第31話 なぜか魔王VS爺

 メイルンとフィーズとネネーネは不本意ながらもロンパが見守っているエリアまで引いてきた。


「師匠、ドースンはああなってしまうと止まらないのです」

「それはどういうことなのですか?」


「昔、小人族がいました。それも見た目的にはガキですがドースンよりは年齢を食っています。それでもドースンは爺と呼ばれました。そこまでならいいのですが、そのあとに命令口調で言われて、あのように魔法鎧になりまして、その酒場は崩壊したのですが」


「が?」


「その国自体もめちゃくちゃになりまして」

「どれくらいやばいんだよ、あの爺、てっきり武器とかコレクトして運び人としてせっせと運ぶ人だと思ってた」


 フィーズがドラゴンの皮に包まれた鎧をぽんぽんと叩きながら呟いて見せた。


「それは違う、あのドースンはいろいろなものを抱えて生きてきた。運ぶだけが運び人の仕事ではないとよく言っていた」


 ネネーネがたどたどしく説明してくれるなか、

 フィーズとメイルンはうなずき合いながら。


 ロンパは遥か前方のうっすらと闇色に見える光の中で問答無用とばかりに戦闘を繰り広げている化け物たちを見ていた。


「つーか、爺何者おおおおお、魔王に匹敵するぞおおおお」

「ふん、若造が、死にさらせやあああああ」


 キューブハンマーことウォールハンマーを振り回す。

 魔法鎧の効果のせいか、

 魔法の力が動けば動く度に強化されていく、


 その魔法量はもはや魔王をしのぐほどになっている。


 つまり今まであれだけの戦闘をやらかしておいて、


 そのやらかした戦闘力はダンジョンを上るにつれて強くなっていき、

 その力が暴発しそうに溢れていたのだろう。


 それがドースンさんの冷静さを失わせており、

 結局としてさらなる力となる。


 ドースンが魔王をぶち倒したら、

 ドースンの力はさらに強くなる。


 ということはロンパは殺される確率が跳ね上がるということ。



 だが今は、魔王(弟)とドースンの戦いを見ていたいと思っていた。


 4本の剣が無造作に動く。

 重力の剣が暴発してしまいかねないほど魔力強化しているようだ。


 重力の斬撃は、そこに道をつくる、

 逆さになっている魔王。

 魔王は斬撃の上を歩くことが出来る。


 それに対してドースンは全身から魔法力をほとばしらせながら、闇色の光で染まる空間を飛翔してみせる。


 魔王は斬撃から斬撃へとジャンプして、また斬撃をくりだして足場をつくる。


 普通ならこのダンジョンは崩壊していてもおかしくない、

 

 しかしこの時のために7階と8階と9階は強化してある。



 斬撃を歩くなんて信じられないと一時期ロンパも思った。

 しかし魔族にとって重力とは斬撃であり、斬撃とは重力である。


 よって重力がある斬撃の場所を歩くことは普通とされている。


 その原理は理解できないのだが、魔族の力とはそういうものらしい、

 初代魔王に教えてもらった。


 空中戦になりながら、

 魔王とドースンはぶつかり合う、

 何度もぶつかってはぶつかっては弾かれては弾かれてなど、

 そんなことは当たり前、4本の剣がひらめくたびに、道がうまれる。

 ドースンは全身から魔法を次から次へとほとばしる。


「エルフが、ドワーフが、誠心誠意こめたこの魔法鎧、こんなところでええええ」


「あっしにも魔王としての誇りがある。魔王としてこんなところでやられるわけにはいかぬ、それも勇者ではなくて、どこぞのドワーフの糞爺になああああ」


「その失礼な話方を正す為にもお主にはお尻ぺんぺんが必要のようじゃなああああ」


「残念だったな、お前が倒れろ」

「それはこっちのセリフだああああああ。わしをなめるなぁああああ」


 魔法鎧の力が凝縮されていく、

 そこに未知のエネルギーが溢れかえっているように。


 魔王の4本の腕からそして3つ目からはするどい強化がほとばしり、

 そこから先はハンマーと剣が無造作に振るわれているところしか見えない。

 ほぼ見えない斬撃となり、打ち合うこと数分、


 2人は落下するように地上に向けてやってくる。


 よーく見ると、ドースンが両腕で魔王の体を支えながら、落下しているのだ。


 つまり、ドースンは飛翔できる。

 勝利は決したかに見えた。


 魔王が地面に激突する。

 ドースンは背後にと飛翔する。


 みんなは勝利を確信したのだが。


 そこには人型の魔王の姿はなくなっていた。


 そこには魔王そのもの、化け物としか言いようのないそいつがいた。



「おのれええええ、人が手加減しているといい気になる糞爺がいるようだなあああ」


「ふ、それでこそ好敵手じゃ」



 どうやらドースンは魔王のことを好敵手と認めたようだ。


「なら、化け物には化け物だなあぁああ」



 ぬぉおおおおおおおおという叫び声をあげながら、

 ドースンの鎧は弾け飛んだ。

 そうエルフとドワーフがつくった鎧はお腹の内臓を守る部分と兜の部分だけ、そのほかは見せかけだった。


 そしてそこから現れる盛大なる筋肉、


 筋肉がむきむきに溢れかえる姿は筋肉の化け物。

 ドワーフは小柄とされているが、その大きさは人間をも超えており、巨人と同じくらいになっている。


「うぉおおおお、これが魔法鎧解放という力じゃ、さて、魔王君、お仕置きの時間だねぇえええ」


「おまえは最強な爺だ。気に入ったお前を好敵手と認めよう、この城の攻略が終わったら。魔王城へ遊びにきてくれ、盛大にもてなそう」


「ふん、ようやく分かりおったわいなぁ」


 その姿、鬼のようでありながら、大きなワニのようでもある化け物の魔王、

 その姿、鎧をお腹のところと兜だけ、だけど筋肉むきむきドワーフ巨人。


 2人は見つめ合い、そして地面を爆ぜた。



 2人がすれ違ったとき、そこに立っていたのは、ドースンただ1人だった。

 魔王はまるで光の結晶になるように消滅していく、

 それは魔王の死を意味する。


 魔王は復活して、魔王城に帰ってもらう約束となっている。


 いろいろと感謝せねばなるまいと、ロンパは思っている。


 ドースンはこちらを向くとへなへなと巨人化していた筋肉が縮んでいく。

 鎧も巨大化したときにはじけ飛んだ部分がまるで魔法の力のように戻ってくる。


 鎧を身に着けながら、ドースンはコレクト化すると、

 ドースンの鎧はお腹の腹巻みたいな所に収まったのであった。


 ネネーネが回復魔法をぶち当てたりして、

 即座に回復させ、気絶させないようにする。

 なぜなら、連戦が続くと思われる。


 メイルンは非常に気まずそうにしながら、

 みんなをまとめると。


「さぁ、いくぞ」


 みんなを連れて、8階層を目指す。

 目の前には巨大な闇色の扉があるだけだった。

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