第10話 王立フレイディル魔法学院
フレイディル王国。
そこは、
俺たちが今から向かう王立フレイディル魔法学院は、屋敷から徒歩十五分程度離れた場所にある。屋敷はこの王国の北区にあるのだが、魔法学院は中央区のど真ん中に存在する。
立ち並んでいるレンガ造りの建物はそのほぼ全てに煙突があり、冬にはそこから石炭を燃やすことで黒煙が噴き出す。
今は春ということもあり、それは見られないのだが。
「改めて思いますが、大きな建物ばかりですね」
「サクヤの国ではこのような建物はなかったのですか?」
「えぇ。木造建築がメインでしたから」
周りにそびえ立つ建物をじっと見つめて、俺はそう声を漏らす。俺にとってみれば、この王国は異界そのもの。
また視線の先には、この王国のシンボルがそびえ立っていた。
一見すれば
「──
「そうですね。
「そうですか」
その話はそこで打ち切られた。しかし俺は彼女の隣で歩みを進めながら、じっとその
そうしてついに到着した王立フレイディル魔法学院。この王国の中でも、土地だけで言えばおそらくは一番の広さになるだろう。魔法を学ぶものにとってこの学院に入学することはそれだけで特別であり、誇りでもある。
外観は煉瓦作りの建物にはなっており、それがいくつもの棟に別れて構成されている感じだ。
「さて、着きましたね」
「はい。今日から入学と思うと、少し緊張しますね」
「大丈夫ですっ! 私が側にいますからっ!」
そう言ってアイリス王女は俺に笑みを向けるが、その言葉に少しだけ戸惑ってしまう。本当に明るいお方だと改めて思う。
「はは……それだと立場が逆ですね」
二人でそう談笑をしていると、ヒソヒソと周りから囁くような声が聞こえてくるのだった。
「見て、あれが……」
「
「それに護衛は東洋の人間らしいよ?」
「本当だ。黒い髪に、黒い瞳だわ……」
このようなことになるのは、分かっていた。いや、アイリス王女に限っては昔から同じだったのはバルツさんに少しだけ聞いている。
今まで通ってきた学校では、敬遠されることが当たり前。それこそ、友人などいないのが普通だったらしい。
「行きましょう。サクヤ」
「はい。アイリス様」
冷静にその言葉を受け止め、二人は進んでいく。
すると、後ろから大きな声が聞こえてくるのだった。
「おーほっほっほっ! アイリス王女。お久しぶりでございますわ」
その優雅な所作に視線を奪われる生徒もいた。
大胆に押し出されている
顔は整っているが少しだけ目が鋭い印象である。
しかし特筆すべきは、彼女の制服は……普通の生徒とは異なっているのだ。
白を基調としているのに変わりはないが、胸には真っ赤な薔薇の刺繍が目立つように刻まれている。
一目見ただけでも分かる、その端麗な容姿。胸にある真っ赤な薔薇の刺繍は彼女の性格を反映しているかのように、神々しく輝いて見える。
そして、俺は改めて彼女が誰なのか尋ねる。
「アイリス様。お知り合いですか?」
「えぇ……彼女は──」
アイリスの言葉を遮るようにして、目の前に立っている彼女は意気揚々と自己紹介をする。
「【
それは明らかに彼を見下しているような視線。
それを理解できないほど、俺は世間知らずではない。
ついに、二人の学園生活が幕を上げるのだった──。
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