第44話 窓際クランの炎の魔術師
どうやらジャイアントビッククラブはあのときすれ違ったパーティが4層から引っ張ってきたらしい。
階層間の転移門をモンスターが通れるんだなとユーリが驚いていると、「人間が通れるんだから、通れて当然でしょ?」とフィーに言われた。
まぁ、そう言われればそうか。
引っ張ってきたパーティはペナルティとして、一週間の探索禁止が言い渡されたらしい。
罰が軽いような気がしたが、こういうことは下層へと向かえばよくあることらしい。
正しい対応は他のパーティなど気にせず全然違う方向に逃げる。だったらしい。ユーリたちはローに注意を受けた。
まあ、見捨てられるはずがないので、数階層下のモンスターまで調べておこうとユーリは心に決めた。
ユーリたちとしてはあの戦闘での収穫が多かった。
ジャイアントビッククラブは倒せて、その魔石は結構いい値段で売れた。
レイラも火の魔法が使えるようになって、万々歳のはずなんだが。
「あのー。レイラさん。近くないですかね?」
「・・・邪魔?」
「いや、そんなことないけど」
なぜか、レイラがピッタリひっついて離れてくれない。
何がまずいって、左腕に当たる身長に対して大きすぎるレイラの胸部装甲と圧力までまとい始めたフィーの視線だ。
ユーリがちらっとフィーの方を見ると、ギン!とか聞こえてきそうな目で睨まれた。コワイ!
「・・・今日の晩ご飯はユーリが好きなハンバーグにする」
「え!?今朝はオムライスにするって言ってたじゃない!」
いきなりの話題にフィーは思わず立ち止まってレイラの方を見た。
レイラは腕を組んだままユーリを見上げた。
「・・・ユーリ。ハンバーグにしていいと思う?」
「えーっと。オムライスはフィーの好物だし、朝はオムライスの予定だったんだからオムライスがいいんじゃないかな?」
ちらっとフィーを見ると、彼女は一瞬嬉しそうな顔をした後、プイッとそっぽを向いた。
「な!?べ、別に好物だから文句を言ってるんじゃないわよ!」
レイラもその様子を見て、クスクスと笑った。
「・・・わかった。レイラがかわいそうだからオムライスにする」
「ちょ!レイラ」
ユーリはレイラが何を考えているかわからなかった。
歩きなたらぎゅっとユーリの腕を強く掴んだ。
「・・・全部、ユーリの言う通りにする。ユーリを信じてるから」
「え?」
ユーリは驚いてレイラの方を見た。
そして、どうしたらいいかわからず、オロオロしながらレイラに語りかけた。
「あのさ。レイラ・・・」
レイラはユーリの方を見ると、可愛く舌を出して、ユーリの腕を離した。
「・・・冗談。できるだけ自分のこと、信じられるようにする」
ユーリはホッと胸をなでおろした。
そのまま離れるのかと思えば、レイラはキュッとユーリの服の裾を掴んだ。
「・・・でも、本当に辛い時は、また頼っても、いい?」
レイラは少し不安そうにユーリを見上げた。
ユーリの服を掴んだ手は少し震えていた。
ユーリはそんなレイラに優しく微笑みを向けた。
「当然だろ」
「・・・ありがと」
だいぶ遠くに行ってしまったフィーが大きく手を振っていた。
「ちょっと、二人とも!何してるのー。早く行くわよー」
「わかったー」
ユーリはそう言って走り出した。
レイラはその後ろをついて行った。
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