第18話[一章最終話] いつか好きって言えたら………

「じゃあ勇太からで!」


「いや。神野から」


「先に言ってよ!」


「そっちこそ!」


「…………」


「…………」


(どうしよう…… 好きだって言わなきゃ! ほんとの恋なんてしたことないけど。勇太が側にいるだけで楽しいし安心する。これがほんとの恋なのかな? でも振られたら? ああ〜 観覧車が回りきっちゃう)


(どうすりゃいいんだ? 好きって言った方がいいのか? でも振られるのは目に見えてるし…… これは仕事上の関係。何回もそう言われている。くっそ〜! どうする?)


こうしてる間にも俺たちの運命を乗せて観覧車は回っていく。俺たちが迷ってる間にも観覧車は関係なく回り続ける。


◾️◆◇


「じゃ、じゃあ勇太? 私から言うね。その…… 私は…… 私は………」


とその時とてつもなくでかい音がして目の前が光った。


「きゃー⁉︎ な、何⁉︎」


「は、花火だ。すっげえ!」


気がつくと景色が花火に飲み込まれていた。夢の中にいるような美しさ。まさにほんとの絶景だ。


「うわぁ………」


「…………」


俺たちは黙ってしばらく花火を見ていた。もう少しで観覧車が回りきることも忘れて。吸い込まれるような感覚だった。


「か、神野? 言いたいことってなんなんだ?」


俺はふと我に返って聞いた。


「ああ…… その……… 今日はありがとね! 私ほんとに楽しかった。仕事上なんて言ってたけど、ほんとに楽しかったよ❤️」


俺は神野の笑顔に見惚れていた。それは花火よりも断然美しく可愛かった💕。


「ああ。俺もだよ!」


「…………」


「…………」


もう少しで観覧車は地面に舞い戻る。


(ふぅ〜 やっぱり好きって言えなかった。でも楽しい気持ちは伝えられた。もし。もし時がきたらその時は……… 好きって言えたらいいなぁ。だからこの気持ちは心の中にしまっておこう。バレないように)


観覧車が戻った。短いようでとても長く感じた。やはり観覧車っつうのは不思議なものだ。


「はぁ〜 今日はほんとにありがとね! じゃあもう帰ろっか?」


「ああ。そうだな」


俺の気持ちは伝えないでおこう。神野がもし。もし俺を好きになってくれたら…… その時は俺の気持ちを伝えるぜ。まぁアピールはしていくけどな?


「そういえば勇太の言いたいことって何だったの?」


「ん? ああ。あれか?」


俺は一息吸ってから言う。


「お化け屋敷でお前のおっぱい揉んだんだけど。すっげえ柔らかかったぞ?ってな」


みるみる神野の顔が赤くなっていく。


「もう💢〜! 勇太のエッチ💢〜!」


いつの日かこの恋が本物になるのか。誰にもわからない。


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