第三章
第23話 窓際クランのダンジョン探索
『紅の獅子』のユーリ、フィー、レイラの三人はついにダンジョンの1階層に来ていた。
そうはいってもやることは大して変わらない。
今までのようにユーリが前に出てモンスターの注意を引き、そのうちにフィーとレイラが一匹ずつ仕留める。
今までと唯一違うのは、フィーが大剣ではなく短剣を持っていることだ。
しかし、訓練階層では匹ずつしかいなかったのに、1階層では2匹同時に出てくることがある。
というより、半分が2匹同時に出てくる。
いま、ユーリたちが戦っているのも2匹で行動していたミニシーワームだった。
ユーリはミニシーワームの攻撃を受け、一歩後退した。
もう一匹はレイラが間断なく攻撃して足止めしていた。
「くそ、まけるかーー!」
一歩後退してできた間を利用して、助走をつけ、ユーリはミニシーワームにシールドバッシュを当てた。
ユーリのシールドバッシュを受けて、ミニシーワームは体勢を崩した。
「フィー!」
「任せて!」
体勢を崩したミニシーワームを見て、ユーリはフィーに合図を出した。
フィーはユーリの後ろから飛び出してミニシーワームに斬撃を加えた。
「はー!!」
十分にためた斬撃は深々とミニシーワームを切り裂いた。
ミニシーワームはフィーの斬撃がとどめとなったのか、動かなくなった。
「よし、レイラ、こっちはかたずいた」
「・・・わかった」
『アイスアロー』を連射して一体のミニシーワームを足止めしていたレイラが詠唱を始めた。
ミニシーワームにはレイラに向かって動き出した。
しかし、ユーリはその邪魔をするために立ちふさふがった。
「残念だったな。こっから先は行き止まりだ」
「はぁ?あんた何言ってんの?」
ユーリがかっこつけたのに対して、フィーは容赦なく切り捨てた。
「いいじゃないか!ちょっとくらいかっこつけても!!・・・ってうわ!」
ユーリがフィーに気を取られているうちにミニシーワームはすぐ近くまで来ていて、ユーリに向かって体当たりをした。
「何やってんのよ」
「いや、今のはフィーが!ってそれどころじゃなかった、な!」
フィーと会話しながらもユーリは危なげなくミニシーワームを裁く。
ユーリが数回ミニシーワームの体当たりをいなしてる間に、レイラの詠唱が完成した。
「・・・『アイスランス』」
レイラの魔法はユーリを避けるように飛び、ミニシーワームに突き刺さった。
レイラの攻撃でミニシーワームは絶命した。
「ふー。なんとか、怪我もなく倒せたな」
「・・・さすがは1階層。訓練階層と遭遇率が違う」
「そうね。でも、一層は訓練階層と一体一体の強さが変わらないのが救いね」
三人はダンジョンの一層目に来ていた。
フィーが召喚獣を手に入れたことで、パーティーの半分が召喚笛を持ったことになり、ダンジョン探索の許可が出たのだ。
「・・・フィー。絶好調」
「そうだな。やっぱ、召喚獣がいると違うか?」
今日の探索が楽なのは何といってもフィーの動きがいいからだ。
短剣になり、攻撃回数も増えたうえ、攻撃もまず外れなくなった。
付け加えると、ダンジョンを歩くスピードも今まではフィーに合わせてゆっくりだったが、今一番遅いのはレイラだ。
「んー。武器も変わっちゃったからなんとも言えないけど、体が軽い感じはするわ」
フィーはウォーミングアップをするように体を動かしながら答えた。
そして、少しバツの悪そうな顔をしながらユーリに向かって行った。
「ごめんなさい。わたしだけ召喚しちゃって」
「まだいうのか?三人で決めたことなんだから、もういいだろ?」
フィーは申し訳なさそうな顔をした。
レイラもつられるように申し訳なさそうにした。
「・・・魔素も、ユーリだけ入ってない」
「まぁ、この調子なら2、3日もすれば目標額溜まるし、別にいいだろ」
そう、ユーリは召喚を行わなかったのだ。
ユーリは召喚笛を二つも一度に使えば、どこから手に入れたのかと思われるのだはないかと思い、もう一つ召喚笛を買えるまで使わないことにしたのだ。
ユーリが懸念したのはこのパーティーが思いの外注目されていたからだ。
クランは窓際ではあるが、歴史のあるクラン、フィーやレイラもそれぞれの理由で注目を集めていた。
見た目も可愛いし。
そんなパーティーが不審な行動をとれば探り活くるものもいるかもしれない。
召喚笛自体も、ついうっかり持ってきてしまったもので、探られていたい腹があるというのも、要因の一つだ。
別にユーリが召喚獣をを持っていなくてもダンジョンには潜れるというのもある。
ダンジョンに潜れさえすれば、普通にバイトをするより稼ぐのは簡単だ。
まぁ、一人だけ強くなれない状況は流石に嫌なので、目標額がたまれば速攻で使う気ではいるが。
「・・・今日だけでもうミニシーワームにを20体以上倒してる」
「この調子でいけば、明日には目標に届くかもね」
フィーが武器を変えたことで、仮の効率が飛躍的に上がったというのも理由の一つだ。
昨日までの5倍以上の効率で狩りができている。
目標額をためるのもそう遠くないだろう。
「まぁ、無理せず行こう。怪我でもしてダンジョンに潜れなくなる方が困る」
ミニシーワームから魔石を取り出して、ユーリは立ち上がった。
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