総集編 1〜100頁までの軌跡 その2

【注意】

 この回は総集編です。

 1〜100話までの内容をまとめましたが、それでも10分の1も伝えてません!

 もっと伝えたいことがあるのに文字数がっ…!

 というわけで、総集編の後に気になった部分だけでも本編を読んで頂けると幸いです!


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 フレデリカの過去を知った静紅は、何とも言えない気持ちになった。慰めの言葉も見当たらず、自分の語彙力を憎む。


「なんて顔してるんですかお師匠様!ほら、笑って笑ってー!」


「え、あ、うん…」


 その日はなかなか気分の上がらない1日になったが、六花と会話をしていると自然と表情が明るくなっていった。



 ・・・・・



 翌日の朝はとても早かった。

 どうやらキノコタンの森が近いのですぐに到着したいという近衛騎士のせっかちが出たのだろう。全ての指揮を執っているのが紗友里なので、彼女もひょっとすればせっかちなのかもしれない。


 さて、早く準備をしたので静紅の目は完全に覚めてはない。


 ちなみに六花は、電磁砲を撃った後の[筋肉痛]

 で死にかけている。なので医療班に常に下級回復魔法ヒールを使うというゴリ押しで運送中だ。


 準備にも時間を費やさなかったため、今静紅は今世紀最大の眠気に襲われている。

 フレデリカに許してもらって、竜の上で寝させてもらった。



 ・・・・・



「静紅ちゃん…静紅ちゃん!」


 静紅が目を開けると、そこは真っ暗な空間だった。周りにはフレデリカや竜は居ない。

 誰かに声をかけられたので、必ずどこかにいると思い周囲を見渡すと、そこに居たのはうさぎ耳のついたもふもふフードの少女だった。


「やっほー、私の名前はキュリオス!好奇心のキュリオスだよ」


 明るく話しかけてきた少女の髪は、オレンジ色だ。

 キュリオスの言い分は、静紅の能力の修正を行うのだとか。

 初めて会う人物に委ねていいものか、と悩んだところもあったが特に断る理由も無いためOKする。


 途中ピリピリした空気感もあったが、キュリオスの掛け声によって静紅は瞳を閉じ、深く、静かな眠りについた。



 ・・・・・



 六花の時同様、キュリオスと会った記憶を消された静紅はまだ揺れる竜の上で目を開ける。


「お師匠様…夢の中で誰かとあってませんでしたか?」


「うーん、会話した記憶はあるんだけど、内容とかどんな人とかは覚えてないや」



『能力を修正しました。権限者・キュリオス』


 その文字が静紅の目に入った時は相当驚いた。

 だって、異世界文字ではなく馴染みのある日本語で書かれていたのですから。



 ・・・・・



 謎の文字はいつの間にか消え、周囲に意識を向けると、足元には真っ白な雪がとけかけで積もってあった。

 夜は肌寒くなるものの、さすがに氷点下までは行かない草原地帯。それなのにどうして日差しのある草原のド真ん中に雪が積もってあるのか。

 考えても答えは見つからず、とうとう目的地のキノコタンの森に到着した。


 筋肉痛が完治した六花が静紅と合流し、キノコタンに森を見つめた。

 静紅の目には純白の雪色に染まった思い出の場所が移るのみ。


「すごいことになってますね…」


 酷い有様のキノコタンの森を隣で、一番近くで見ていた六花が声を上げた。


「静紅、六花。君たちはここで待っていてくれ。ルイスたちがいるから友達はけがを負っていないと思うが、それでも危険すぎる」


「それならなおさら助けないと!行くよ六花!」


「ちょっとお師匠様~!私を置いていかないでくださいよぅ!」


 紗友里から逃げるように森の奥に足を踏み入れた静紅達だった。



 ・・・・・



 フレデリカには二つ能力が宿っている。

 相手の心を読める[心情透視]と物体を質量無視で運べる[物体収納術]。

 心情透視には静紅は何度も悩まされたが、今は能力を切ってもらっているのでプライバシーは守られている。

 もう一つの物体収納術は結芽子も持っている能力で、体内に生物以外なら何でもしまうことのできるいわゆるアイテムボックス的立ち位置の能力だ。


 フレデリカは二つ目の能力を使用して自分の体重ほどの大剣を取り出して片手で持ち構えた。


 静紅の目の前に出てきたのは雪精という下級精霊だ。

 この世界の精霊というのは龍に次ぐ人類の天敵で、存在だけで魔法の元となる[魔分子]が周囲に満ちるほどの絶対的な魔力と世界の自然を保つ役目である。


 もちろんすべての精霊がすごいわけではなく、階級が存在する。

 文字通り下級、中級、上級だ。


