第30話 なぜ、魔王が? と勇者は唖然
ロンパは心の中で爆笑していた。
あの魔王はメイルンの遠い親戚なのだから、
メイルンは唖然としながら、指をさして断言するのだ。
「こ、こ、こんなところになぜ魔王がいるんだああああああ」
「うん、ナイス反応だね、遠いい親戚としてうれしいよ、メイルンちゅうあああん」
――ドスバコバドア――
「何気にどさくさに紛れてあちこち触るな、きしょいぞ、おっさん」
「なぬん、ここにはいろいろと事情があって出張していてだな」
「アモスってやつにかい?」
「ん」
……とこちらを見る魔王さん、
ロンパは目をそらして、他人のふりを決め込む。
魔王は事情を呑み込める。まぁ事前に説明していたこともあるからだ。
「そうだ。アモスから命令されたのだ。ここに来る冒険者をちぎってはなげ、ちぎってはなげろと」
「何気にセリフが古臭い」
冷たいツッコミを浴びせたのは、ネネーネだった。
「な、そこの魔法使い、うるさい」
「つーか魔王ってこんなにしゃべるのか?」
「そこの爺黙れ、お前だってずっとこんな暗闇の中にいたらしゃべりたくなるぞ、しかももれなくあっしはホームシックにかかりそうだぞ、あああ、魔王城がまぶしいぞい」
「あっしってどこの時代の人だよ」
「そこのドラゴンの皮だらけのへんてこりんは黙ってろ」
「なぜか、俺様だけ待遇わるくね?」
「安心しろ、魔法使いも、爺も皮だらけも同じだ」
「し、師匠、皮の前にドラゴンつけてください」
ロンパがにやりと笑う中、あまりふざけてると殺すぞというオーラを魔王に送ると。
「うぉっほん、オジキ殿も切れそうなので、ここから君たちを殺します。どうせ蘇るでしょ、ちなみにあっしもよみがえるのよん、なぜかって出張だからなのおおおお」
「では遠いい親戚さん、成敗してくれるわ」
「さぁ、かもん、勇者のご一行さん」
ロンパは4人がそれぞれの武器を握りしめて戦うさまを見ていて、
なぜか懐かしさに近いものを感じていた。
ロンパと先代勇者と先代戦士と先代道化師と色々な仲間で戦ってきた。
他にもいたのかもしれない、長い月日がロンパから仲間たちの記憶を消していった。
断じて脳に障がいがあるわけではないのだ。
沢山の知識を身に着け、
沢山の魔法儀式をしてきて、
不老不死に偶然なってしまった哀れな糞爺、それがロンパなのだから。
魔王には3つ目があり、腕は4本ある。
魔王は基本的に攻撃魔法を使うことはしない。
初代の魔王は女性であり魔法と剣をあわせもつ危険人物だった。
しかし初代の魔王の弟であるそいつは強化魔法だけに特化している。
つまり自分の肉体を強化することにより4剣流というものを成功させているのだ。
なぜなら4本の剣すべてが尋常ならざる重さであり、
鞘に魔法をかけて軽くしているがそれを抜いてしまえば、魔法の効力が消える。
4本ある重力の剣が暴走すればこの城とてただではすまないので、
数層だけ魔法防御の力を底上げしている。
そんなことは知らずと、魔王は4本の剣を抜くことはしない、
この魔王の弟はとてつもなく遊び癖があり、
よく初代魔王と戦っていた時に愚痴られていたほどだったりする。
それだけの悪ガキなのだが、もう数千歳は超えているのだ。
それなのに死にたいと思わないのはやはり種族の違いなのか、
それともロンパが精神的に弱い人間だからなのか。
メイルンがさっそくとばかりに容赦せず、勇者の印を発動させる。
メイルンは右手と左手を合わせるとそこから火炎放射のごとく炎を吐き出させるつもりだと思った。
そこから炎の剣が出現した。
そういえば彼女は炎の剣も扱えるはずだった。
2本の炎の剣を出現させて、紅き炎はメラメラと煮えたくっていた。
