り合いに配り、その延長で紗友里と相談をした。


 内容は、温泉街で見かけたとある少女について。

 以前キノコタンの森を襲撃し、サイクロプスを召喚した水色髪の少女ルースリィス。

 そんな彼女が温泉街でも目撃したとなると、また何が起こるか分からない。

 情報量も武力も多い国王に相談すれば何とかなるだろうという魂胆だ。


「うむ。とにかくこちらも探してみるよ。警戒態勢も取って、情報を集める」


「ありがと」


「あぁ、そういえば、【海辺の花園】で不審な人物を見たという情報が入っていた。こちらはすぐに動けそうにない。ちょっと準備があってな」


「見てきて欲しいと?」


「…うむ」


 温泉旅行から帰ってきたばかりたが、暇な時に海にでも行ってみるか。


 そう考えて、静紅は王邸を出た。



 ・・・・・



 それから1ヶ月半の月日が流れたが、特に何も無かった。

 水着は買ったものの、特に旅行計画は進んでいなかった。


 そもそも、海方面。つまり国道・北東道の通行料金は高い。理由は知らないが、他の国道と比べれば2倍近くかかる。それに、静紅のバイトなどもあり時間がとれなかったのだ。


 家族みんなで王都を散歩していたので、少し停竜車によった。たくさんの竜車と人々が入り乱れるこの場所は、春〜夏にかけては本当に暑いらしく、熱気に包まれていた。

 バスターミナルもしくは都会の駅を思わせる景色に心踊ろされながら国道・北東道への料金を見てため息をつく。


「高い…」


 そこに、静紅の腰をつつくようにして呼びかけた少女が1人。


「ねえねえ、何してるの?」


 オレンジの髪にもふもふうさぎ耳フード、星のついた髪留めとそれほど高くない身長の少女がそこにはいた。


「あれ…君どこかで…」


「お師匠様今すぐその子から離れ──」


 人の感情が読めるフレデリカは、もちろん夢も読み取れることが出来る。それが淫夢でも、妄想夢でも彼女には手に取るように分かる。

 王都近衛騎士団との模擬戦中の六花、竜の上で寝た時の静紅。2人は記憶を消されて覚えていないが、直接夢を見ていたフレデリカは覚えている。


 少女の名前はキュリオス。ルースリィスと親しい人物でとても危険な人物だ。


「アハハ!どうしたのぉ?フレデリカちゃんっ」


「くっ…」


 キュリオスがフレデリカに手をかざした途端、フレデリカは強い目眩に襲われてその場に倒れ込んだ。


「お前…誰だよ」


 蜜柑がそれを聞くと、キュリオスは妖しく笑って言った。


「にししっ。ルースリィスちゃんの友人って言ったら早いかな?」


 うさぎ耳と丸いしっぽのついた服を揺らし、人混みの中へ消えたキュリオスを置いて、フレデリカをとりあえず家を連れて帰った。



 ・・・・・



 フレデリカが目を覚ますと、もう時間は夕方だった。どうやら昼から夕方までずっと寝ていたらしい。

 彼女の中に、何か足りない気がしてそっと呟く。


「お師匠様って…誰だっけ」


 静紅の記憶を無くしたフレデリカと、いつものように接する静紅。

 2人の間には違和感があったが、フレデリカの一言で静紅は確信に至る。


「ほんとに…私の事忘れちゃったの?」



 ・・・・・



 次の日、原因を突き止めるために王邸へ向かった静紅一行。

 静紅以外の記憶は覚えているようで、王邸での出来事などは全て残っていた。