 雪精は大昔、人と仲良くしていたが、あることがきっかけで人への考え方が一変し、あえて人を楽しませるために使っていた雪像を武器に人を襲うというわけあり精霊だった。


 途中静紅、六花、フレデリカのコピーのような雪像を生み出されて大苦戦したが、空から舞い降りてきたルカ&ルナによる火属性魔法攻撃で危機を脱す。

 壊した雪像は一体。静紅型の雪像のみだ。

 フレデリカの雪像は本人と一騎打ち状態で、それを応援する静紅達だったが、完全に油断していた。


 静紅の天敵で、静紅の大好きな人の形をした雪像を微塵も警戒していなかった。


「電磁砲…」


 雪の積もった木の裏から雪の人差し指が笑顔の二人組に向けられる。


「ルカ、ルナァァァァァ!!」


 静紅とは思えない叫び声が森の中に響いた。



 ・・・・・



 蜜柑が玄関のドアを開いた途端、肌を冷気がなぞる。


 場面は移り変わり、静紅ら到着前のキノコタンの森。


 いつものようにキノコタンの森で生活していた蜜柑と結芽子。

 しかし日常はとある出来事によって変わってしまう。

 前にファールルイスが嫌な予感を感じて救急信号を出したが、今日までは気のせいだと談笑の内容にしたほどだ。


 雪の積もった森を前にしたルイスは緊急事態と感じて戦闘班のキノコタンを集合させた。

 元戦争国ということもあり、キノコタンの集合はすさまじく速かった。

 全員が武装し、ルイスの家の前に集まる。


 森の最深地のほうからクマの遠吠えのようなものが聞こえるが、ひとまず弓の訓練をしているファールルイスとの合流が大切だ。



 ・・・・・



 ファールルイスと合流した蜜柑たちは森の奥へと入っていった。


 作戦を立てたのでそれを行動に移す。

 蜜柑と結芽子がおとりで、ルイスコンビは木の上で弓を構え、キノコタンは後ろで待機だ。


 結芽子は無茶な作戦を成功させ、魔物を落とし穴へうまく誘導することができた。

 身動きがうまく取れなくなった魔物に向かって木の上で待機していたルイスとファールルイスが思いっきり弓を引く。


 ただの矢ではない最弱の魔物、キノコタンの勇気が詰まった光の一矢。

 白の森に二筋の矢が駆け、

 轟音と鋭い衝撃が飛んでくるが地面を踏みしめて耐える。


 魔物の名前は[アイシクルベア]。


 氷柱の白熊という名前の付いた魔物の亡骸を結芽子に収納し、一息つこうとしたとき、後ろの方から火属性魔法攻撃である火柱が空めがけて立ち昇った。


「な、なんだよあれ…」


 ルカとルナの魔法を見たルイスは何かを思いつき、火柱の方へ走って行ってしまった。それを追いかけて蜜柑たちも森の中をさらに進んでいった。



 ・・・・・



「ルカ、ルナ…」


 六花の雪像を壊し、大きな穴の空いた二人の小さな体をそっと持ち上げる。

 どれだけ彼女らの名前を呼んでもその鮮やかな瞳を見ることはできない。


 もっと私に何かできたはずだ。


 そんな悔いが静紅の頭から離れない。目から涙があふれて思わず嗚咽が漏れる。


「静紅さん、」


 静かに泣く静紅を慰めるように六花はそっと抱きしめる。

 その時、


「やっほー!しずくぅ!」


「え、蜜柑?なんでいるの」


「いや、だってここキノコタンの森だし」


 蜜柑の足の後ろからそっと静紅の方を見るキノコタンの姿を見て少し安心した静紅であった。



 ・・・・・



 蜜柑らに状況を伝えた静紅はフレデリカの言葉に耳を傾ける。


「王都近衛騎士団の医療班なら応急処置はできるはずです」


 というわけで、森の入口の方で別れた近衛騎士と合流することに。

 雪の異変と通常いるはずのないアイシクルベア。それぞれの謎は一人の人物によって…



 ・・・・・



 嫌な予感のした紗友里はルカとルナを静紅の方へ向かわせて、騎士団の方を見る。


 ニンナが急な悲鳴を上げたのでどうしたのかと聞いてみると、彼女の前に見たことのない巨体蜘蛛が現れた。


「ニンナさん!しっかりするっス!」


 ニンナに並ぶ腕前のある彼女の名前はフラン。

 紺の髪に忍者コスチュームの身に着けた少女。


 戦闘経験の浅い騎士をあえて避難させて、ニンナとフラン、自分だけをこの場に残した。

 それが吉と出るか凶と出たかわからないが、フランの作戦で蜘蛛を圧倒して撃破、したのだが。


「ふふ、お久しぶりです、紗友里さんっ」


 狂気の笑みを浮かべた水色髪の少女が、宙をぷかぷか浮いていた。


「くっ…!ルースリィス貴様ぁぁあ!!」


 憎悪に満ちた紗友里の叫び声がニンナとフランを含める三人の鼓膜を揺らした。



 ・・・・・



「紗友里さん、とりあえず…友人さんのように死んでくださいっ」


