第13話 やはり女子でも意識してしまうものなのである

「はぁ〜 明日はデートかぁ」


この前鍵をなくしたせいでこんな羽目になったんだったっけ? 自分が悪いからしょうがないんだけど‥‥‥


「って何意識しちゃってんの⁉ 私。相手はたかがあの天野勇太でしょ?」


そう。なぜかここのとこ最近あいつといると楽しい。しかも無性にあいつに会いたくなってしまう。って私は何をバカなことを考えてるの?


「あいつは仕事上の同僚。私があいつに恋なんてするわけないわ!」


私はそう言い切って家を出た。


◾️◆◇


「ごめんね〜 優香〜 待った?」


「今来たところだよ〜!」


そう。私が唯一、神野亜美と神田夢を出せる場所。それが親友の中谷優香の前だけだ。


「今日はどこ行くの?」


「う〜っんとねえ・・・ ここのカフェなんかどう?」


「ああっ! ここ行きたかったの💖! ここにしましょ!」


「ふふふ。相変わらず亜美は甘い写真に目をつられるね? 太っちゃうよ?」


「‥‥‥わかってるわよ」


こんな女子トークで盛り上がるのもここだけだ。むしろ私の本音が言えるのもここだけだろう。


「なんか亜美嬉しそうな顔してるね〜? 彼氏でもできちゃった?」


「そ、そ、そんなわけないじゃない。な、何バカなこと言ってんのよ?」


「ふ〜ん…… まあ、でも1人に絞りなよ? いつまでもこんな仕事やってないでね。こんなことしてたら絶対変な人来るよ?」


「……わかってる。わかってるけど………」


私にはやりたいことがある。別にお金が欲しいわけじゃない。


「まだあの夢もってんの? 亜美も物好きだねぇ? それともまだ引きずってんの?」


「別にそういうわけじゃないよ。私は自分の意思でやってんの!」


「まあ。それじゃあいいけどね……」


人には夢がある。そしてその夢はきっかけがあるから夢になる。それを叶えようとする時に人は少しおかしくなるんだろう。


「亜美、明日空いてる?」


「え? 急に? 明日はちょっと無理だよ〜」


「どっか行くの?」


「まあ……ちょっとね」


明日はデートの日。別に大事なわけじゃないんだよ? 一応。一応仕事だから……


「やっぱ彼氏かなぁ? ちょっと妬いちゃうなぁ。青春って羨ましいよ〜」


「べ、別にそんなんじゃないって〜!」


「うそばっかり〜 昨日、私が電話したこと知ってる?」


「え? 気づかなかったけど……」


昨日はたしか……… 疲れてすぐに寝ちゃったっけ?


「たまたま電話繋がったんだけど…… 亜美寝言でず〜っと{勇太くん❤️ 勇太くん❤️}って呟いてたわよ?」


「な、な、な……… なによそれ〜⁉︎ そんなわけないでしょ⁉︎」


ま、まさかこの私が……⁉︎


「ほら。これ録音」


スマホから音声が流れる。


〔はぁ〜 勇太くん❤️ 勇太くん❤️とデート。日曜日。むにゃむにゃ……〕


「…………」






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