穢汙の泉

 双葉屋クソ小説大運動会参加作。

【ごくごく簡単なあらすじ】

 明の万暦ばんれき時代の紹興が舞台。その地にある禊泉けいせんという泉を巡る人々のお話。

【雑記】

「クソ小説」というのを額面通り受け取った結果生まれた一本。「真面目な顔しながら突如全裸踊りを始める」みたいな作風を目指して、敢えて硬い文体を改めずに脱糞描写を書くことにしました。

 題材に取ったのは、明末清初の浙江省せっこうしょう紹興市しょうこうし生まれの文人である張岱ちょうたいという人物が著した「陶庵夢憶」という随筆の一節「禊泉」です。張岱を題材にした小説は多分カクヨムで初めてでしょう。浙江省紹興市と言えば古くはえつの国(呉越同舟の越ですね)があった場所で、近代では魯迅の生まれ故郷としても知られている土地ですね。禊泉に関しては作中で解説してあるので割愛させていただきます。人糞の投下はオリジナルであり、実際には藁屑などのゴミを投げ入れたり泥水を流し込んで埋めて使い物にならなくしてしまったという旨のことが同随筆内に記されています。

 この張岱という人物、妻子持ちですが美少年に目がなかったらしく、作中に挿入される美少年とのシーンはそこから来ています(妻子持ちとは言っても、三十代の頃に妻に先立たれた後は後妻を娶らなかったのですが)。中国は伝統的に割と男色の逸話に事欠かない地域ですが明や清の頃は様々な社会階層においてお盛んだったそうですね。張岱さんは生涯無官の遊び人だったのですが(張岱の父は科挙に落ち続けてとうとう挙人になるのを断念したそうで、それが影響しているという意見もあるようです)、一方で読書家で博識であったようなので故事の引用も無理なく行わせることができました。

【終わりに】

 中国史の蘊蓄を挟むというスタイルは前作「お清と亀公丸」と変えずに所謂kuso小説というものを目指してみました。普段は「美少年という耽美性の塊であるものを扱う以上あまり下品に受け取られたくはない」みたいな所があるのですが(それは別として巻グソの絵を描いて喜んでる美少年ショタとかは可愛いかも……とか思ってしまう)、その辺の思考を一旦頭の中から追い出して全裸踊りをしてみるのも中々楽しかったです。

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