第29話 勇者の証

「ここから先はわたくしが片付ける。みんなはフォローして」


「どうやら普通じゃない何かに気づいたようだね、メイルン」

「フィーズ、メイルンはいま力をためそうと」

「ふーはー、ちと疲れた。勇者の力ってやつを運び人に見させてくれんかい」


 メイルンは深呼吸を何度も繰り返す。

 そう、その力を使うときは、深呼吸が大事なのだ。

 よく先代勇者と喧嘩したものだ。

 勇者の証を使う時は、決まってロンパたちが後方に行かざるおえないと、


 そうするとうまく戦うことができたいのだと。


 ロンパがたどり着いた結論は、

 勇者の証を使っている勇者がいたら、

 放っておくこと、

 何もしようとしてはいけない、


 それは危険なことだから。


 何度も認知できなくなっている。


 勇者メイルンの存在がこの世界から消滅してしまうような、

 そんな危うさを感じさながら。

 それでもあいつらは立ち上がる。

 勇者たちは何度だって立ち上がるのだ。


 空間がひずみをもつ、

 すでにメイルンは動いている。

 空間の先に広がるサタンに向かって別空間からの斬撃。


 メイルンはまっすぐ斬っている。


 しかしサタンの背後から斬られる。

 サタンは訳の分からない顔をしながら、

 後ろをみるも、そこには何もない、空気が張りつめてくる。

 サタンは訳がわからない、


 天使と悪魔が合体した姿がサタン、

 これは研究に研究をかさねた、生物兵器みたいなもの、


 知識はぜんぜもたせていない、

 そのサタンはきょろきょろと周りを見ている。

 

「これでしまいやああああ」


 メイルンは呼吸を整える。

 剣が時空を通り過ぎる。

 それは次元そのものであり、

 空間の遥か先、その先に剣がいたるところが刺される。

 パラレルワールドを利用して、

 すべての空間から剣を突き刺す。

 紅き炎を発動させながら、

 すべての魂そのものを燃やすかのように、



「ぐがああああああ」


 

 サタンの断末摩がその場を支配した。

 フィーズ、ネネーネ、ドースンは唖然とした表情で、その圧倒的な力に魅せられていた。


 ロンパはいつしか涙を流していた。

 遥か昔の友はよくこの技を使っていた。

 勇者には同じ力も宿るとされる。

 勇者には別な力も宿るとされている。


 

 サタンは目の前から消滅すると、

 巨大な宝箱が出現する。

 

 ロンパはふわふわと着地すると、

 魂化を解除、


 そこには1つの宝箱があり、


「みなさんよくやりました。師匠となれたこととてもうれしく思います。この宝はみんなで分けてください」


「ですが師匠もいらないのですか?」


 フィーズが尋ねてくると、

 ロンパは首をふる。


「いえ、必要ありません」

「そうですか、とりあえずドースン殿が宝箱事預かるということにしましょう」


 メイルンがそう断言すると、

 ドースンもうなずく。


「一度戻りますか?」


「いえ、一気に駆け上がります。師匠も勢いが大切だと思いますよね」


「では、びしばし指導していきますよ」


「ぎゃ、師匠が暴走してる」


 ネネーネが笑うと、その場は暖かい空気に包まれた。



 ロンパたちの目の前には巨大な扉が待ち構えている。

 まるで最強なボスがこれから待っていますよと暗示しているようだ。


「ところで勇者の印使えたな、メイルン」

「はい、すごく不思議な気持ちでした。深呼吸すればするほど強くなっていく力なのだと、わたくしにはとても怖いものに感じました」


「そうか、昔の知り合いもそういっていた。知り合いに勇者がいたんだよ」

「その勇者も勇者の印を使えたのですか?」

「ああ、ばりばり使ってたぞ、はっきりいって引いたぞ」

「そうですか、その勇者の名前は?」

「ああ、忘れてしまった。なぜ忘れたのだろうな」


「さぁ?」

「だが、その勇者の印には力が無数にあってな、その一つが次元斬り、お前が使っていたもの、実は、右手と左手を合わせて炎を出現させる狼の炎も勇者の印の一部、もしかしたら覚醒してから使えば違った使い方を見つけることができるかもしれないぞ」


「なるほど、それは試してみたいものです」

「ここでは試すなよ」


「もちろんですよ」


 この道のりまでに覚醒しつつあるのは、ネネーネのシンガー&ダンサーだけではなくて、

 メイルンの勇者の印もそうだ。もしかしたらドースンもフィーズも覚醒しないだろうか、

 そうしてくれるとこちらが本気を出しても殺してくれそうだ。残りの3人にすべてがかかっているのだ。うまくやってほしい。


 彼らは7階層に挑むべく、

 巨大な扉をゆっくりと開き始めた。

 その後ろをただただ期待という希望をもって見つめている師匠がいた。

 それがロンパという師匠であり、アモスというここのラスボスなのだ。


 そこに存在しているのは光ではなく、

 闇の光、

 暗闇そのもの、

 闇そのものであって、暗闇ではないのかもしれない、


 空間じたいが暗く、ねっとりと、暗い照明でほんのりと見える景色、


 そしてそいつは言うのだ。


「ふはははははは、よくぞ参った勇者共め、この魔王が相手になろうか」


 7階層のボスは魔王そのものであった。



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