第11話 窓際クランの救出劇 2
小屋に突入したユーリは怪しげな部屋を探した。
カモフラージュされている様であれば、かなり時間がかかると思い、レイラと別れて探そうと思っていた。
しかし、地下室の入り口は隠し階段になっていたが、三馬鹿が閉めずに表へ出て行ったようで、すぐに見つけることができた。
こういうところが三馬鹿の三馬鹿たる所以だろう。
地下室はいくつかの部屋があるようで、上の小屋より広いスペースがあった。
試しに手近な部屋を開けてみると、お金や武器がたくさんある倉庫のようだった。
ユーリは部屋の入り口近くにあった剣を手に取り、レイラはユーリの真似をするように長杖を掴んだ。
ユーリは目に入った笛を二つ掴んでそのうちの一つをレイラに渡した。
「手分けをしよう。レイラは奥から。俺は手前から。誰か居たらこの笛を吹く。フィーがいたらできるだけ静かに救出した後合流。それでいい?」
「・・・問題ない」
「じゃあ、絶対フィーを助けよう」
ユーリはそう言って拳を突き出した。
「・・・なにこれ?」
「あ〜。知らないか。ちょっと俺とおんなじように拳を出して」
「・・・ん」
レイラは恐る恐る拳を出した。ユーリはそれにコツンと拳をぶつけた。
「これで終わり。まぁ、意味は『頑張ろう』とか『お前を信じてる』って感じかな」
「・・・『お前を信じてる』・・・」
レイラは一度自分の拳を見つめた後、ガツっと強めに拳をぶつけてきた。
当然痛くて二人で悶絶した。
「いって。ごめん。怒った?」
ユーリは強くぶつけられた拳をさすりながらレイラに謝った。
レイラはスッと立ち上がると、真っ赤な顔をユーリから隠す様にそっぽを向いた。
「・・・怒ってない。私も信じてる。大切なクランメンバーだから」
そう言って、走り去って行った。
レイラのその様子を見て、ユーリは気を引き締め直す様に頬を強く叩いた。
「・・・絶対見つけないとな」
ユーリは手近な扉を蹴破った。
***
フィーは縛られた状態で震えていた。
(逃げなきゃいけない。怖い。物音を立てちゃダメ。あいつらが戻ってきたらどうしよう。)
色々な考えが頭の中に浮かんでは消える。
パニック状態になって、過呼吸の様に息をして動けないでいた。
どれくらい時間がたったかわからないが、扉を開く音が聞こえた。
フィーは自身を守るように更に身を小さくした。
「フィー!?大丈夫か!?くそ、あいつら!!!」
「!?」
口に当てられていた布が取り除かれた。
聞こえてきた予想外の声に顔を上げると、そこにはユーリがいた。
ユーリの顔を見て、今まで張り詰めていたものが決壊した。
「うわーん」
「大丈夫。もう大丈夫だから」
ユーリはどうしていいかわからず、とりあえずフィーを抱きしめた。
フィーを抱きしめてくれるユーリはとても暖かかった。
***
その頃、小屋の表では、三馬鹿が動物のフンの片付けをしていた。
「クソ、いいところだったのに」
「くちじゃなくててをうごっかせ!」
三馬鹿がフンまみれになりながら片付けを行なっていた。
もともとフンは袋に入っていた。
しかし、いくつかの袋には切れ込みが入っており、持ち上げると破けてフンが体についてしまう。
結果、袋から溢れたフンで全身フンまみれだった。
「せっかく運が向いてきたと思ったのによー」
今日はいろいろなことがいい方向に進んでいた。
クランハウスでは、知らないガキにフィーたちの説得を押し付けることに成功した。
失敗すれば、それを理由にあいつをこき使えるし、成功しても約束なんて反故にすれば良い。
上機嫌で帰って来れば、なぜかは知らないが、フィーが家の前にいた。
この辺はスラムの入り口な上、肥料屋の発する悪臭でほとんどひとがこない。
つまり、さらっちまっても問題になりにくい。
「そういえば、フィーのやつ、なんでこんなところに居たんだ?一人で」
「おい!何度いえばわかるんだクズ。手を止めるな!!」
「は、はい」
肥料屋のオヤジにどやされたので、チンピラは仕事を再開した。
チンピラは手を動かしながら考えていた。
そもそも、本当に一人できてたのか?
「あーくそ〜。誰がこんなことしたんだよー」
「!!」
チビのチンピラのセリフに、閃くものがあった。
まさか、フィーには仲間がいたんじゃないか?
まさか、その仲間がこれをやったんじゃないか?
「まさか!」
その仲間がフィーを助けにきてるんじゃないか?
立ち上がったチンピラはいてもたってもいられず、小屋の中に入った。
「アニキ、どうかしたんっすか?」
チビのチンピラがその後に続いた。
「お、おれも」
大柄なチンピラがその後に続こうとした。
「(ガシ)まだ終わってねぇだろ!仕事を続けろ!!」
しかし、回り込まれてしまった。
「うっす」
大柄のチンピラは作業に戻った。
作業から逃げて小屋に入った二人のチンピラが見たのは壊れた窓だった。
***
ユーリがフィーをあやしているとレイラが部屋に入ってきた。
レイラは抱き合っている二人を見てジト目を向けた。
人が必死に探している間に何をしているのか?と。
「・・・何してるの?」
「こ、これはちがうの!いた」
「・・・!フィー」
レイラを見てユーリから離れようとした。
しかし、フィーは縛られたままだったので、受け身も取れずに床に転がった。
そして、抱き合っている間は気づかなかったが、フィーはあられもない姿だった。
焦ってユーリは自分の上着をフィーにかけた。
「!と、とりあえず、これをきて着てくれ」
「?きゃぁ」
真っ赤な顔でそっぽを向き合う二人。
その様子を見て、レイラの瞳はさらに冷たくなった。
「・・・ラブコメは帰ってからにして」
「「違う(わ)!!」」
レイラも本気で言ったわけではないため、説得はすぐに終わった。
ユーリとレイラでフィーの拘束を解き始めた。
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