サイコパス診断
刑事は何度か口を開け閉めした後に意を決したように口を開いた。
「じゃあ、今は答えてくれますよね?」
「ええ、まぁ、、、言える範囲なら」
「では、北条みなみさんとはどのようなご関係ですか?」
「関係もなにも.......今井君に紹介された演劇好きな女性というだけで」
「いやいや、そんな筈はありまんよ。今井君から聞いてますからね」
「.......あぁ、まぁ、多少意見が違いましたけど、同じ文豪を愛する者として通じるところもあります」
「、、、本当に?」
「ええ、もちろん」
「今井君の演劇に対する.......助言の様なもので対立していたんではないですか?」
「対立とは穏やかじゃありませんね」
刑事はもちろんと言うように頷いた。
「いえ誓って対立なんて事はありませんよ、、、むしろ良好でした」
「.......証明できますか?」
「はは、困りまたね」
教授はほんの少し微笑んでいる.......様に見える様に表情筋を動かすとそう言った。
「証明、になるのかどうかわかりませんが、彼女には自由に私の部屋に入れる様にしてありましたよ」
「やだ、なにそれ」
いきなりのカミングアウト的な発言に思わず反応したのは園子だった。
「.......それは、つまり、、、そういう関係って事ですか?」
「いえいえ、あくまでも友人として気を許したという事です」
「はぁ.......友人ですか」
若干不明な点が残るものの、重要な証言がとれた。
これで、風祭大悟が指摘した防犯カメラに映った被害者がなぜ教授の部屋に入れたかという謎が解けた.......が。
「でも、現在はその北条みなみさんの指紋認証登録は抹消されてますよね?」
「はい」
「なぜです?」
「いや、単純に関係性を疑われたくなかったというだけです」
「.......なるほど」
一応納得した様に頷いた刑事だったが、もちろん全く納得していた訳ではなかった。
──被害者が殺された直後に被害者との関係性を疑われる証拠を抹消して更に面識がないと嘘をつく、、、これほどわかりやすい犯人の行動もない──
心象は真っ黒である。
「あの.......そろそろ次の授業の準備をしたいんですが」
刑事が更になにか質問しようとした矢先に遠慮がちにそう言ったのは中岡だった。
そういえば、もうすぐ13時になりそうだ。
「えー、では長らく付き合わせてしまいましたがこれで一旦閉めましょうか.......あ、そうだ。最後にひとつだけ」
ここはひとつ大きな収穫があった事でよしとして切り上げようかと思った刑事だったが、折角関係者がこれだけ集まってるのだからと思いついた事があった。
「なんでしょう?時間がかかるなら.......」
「いえ、全く時間は取らせませんから」
中岡が渋り出した台詞を制する様に刑事は答えた。
「皆さん全員目を瞑ってもらえますか?」
「なになに?何が始まるの?」
と園子。
「まさか.......犯人は手を上げてとか言うんじゃないですよね?」
と今井翼。
「まさか.......簡単な心理クイズです。正直に答えてくだされば結構」
刑事は全員が目を瞑ったのを確認した後に頼まれていた質問をする。
「えーあなたと私はある人から1万円を貰います」
「え?ほんとに?」
と園子。
「いえ.......例えです。残念ながら」
「なんだー」
「鈴木さんリアクションは嬉しいんですが話が進まないので出来れば控えて頂きたいのですが」
刑事の苦言に園子は舌を少し出して応えた。
「えー、で、ですね。この1万円を2人で分けるんですが.......どういう割合で分けるかは私に委ねられています.......よろしいですか?五千円づつに分ける事もできるし、9999円と1円に分ける事もできます」
「えー!ズルくない?」
とやはり園子。
「いえ、その代わりといってはなんですが、あなたには拒否する権利があります。ただし.......拒否権を発動すると、私もあなたも1円も貰えません」
「うわぁ」
「いいですか?よく考えてくださいね。では今から私が分配する比率を言っていきますけど、すきなタイミングで拒否権を発動してください」
全員が軽く頷く動作をした。
「では最初は私が六千円であなたが四千円です」
園子だけが手を上げた。
──ここで上げる人も逆に珍しい
「では、私が七千円であなたが三千円」
誰も挙げなかった。
「では、私が八千円であなたが二千円」
森井蘭と中岡が手を挙げた。
「では、私が九千円であなたが千円」
高橋優子がおずおずと手を挙げた。
「では、私が9900円であなたには百円さしあげます」
──やはり挙げないのか、しかし、よりによってこの2人とは
刑事は心の中で舌打ちした。
「では私が9999円であなたには1円差し上げます」
やはり、教授と今井翼は手を挙げなかった。
「ありがとうございます.......皆さん目を開けてください」
そう言って、刑事は手を軽く叩いた。
「なになに?これで何がわかるの?」
「えーと、何がわかるかまでは聞いて居ないのでまた今度ということで」
刑事は照れた様にそう言うと頭をかいた。
「えーなにそれー」
園子は不満そうな台詞とは裏腹に嬉しそうなトーンでそう言った。
「すみません、またお会いした時のお楽しみという事にしてもらえませんか?」
「えー!じゃあ何時にしましょうか?」
と園子。
「えーと、また今度ご連絡します。皆さんお疲れ様でした」
刑事は当たり障りのない返答をすると頭を下げた。
──それにしても、被害者の日記に書かれていた特徴と一致する2人がゲームで最後まで残るとは.......。
刑事は今井翼と
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