更なる偶然
「ひ.......教授!」
中岡が驚いた様な声を上げた。
言われた教授も驚いた様な顔を一瞬したが、直ぐに元のポーカーフェイスに戻って中岡に片手を上げて落ち着く様にゼスチャーした。
それを見て刑事は振り返ると、先程から頭に浮かんでは消えている本人の登場に目を大きく開いた。
「これはこれは、噂をすれば影ですね」
「噂されてたとは光栄ですね。おそらく良い噂ではないのでしょうけどね」
「いえ、そんな事は.......」
ないとは言えないので刑事は言葉を濁した。
「それより、教授もここに来る事があるんですね?」
「いやぁ、近くを歩いてたらたまたま外から刑事さんやらうちのゼミ生やらが居るのが見えましたのでね」
「あぁ、それでですか。私に会いたいとは思わないでしょうから、ゼミ生にですか?」
「いえいえ、刑事さんとも会いたいですよ。同じような境遇の人間としてね」
「そりゃどうも」
「まぁ、それと、あんまりうちのゼミ生が虐められてないか心配になってと言う理由もあります」
「ははは虐めるなんて.......とんでもない....そうだ、どうですか?教授も話し合いに参加されませんか?」
「良いんですか?」
「願ってもありません」
そう言って刑事は近くのテーブルから椅子を拝借して隣に座る様に促した。
「では早速ですけど、教授は嘘をついてましたよね?」
「.......はい?」
突然の嘘つき呼ばわりに大学教授は憤慨することも取り乱すことも無く、何を言ってるのかわからないといった様子で短く応えた。
「
そう言われてやっと気がついたという顔をした。
「あぁ.......その事か、別にうそをつくつもりはなかったんだが結果的にはそうなってしまった様だね」
いや、様だね。じゃないだろ.....
刑事は心の中で悪態を付いたが顔には出さないようにした。
「嘘じゃなければなんなんです?」
落ち着いてる様でいて幾分か詰問口調になってしまうのは致し方ない事だった。
「いやいや、本当にわからなかったんですよ。あの死体が北条さんだなんてね.......服でも着ていればヒントになったかもしれませんがあの通り、全裸の身体の上で燃やされてますし」
「ひっ」
全裸の身体の上で服を燃やされたという惨状を知らされて女性陣の中から声が上がった。
「.......これは失礼。知らない人の方が多かったんだね.......まぁ、犯罪心理学を専行するならレアケースとして知っておいても悪くはないがね」
「教授.......それは通りませんよ、被害者が北条みなみさんだとお伝えしているはずです。指紋認証のドアロックを調べていただいた時」
「ええまぁ、そこで、はじめて知りました」
「じゃあなぜ?」
「.......聞かれませんでしたから」
はぁ?
おそらく声が出てたとしたらそう言ってそうな顔で刑事は固まった。
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