最後121日目④

『こちらプリティーキャット、なんか暗〜い倉庫に連れ込まれた、オーバー?』


「おい!」


「こちらダーティベイビー、そこに“目標はいるのか? オーバー?」


「おいきょるぁ!」


『……うーん、何人か子供がいるけど、そういやボク、そのツェプェリンくんがどんな子か知らないからねぇ』



 あれから数時間後、俺達は恵の考えた『世界一プリティーな恵ちゃん偽の人質になってツェプェリンくん助け出しちゃおう大作戦』を実行中だ。

 

 作戦の内容は、作戦名で大体わかって頂けたとは思うが至ってシンプルだ。

 

 俺たちの中で唯一タマキンブラザーズに面の割れてない恵みが偶然を装って喧嘩を売り、そのまま拉致られる。そして通信の魔法石を使ってアジトに潜入した恵と連絡をとり、そこにもし攫われたギュスターブの舎弟、ツェプェリンがいる事が確認できたらタマキンブラザーズのいない時を狙って俺達で突入、救出するという流れだ。

 

 ちなみに現在、恵がタマキンブラザーズに喧嘩売って拉致られるとこまで成功中。


 

「なるほど確かに、おいギュスターブ!」


「なんだぁくるぁ!」


 俺が振り向いて声をかけると、ギュスターブは涎を飛ばしながら物凄い勢いで凄んでくる。猛獣か。


「いや、何をそんなに怒ってんだ」


「キュナイがぁ、さっきからむしすんからどぅあ!」


 ビュン!


「うぉっと」


 振り下ろされた馬のオモチャを間一髪でかわす。


「……いや、悪かったよ」


「ふん、わきゃりゃあいい」


 俺が頭を下げて謝ると、ギュスターブはふんぞり帰って偉そうにいう。

 

 あれ? こいつ、少し大人になったか?


 普段なら今のは殴りかかってきてるはず。


「ところでギュスターブよ、そのツェプェリンとやらはどんな奴なんだ?」


「ものすぎょいバカだ!」


 ……マジか、こいつにそう言われるほどとは、最早そいつ脳が溶けてうおっ!


 ビュン! と空を切る手刀を間一髪でかわす。


「しうれーなきょとかんがえたろぁ!」


 ……危ねぇ、あんなん食らったら骨が折れるぞ。そしてこいつ勘いいなアホのくせに。


『もしもーし! こちらプリティーキャット! ツェプェリンくんがどんな子かわかんなくて困ってるオーバー?』


 おっとそうだった。


「ふむ、こちらダーティーベイビー。ものすごく、ギュスターブのアホ野郎が言うくら……ぶおっと危ねぇ、いにはバカな子供らしい」


『え〜、何さその情報、もっとこう、見た目の特徴とかないの?』


「おいギュスターブ、そいつ、見た目の特徴はないのか?」


「なんだとぉ? あいつはせかいいちばかだ! みたりゃわきゃる!」


 ……なるほど。


「……えーっと、なんか、見たらわかるくらいバカらしいが、そんな子供はいるか?」


『何その無茶なオーダー⁉︎ ……うーん、っていうか攫われてる子供たちを、そんな失礼な目でうわぁっ!』


 通信の魔石に当てた耳がキーンとなるくらいの音量で恵が叫ぶ。


『くーくん、あ、ありのまま今起こったことを話すぜ?』


「いや急にどうした」


『いや、なんというか、すごい子がいる!』


「ふむ、どんな奴だ?」


『なんというか、ほっぺがナルトみたいにぐるぐるしてて、凄い眼がニヤけてて、【宇宙一の舎弟】って書いた服着てる5歳くらいの子がいる』


 なんだそのありえないキャラデザの子供は。……しかし。


「おい、ギュスターブ」


「なんだぁ?」


「まさかとはお前の舎弟、……ニヤケ面で、ほっぺがぐるぐるで、服に【宇宙一の舎弟】って書いてたりは」


「するぞぉ!」


 ……さて、突入するか。



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