ダンサー&シンガーとなったネネーネが歌とダンスとさらに魔法でもってメイルンとフィーズとドースンを強化する。
4人は走り続けていたが、ネネーネが踊りと歌で走るスピードが遅くなる。
さすがに歌いながら、踊りながら進むわけにはいかないのだ。
メイルンとフィーズとドースンが並走する。
3人のスピードは速かった。
フィーズはアイテムボックスを展開して、多種多様な武器で応戦する準備を。
ドースンはポケットからコレクトしている武器を取り出して、すぐに小型化から巨大化させる。
それはキューブハンマーであった。
別名ウォールハンマ―のそれは、魔力で壁が増殖する。分離したり合体したり、
「ふははははは、伊達に3つ目なわけではないわい、この3つ目でお前ら3人を確保してやろうではないかああああああ」
1つ1つの行動がお芝居臭いけど、
ロンパとしてはありがとうと感謝している。
魔王の重力の剣が4本持ち上げられる。
ということは小声で強化魔法を呟いたのだろう。
メイルンが2本の剣で右と左から振り落とす。
炎の斬撃が飛ぶ、それを勇者の印で次元斬りにする。
しかし魔王の背後から迫るあらゆるパラレルワールドの次元を飛び越えた攻撃は、
軽く重力の剣で薙ぎ払われる。
それも見ることもせずに。
「目を見ればわかる。メイルンよ、まだまだよのう、その目がこの背後を捕らえていた。それも見える角度からしてここかのう、と思ってちまうのだ。ぶわっはっははは」
「うるさい、うるさい、くそおっさん」
メイルンが地団駄を踏んで、距離をあける。
「やっぱりここは俺様のアイテムボックス攻撃だああああ」
フィーズはアイテムボックスから大量の武器を握りしめて投げては投げまくる。
もはや容赦のない投げ攻撃に、
「普通さ、ロングソード投げるなよ、これ投げるもんじゃねーぞ」
「うるせい魔王、成敗されろ」
「次は杖って投げる意味ねーでしょ」
「ナンセンス、それは爆弾の杖さ」
「なんだとおおおおお、ってはったりかいいいい」
「魔王、ナイスボケ」
「そこ、何気にむふふしてんじゃねーぞ魔法使い」
「だから、うちはダンサーとシンガーなの」
「どっちかはっきりしろ」
「ダンサーでシンガーで魔法使いみたいな」
「みたいなじゃねーぐへえええええ」
「いえ、すまそん、話に夢中になっているので隙ありとばかりに」
「そこの爺、人様が話しているでしょうがああああ」
「お主? わしが爺とわかってため口だとおおおおお」
「なぜそこできれるんだいいいいいい」
なぜかドースンは爺とため口で言われると切れるらしい、
これは新しい発見だと思った。
そしてそれを知りえたことはロンパにとって吉となるだろうと思った。
なぜなら目の前の景色を見せつけられているから。
そこには巨大な鎧の身を包んだドースンがいたのだから、
なんとドースンはお腹のところに鎧をコレクト化したものがあり、
その鎧を巨大化させることにより、まるで変形型防具のように鎧を身に着けたのだ。
全身からはびこる気配は普通の物ではない。
「わしゃはこれを魔法鎧と呼んでいる。遥か昔ドワーフの一族が魔法と鎧の融合のために、嫌いなエルフと同盟を結んだ。エルフの魔法とドワーフの鍛冶を合体させた結果、これができた。そしてわしゃはお主をぶちころす。めったんめったんにしてくれようぞ、メイルンよ、そしてネネーネよ、さらにフィーズよ下がっていなされええええええ」
本当に吉と出たようだ。
ドースンの切れようは半端ではなくて、
これがロンパに向けられたらと怖気が走った。
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