第27話 最果ノ星空
俺は
だがそんなものは俺にとって些事に過ぎない。
「……こんなものか」
切り裂く。
大雨が降り注ぐが、今はそんなことはどうでもよかった。すでにカトリーナ嬢はいない。そしてどこに向かうべきか考えていると、本当に僅かだが
本当に一瞬。感知できるのはギリギリだったが、地下空間に結界が張られたのだけは理解できた。
そうして俺はその場所へと向かっていく。地下への入り口を見つけ、扉を開けるのではなく切り裂く。
そして俺は、今回の件の首謀者であるベルターと向き合う。そのまま躊躇なく、俺は妖刀の能力を開放する。
俺を中心にして溢れ出る
そして、顕現するのは──【
その中でももっとも異質な存在とされている、妖刀だ。
その刀身は
これは間違いなく、【
「……」
妖刀を顕現させると、それを元々所持していた
そして俺は改めて、ベルターと向き合うのだった。
「ふふ。フハハッ!! それが妖刀、妖刀なのかっ! 素晴らしい。聖剣とも、魔剣とも全く違うその【
うっとりとした表情でそう語る。
そう。この二人の出会い自体は、二年前にすでに終わっている。ベルターはちょうど【
その時に偶然出会ったのが、始まり。
互いにその顔を見ることはなかったが、互いに【
かたや、魔剣。
かたや、妖刀。
互いに互いの【
俺の真の目的は、この世全ての【
「──その魔剣はいただく」
冷然と告げる。
そして、妖刀を構える。
地面に水平になるように、上段に構える。互いに距離感を保ちつつ、視線を逸らすことはない。
「ふふ。君もそうだったのだろう? この王女に宿る【魔剣──
肩を竦めるようにして、話を続ける。ベルターが饒舌なのはきっと、
【
さらにはこの場にはすでに四本の【
「……」
距離感を取り続ける。
一定の間隔を取って、俺は決して相手から目を逸らすことはしない。一切の油断などない。
ベルターといえば油断しているようにも見えているが、実際のところは違う。互いのその【
探り合い。
この会話を挟みつつも、ベルターは俺の妖刀の能力を探っている。それこそ妖刀は現在世界では確認できていない【
東洋の地に集中しているという噂もあるが、それを確認した者はほとんどいない。この王国に関していえば、聖剣と魔剣こそが【
妖刀に関しては全くの謎に包まれていると言ってもいい。
それに加えて妖刀はすでに東洋にはない。世界に散り散りになっているというのは、有名な話だ。もっとも俺は妖刀の存在を全て知っているのだが。
「【魔剣──
喜びを言葉にして表現する。
転瞬。俺は話している最中を狙って、地面を思い切り踏み締めて移動。その速度は並みの魔法師では補足することすらできないだろう。
しかし、ベルターはその刀を真正面から受け止める。
鍔迫り合い。ベルタの方は
その事実に少しだけ驚くが、動揺したりはしない。
【
それこそが真の戦いと言ってもいいだろう。
「はははっ! さぁ、私を楽しませてくれっ! 【
その後。俺たちはまだ能力を解放せずに、その剣戟のみで戦いを繰り広げる。切り札を出さずに制圧できるのならば、それに越したことはない。
それにすでにベルターの方は一度だけ、能力を解放している。
そのようなこともあって俺はまだ能力を出さない。
しかし、刀による剣技で縦横無尽に攻め続けるが……致命傷を入れることは敵わない。
ベルターは魔剣の力により、全体的な能力が向上している。それは魔法的な面でも、身体能力的な面でも。だからこそ俺の攻撃についていくことは、比較的容易だった。
「……フッ」
肺から一気に空気を吐き出す。
キィイイイイインと甲高い音が何度も響き渡る。
火花が散り、その度に互いの刀剣が交わる。俺は淡々と相手の隙を窺うが、お互いに理解していた。これ以上は不毛な戦いであり、すでに【
「ふふ。ははは! あぁ……最高だとも。その【
一瞬。
俺が仕切り直すために一歩だけ下がったその時を狙って、ベルターは再び【
あくまでその兆候を理解したというだけだ。
「夢へ
その言葉が聞こえたと思いきや、俺はたった一人。暗黒の世界へと引き摺り込まれた。
「さて、君の夢はどのような夢かな? おおよそその年齢で【
脳内に直接響くその声。
それに対して俺はただ無表情かつ、無反応。刀を握り締めたまま、呆然と立ち尽くしていた。
またベルターの指摘は当たっている。俺のその人生は、おおよそ普通のものではない。
「さぁ、夢の世界で溺れ死ぬがいい」
目の前に現れるのは、俺の一族。
黒髪かつ、黒い瞳。何人もの人間が現れて、俺の方へと近づいていく。
しかし、ベルターは様子がおかしいことに気がつく。その人間たちは、呪詛を吐き出さない。
それに、俺に眠る悪夢が何度も繰り返されないのだ。
俺を中心にして集める人間たち。それは側に寄り添うだけで、何も行動を起こさない。
それと同時に俺はこの世界を見渡して、おおよその能力の真価を理解した。
「ど、どういうことだ……ッ!!? この世界に抗える者など存在するはずがないッ!!」
たとえトラウマを持っていない人間であったとしても、ベルターは他の人間から抽出した惨劇を見せつけることができるのだろう。それを実際に行使しようとしても、この世界は俺の思い通りには動かない。
まるで何かに阻害されるかのようにして、世界は固定されているのだ。
そして俺は事実を告げる。
「だから言っただろう。お前程度の【
その言葉を告げたと同時に、あろうことか右手に握り締めている【妖刀】を自分の心臓に突き立てる。
融解するように上半身の衣服が
俺の体に刻まれているのは、
そして心臓に突き刺している【妖刀】を思い切り
「原点解放──
刹那。
【妖刀──星喰み】は
先ほどと同じ、この世界は暗闇に支配されている。
しかし、俺たちの頭上には見渡す限りの星々が輝き、
爛々と輝く星々の下で立ち尽くす俺たち。
すでにベルターの姿は、俺の正面にある。完全に【
そしてサクヤはその右手に全く別の新しい妖刀を顕現させる。真っ赤な粒子が一気に収束すると、そこに現れる別の妖刀だ。
「な、は……あ……!? まさか、お前……複数の【
驚きの声を上げる。そもそも、【
そのありえない現象に
そしてその紅蓮の【妖刀】を構えると、改めて告げる。
「ここは原初の世界。さぁ、せいぜい
最後の戦いがついに幕を上げる──。
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