 とりあえず、静紅とはどんな人物なのか、フレデリカは静紅の弟子だった事。静紅との思い出を話してみたが、本人はピンときてないらしい。


「マーメイド・ラプソディーという海の宴がある。そこに記憶を元に戻す道具があると聞いたことがあるが」


 紗友里の言葉で、これからの静紅の行動は決まった。


 国道・北東道を使って海を目指す。


【海辺の花園】【マーメイド・ラプソディー】という2つの目的があるのなら、もう躊躇うことは無い。


 静紅達は、値段など気にせずに海辺行きの竜車に飛び乗って王都を出た。



 ・・・・・



 到着した村の名前は【ウォーター・シェル】

 The南国!と言う感じで、ヤシの木や白い砂浜、真っ白な雲が静紅の前に広がった。


 村の案内所で聞いた人形伝説という噂を聞いたあと、静紅達は海岸の方へ向かった。



 人形伝説によると、この世界の人形は忌み嫌われているらしい。姿を見るだけで天変地異が起き、人を襲うようだ。

 そんな根も葉もない可哀想な人形が、


 静紅の前にひょこっと出てきた。



 ・・・・・



「え、えっと…あなたは人魚なんだよね?」


「元人間だけど今は人魚やってるよ」


 長い銀髪に下半身が魚類の全裸少女イナベラ。

 海岸に行ってみるとマーメイド・ラプソディーについて何か分かるのではないかと思い向かってみたが、人魚本人に会えるとは思わなかった。


 どうやらマーメイド・ラプソディーは海中で開催するらしく、人間が出席するには[水中呼吸の加護]が必要になるらしい。水の中で息が吸えないと宴にたどり着くことすら難しい。


 とある洞窟の中にある【蒼海の宝玉】を使えばその加護が受けられるらしく、その洞窟を探した。



 ・・・・・



 少し苦労したが家族の記憶を取り戻すためならなんのその。

 洞窟への隠し扉を見つけ、無事洞窟内へ入れた静紅達は宝玉を探した。


「この向こうじゃない?」


 明らかに大きな扉がそこにはあり、開けてみるとそこには…


「そんな…黒龍・ミツマタ!?」


 精霊を超える力を持ち、存在だけで世界に影響を与える程の権限を持つ龍。

 宝玉を守る守護龍という立ち位置なのか、静紅達が視界に入るや否や襲ってきた。


 途中蜜柑が襲われた時に不思議な出来事が起きた。



 ・・・・・



(前回同様、以下は本編の抜き出しになります!)



「おーい静紅、急にぼーっとしてどうしたんだよ」


「えっ、いや、何も無いよ」


 ここどこだろう。

 見た事のある蜜柑の服装に懐かしい屋上。空は夏空で、手には食べかけのフルーツサンドイッチが一つ。私の服装も見たことが…、高校の服だ。白いカッターシャツに紺のスカート、黒のニーハイに茶色の学生靴がよく目立つ。


「ふーん、珍しいな静紅がぼーっとするなんてさ」


「そ、そうかなあ」


 さっきまで海辺の洞窟に居たはずなんだけど…。


「ほら、カツサンドやるよ」


「え、いいの?」


「俺はもうお腹いっぱいだし、食べないと頭回らねえだろ」


 紫のツインテールを風にたなびかせながら、鉄のネットの向こうに広がる都会の街並みを見つめる蜜柑は、大人の蜜柑とは違って、純粋で目がわくわくしていた。


「…ありがと」


 それにしても、なんで高校時代に?

