第29話 聖薔薇騎士団
無事に収束したかのように思えた今回の騒動。
今までに類を見ないほどの、
そのように考えていたが【
おそらくは戦いがあったであろう地下の現場。そこに調査が入ったのだが、そこにはカトリーナが倒れているだけで残りの痕跡は何も残っていなかったのだ。
まるでこの場所にカトリーナが一人で倒れているだけのように。
その後。カトリーナに事情聴取が行われたが、彼女はこのように供述した。
「……本当に申し訳ありません。わたくしはその……誰かを追いかけていたのは、間違いなのですけれど……全く思い出すことができないのです」
彼女には記憶が残されていなかった。残っているのは、今回の騒動が始まったのに際して【
それ以降のことは何も覚えていなかったのだ。
そして安静にするためにカトリーナは入院することになったが、残された【
その最上階のフロアを全て支配するのが、【
続々と団員たちがある一室へと入ってくる。円卓にそれぞれの席が用意されており、七人分の椅子が円卓の前には用意されている。
カトリーナの席もあるのだが、今回は彼女は欠席である。
最後にやって来たのは【
腰まである長い銀色の髪を靡かせながら、彼女は悠然と歩みを進める。腰に差している聖剣は黄金の輝きを放っており、その煌めきを一見しただけでもそれが聖剣であると容易に理解できる。
灼けるような真っ赤な双眸に、高く伸びている鼻。その肌はまるで雪のように白く、おおよそ現実離れした容姿である。
そんな彼女の名前は、オレリア=クローズ。別名──
二十三歳にして【
「さて、皆さん揃いましたね」
柔らかい声。しかし、その顔はまるで精巧な機械のように無表情。感情が抜け落ちているような顔で、彼女は今回の件を整理する。
「改めて、皆さん。今回は
カスト=ファーノ。彼は、【
その顔を全て覆うようなマスクをつけていた。それはまるで鳥のような形をしており、くちばしの部分が長く伸びている。両目は黒く覆われており、彼の表情を伺うことはできない。
そんな彼はこの王国の中でも
それを杖から剣へと変化させたのが、
【
「こほん。団長からもご説明がありましたがぁ〜、今回の件はどうにもおかしな点が多いようですねぇ〜」
おかしな口調ではあるが、これが彼のいつも通りのものである。決してふざけているわけでないのは、全員理解していた。
「まずは
手に持っている資料を見ながら、カストはそう語る。
おおよそ彼の指摘は的を射ていたのだが、完全な根幹の情報は入手できていない。それはやはり、あの現場での情報が綺麗に消失していたからだ。
「そして、フォンテーヌ嬢が倒れていた件。あの地下室はもともと誰かが使っていたようなんですよねぇ〜。しかし、その痕跡は全く見当たらない。
概要を全て述べた。そしてそれに対しては、序列第三位であるシンシアが質問を投げかける。
「少しお聞きしたいのですが、カトリーナさんの命に別条は?」
「ない、と断言できますねぇ〜。
「そうですか。それでしたら、良かったです」
ホッとしたのか、胸をなでおろす。シンシアはずっとカトリーナのことを心配していたので、彼女が倒れて入院していると知った時は動揺したのだが、今の話を聞いてとりあえずは安心するのだった。
「──妖刀。その可能性は?」
凛とした声が室内に響く。それは団長であるオレリアのものだった。すでに【魔剣使い】の存在はこの王国でも確認されているので、相手は魔剣を使用していると思い込んでいる。
しかし、彼女だけはその可能性を思い浮かべたのだ。
「ふ〜む。妖刀ですかぁ……あれは存在があまりにも異質ですねぇ。未だにこちらで回収できたものは一本もない。聖剣はすでに全てこちらにありますので、残りは魔剣を集めるだけですがぁ……そのあとに妖刀と考えていましたが、団長は妖刀使いがすでにこの王国にいるとお考えで?」
「可能性の話です。【
「ふ〜む。しかし、妖刀は他の【
「えぇ。任せるわ」
可能性を考慮した上で、最後にオレリアは話をまとめる。
「ともかく、私たちの目的に変化はありません。この世界の全ての【
【
そのために【
そして最後に、締めくくりの言葉を告げる。
「──聖薔薇に栄光あれ」
『──聖薔薇に栄光あれ』
その言葉を口にすると、団員たちは改めてその目的のために動き始めるのだった。
【
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