山桜の怪
第一回こむら川小説大賞参加作の一作目。
【ごくごく簡単なあらすじ】
絵が趣味の不登校の小学生男子が緑地の山桜の木の前で「サクラ」と名乗る美少年と出会って仲良くなり、彼の絵を描こうとするお話。
【雑記】
久々に書いたホラー。と言ってもゾッとするような怖さではなくほんのり不気味な空気を出しつつ、ポニーテール漢服美少年の艶っぽさを感じていただけたらな、と思って書いていました。
結末は所謂メリーバッドエンドのようなものになっています。少なくとも順一本人に関して言えば、サクラと出会う前よりその後の方が幸せな日々を送っているのですが、一方で、急に息子を失ってしまった両親からすれば悲劇以外の何物でもないでしょう。結局、現実世界に順一の居場所はなかったんだな、と思うと遣る瀬無いような思いもありますね……
サクラのキャラも個人的には気に入っています。適度に饒舌で友好的でありながら、やはり何処か不気味さを感じさせ、それでいて艶っぽい……みたいな。虐めっ子たちを泥の底に落として殺害する冷徹さも持っています。私も「僕は君が欲しいよ……」って熱っぽい目をした美少年に言われたいですね……あと美少年にポニーテールと漢服は鬼に金棒。暴力。
サクラの正体や山桜のことについては全く情報が開示されていないのですが、やはり美少年は適度に謎めいている方が艶めかしさが増すと思っているのでご想像にお任せします。実は構想では山桜は町の北の方にある山から移植されたもので、順一の父が少年時代にその山でサクラに会っていた……みたいな話も考えたのですが文字数オーバーしそうだったのでばっさり切りました。何故漢服を着ているかについては完全に「美少年に漢服着てほしかったから」という理由に依るものです。瞬瞬必生。日本の神様の中には七福神のように中国やインドからやってきて日本で信じられるようになったものもあるので、サクラもそういった外来神の一種をイメージしています。
【終わりに】
前まで中国史蘊蓄の挿入については「読者を置き去りにしていないか?」と悩んでたんですけど評議会の闇の有袋類さんに「知らなくても楽しめる、知っているともっと楽しめるというバランスは本当になかなか難しいと思うので、武州さんの美少年が色っぽいに次ぐ強力な武器だと思います」との評を賜ったのでこのスタイルを磨いていこうと思いました(私も宮城谷昌光先生の小説の小ネタ好きですし……)
あと闇鍋さんの「「彼を絵に描きたい」というのも見方によっては「自分の内に取り込み自分のものにしたい」という一種の魔的な欲求・行為ですから、怪と人間の違いはあれど二人の少年は互いに相手を自分のものにしたい、欲しい、と思っている、この両思い(と言っていいのか)になったとき怪は人を取り込むのですね。そのために美しく魅力的なのだと、捕食の仕組みを見る怖さがありました」という解釈滅茶苦茶好きです。幼いながらもそういった粘ついた後ろ暗い欲求を抱く順一くん……良い……
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