 蜜柑が龍に噛みつかれて、それから…。

 何も思い出せないや。


「あ、チャイム鳴ったぞ」


「嘘!え、もうそんな時間!?」


 状況が掴めるまで、昔の私に身を委ねてもいいかな。


 私はサンドイッチを口に押し込んで牛乳瓶で流し込み、下へ降りる階段を駆け下りた。



「ねえ蜜柑、最近死んだことある?死んだことはなくても、命の危険に会ったとか」


「お前ちょっと今日変だぞ。俺は死んだこともないし大きな怪我もした事ねーよ」


 授業中、前の席に座る蜜柑の肩を叩いて尋ねてみても、有力な情報は掴めない。


「そっか…」


「おーい、そこ授業聞いてんのか?」


「「は、はい!すみません!」」


 先生に怒られるのも何年ぶりだろう。

 なんだか懐かしい感じで嬉しかった。



「なー静紅、授業中聞いてきただろ。死んだことあるかーって」


「うん」


 夕暮れ時の空の下、部活終わりの私と蜜柑は肩と足取りを合わせて下校中だ。

 焼き鳥屋の匂いが鼻腔を刺激し、思わずヨダレを垂れてきてしまう。

 車のヘッドライトは徐々に明るくなり、通行人はお腹を空かして歩いている。


「俺がさ、もし大怪我したり、危ないことがあったら…」


 蜜柑はメガネを取ってこちらを真剣な表情で見る。

 蜜柑はメガネを取った方が可愛い系の女子だ。メガネをやめようとしたらしいが、コンタクトはめんどくさいと感じたらしい。それはそれで彼女らしいが。

 目の前の女子が私にぐっと歩み寄り、その距離わずか1cm。


 蜜柑はにかっと笑い、数秒間の空白を開けた後、口を開いた。


「──その時は、お前が助けてくれよな!」


 私はそっと目を閉じて、再び蜜柑を見ようとしたが、それは叶わなかった。



 ・・・・・



「絶対…助けるから!!」


 蜜柑に手を伸ばし、静紅は強い心で蜜柑を助けようとした。


 その瞬間、バッグの中に居た人形が外に飛び出し、蜜柑を助ける。


「ここからは、わたくし達の出番ですわ!」


 金髪の盾を持った少女が、その場で誰よりも英雄に見えた。



 ・・・・・



 さすが龍ということで性能はチートだ。


 チートその1

 物理、魔法共にダメージ9割カットの硬い鱗


 チートその2

 能力で常に体力持続回復



 それに加えて三本の首があるのでアテナがどれだけ挑発魔法を使っても防御しきれない事が多々ある。


 アテナが最前線で龍の攻撃を受け止める。

 フレデリカとヘスティアが近距離攻撃役。

 六花、結芽子、蜜柑が中距離。

 静紅が全体の状況を見つつ指示を出す役。


 この体制で戦ったのだが、結果は惨敗。

 もうダメだと完全に諦めた時、形成は真逆と言っていいほど変わる。


「諦めたらダメ。家族のためなんでしょ?」


 立ちはだかる高すぎる壁を前に、人魚はただ1人龍へ立ち向かった。


 軽く拳を握り、軽すぎると思える気合いで龍を殴る。


「ん…」


 ばごんっ!


 と、何かが破裂したような音がして気がつくと龍の鱗は殴られた部分だけだが弾け飛んでいた。


「うっそぉ…」


 呆気を取られた静紅達だったが、好機を逃さず鱗の無い部分へ集中砲火!!


 黒龍・ミツマタ討伐成功!


 声を上げてみんなで喜び、台の上に置かれた【蒼海の宝玉】を手に取った。


[水中呼吸の加護]。それは、水中呼吸はもちろん、水圧、水流の不快感を無くし、地上とほぼ変わらないスピードで歩くことの出来るすごい加護らしい。


 その日は1度宿屋に戻り、寝ることにした。



 ・・・・・



 その夜、銀髪の長い髪の少女が魔物をなぶり殺したのは誰も知らなかった。

 その少女は、ゆっくりと海の中へ入っていった。


 ・・・・・



 朝目覚めると、何やら外が騒がしかった。

 どうやら何者かが魔物を無惨に殺したらしい。

 常夏に生える草の上に魔物の血が広がり、言葉には出来ない光景だ。


 事件から逃げるように昨日イナベラと出会った海岸へ向かった。



 ・・・・・



 海に入り、イナベラのペットである[ブルーシャークン]にまたがって海中を進む。


 やがて何も無い場所に着き、イナベラが合言葉を唱える。


 するとどこからか扉が現れて、その奥には祭りが催されていた。



 とうとうマーメイド・ラプソディーに到着した静紅達。

【海辺の花園】で目撃された不審な人物。

 家族の失われた記憶。

 村で魔物を殺した銀髪の少女。


 海の宴が今、始まる…!




【あとがきっ!】


 はい!とりあえずここまでで第100話になります!

 1、2、3、4と続いてきた総集編シリーズも今回でついに終了です!


 特にコメントすることも無いのですぐに締めますね!(笑)


 次回からは本編を進めていきますので、気になった方は読んでいただければ幸いです!

(欲を言えば、1から全部読んで欲しいっ!)


 ブックマーク、評価よろしくお願いいたします!


 それでは皆さん!これからもよろしくお願いします!さよなら!

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