 ルースリィスの手に青い光の細筋が集まり、やがて鋭い刃になる。

 紗友里の剣とぶつかり火花が舞う中、更に攻撃を激しくしていき、やがて紗友里は木に体を打ってしまう。


「ふふ、もっと部下を使わないと自分の不利益になるだけですよ」


「大切な仲間だから…、傷つくのは私だけで良い!」


「アハハ!なるほどなるほど〜、感動的ですね。ですが…」


 剣を手から離して空中でリラックス体勢をとり、ルースリィスは言葉を続ける。


「その考え方があなたの友人、ナギサさんを殺したんですよ」


 ぐったりとする紗友里に向かって、容赦なく剣が飛んでいく。


 刹那、森の奥から桃色髪の女性が現れて能力を使って剣を静止させる。


「ぅおりゃぁあ!馬鹿力じゃい!」


「…静紅さんですか。はぁ、気が変わりました。ここにいる全員を抹殺します!」


 ルースリィスの隣に、巨体魔物(ハイモンスター)であるサイクロプスが召喚されて、静紅達に牙を向ける。


 魔法を使って動きを止めて、ルイスコンビ、紗友里、ニンナ、フランの集中砲火がサイクロプスに降り注ぎ、ようやく撃退に成功する。

 ルカとルナはいつの間にか傷が癒え、魔法も使えるほどになっていた。


「ルカ、ルナ…あなた達って…」


 静紅が2人に声をかけようとした時、後ろの方から蜜柑に呼ばれた。

 サイクロプスの驚異は去り、ルースリィスもいつの間にか姿を消していた。

 紗友里はうかない顔をしていたが、フレデリカが何とか支えてくれるだろう。


 サイクロプス戦によって壊されたキノコタン森を近衛騎士含めた大人数で直している。

「静紅はこれからどうしたい?」その蜜柑の言葉から幼馴染4人の相談が始まった。

 内容は、キノコタンの森から出て王都に行くものだった。


 答えは王都に行って生活を送る事に。



 ・・・・・



「そうですか。分かりました…元気でいてください」


 ルイスとファールルイスにしばらくの別れを告げ、静紅と六花と蜜柑と結芽子の4人はキノコタンの森を出た。


 帰りもフレデリカの竜に乗せてもらった静紅は、彼女ととある会話をする。


「お師匠様、これからもフレデリカをよろしくお願いします」


「え?一緒に住むってこと?」


「いえ、紗友里様のこともありますし、たまに仲良くしていただけるとありがたいといいやすか」


「あー、うん!分かったよ。よろしくねフレデリカ」


「はい!お師匠様っ!」


 夕日を右手に、静紅達は竜に乗って王都に向かった。



 ・・・・・



 長い3日の移動の末、王都に到着した静紅は王邸を見上げる。


「な、なんやこの大きな建物は…!」


 結芽子が口をあんぐりと開けて王邸を眺めている。

 それを無視してドアをノックして王邸に入り、紗友里と会議室で会議をした。


「故郷が同じもの同士仲良くしたい」


 1度それに反対した蜜柑だったが、金も貰えるとなると話は別だ。

 国家とある程度の協定を結び、ついでにお金も少し貰った。


 紗友里はわざとフレデリカを解雇し、静紅の元で暮らすことを命じた。

 静紅と話しているフレデリカが1番笑顔で、そこで暮らす方がいいと言う考えだ。


 さて、王邸を出た静紅は拳を空に突き上げた。


 ここから始まるんだ…私の…元社畜の異世界生活が!!


 ぎゅっと手を握って胸の中でそう強く叫んだ。

 その日の空は、雲ひとつない晴天だった。




【あとがきっ!】


 今回も読んでいただきありがとうございました!

 さて、まだまだ続きそうな総集編ですが、じつは本編の内容は大体はかんがえてるんですよ~。


 え?モミジの言う予定は九割変わる?


 ……気にしないで下さい!


 まぁ何ですか。まだ40話ほどまでしかまとめられていませんが、これからも総集編は続きます。

 本編から読んでいただいてくださっている方はこれからもよろしくです!

 総集編から読んでいただいている方は、気になった部分だけでもいいのでちょこっとのぞいてみてください!

 セリフの量など10、100倍以上あります!

 逆に総集編のみのシーンもあるので探してみるのもいいかもです。

 なんせ、あくまでこれは素人の書いた総集編。

 もっとキャラは愛くるしく、もっと情景はきれいです!静紅の見たもの、感じたものは100倍詳しく描き、戦闘の苦戦さももっと伝わるはずです!


 え?熱く語りすぎ?


 うーん、それじゃそろそろ締めようかな!


 それではみなさん!これからもよろしくです!

 もしよろしければブックマーク、評価お願いします!




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