生後121日目③
「……なるほどねぇ、そりゃ大変だったね」
アホそうな幼児2人を脅して撤退させた(言葉にすると最低だな)後、怒ったギュスターブは暴れ狂ったが、何度か殺されそうになりながらもなんとか宥めた。
そしてあんなショボい奴らになんでやられていたのかが気になった俺は事情を(舌っ足らずなギュスターブの言葉を30分かけてなんとか解読して)聞き出した
「くりゃあ! おりてこいよぉ!」
「いやぁおかまいなく、ボク高いところが大好きだからさ?」
いつも襲いかかってくるヤバい暴君とはいえ誠に遺憾ながら一応俺の同居人、その子分が拉致られてるとあっちゃあほっとくわけにはいかない。
しかし、いくら相手が幼児とはいえツェプェリンとやらが何処に拉致られてるかさえわからない今、ちょいと賢くてプリティなだけの0歳児であるこの俺に打てる手立ては思いつかない。
だからそこは他力本願。
とりあえず公園に恵を呼び出して事情を説明した。
すると、事情を聞いた恵は、木の上に登ってギュスターブを恐れながらうんうんと頷いている。
「成る程ねぇ、そりゃ辛かったねぇ、大変だねぇ」
「だろ?」
「でよぉ、……どうすりゃいいと思うよ?」
「……うーん」
恵は木の上で器用に胡座をかき、うんうんと唸る。
「……ねぇねぇギュスターブくん?」
「なんだぁ? ひとごみにむかってねこじゃいあんとすいんぐするあそびしてもいいのきゃあ?」
「何その怖い遊び怖っ! ……じゃなくて子分くんのことだよ」
「あ! そうだ! ツェペリンのばかがらちられてんだった! しきゃたない! もうころすかぁ!」
恵から“子分”という言葉が聞こえた瞬間、ギュスターブはクワッとめを見開き咆哮した。いやこいつマジで野獣かよ。
「いや殺すて……」
恵もかなり引いた様子で後ずさる。
「だってタマキンのかたっぽころしてやったらぁ! のこりがびびってツェプェリンのいばしょぉ、はくぞぉ?」
いや、馬のおもちゃ振り回しながらなんて物騒なことを言いやがるんだ。
しかも奴の言ってることはある意味正解、たしかにその手順を踏めばツェプェリンの居場所を吐かせることは可能であろう。確かに完璧なプランだ、……幼児が1人死ぬことを除けばだが。
マジでどんな人生送ってきたらこんな育ち方すんだ? 全く親の顔、……は知ってるから是非とも裸が見てみたいなマジで。……レナ俺の魅力に気付いてくれねぇかなマジで。
「……ねぇねぇぎ、ギュスターブくん?」
ギュスターブの発言の恐ろしさに声を裏返らせながら恵が問う。
「なんだぁ?」
「そのタマキンくんはさ? どーしてそんな風に、人を攫っちゃうんだい?」
「それがあいつらのやりかただぁ! てきのなかまらちってぼっこぼこだぁ! よわいくせにひきょーなやつらめ!」
こいつも大概だが、タマキンとやらも随分浮世離れした子供のようだ。
そんな手口、最早不良を飛び越えてヤクザのやり方だろ。
「落ち着け、怖いから」
「うるさい! あいつらこんどあったら、めんたまのいっこずつたかいたかいだぁ!」
……この事件は絶対に俺達でなんとかしなきゃならない。
胸に手をあて、そう強く心に誓う。
俺は身内の5歳児が他人を失明させるところなんて見たくない。
「……いつもやってんの?」
「そぉだあ! あいつらはけんかはぜったいそうやってんだあ!」
「……なるほどなるほど」
「……いつも人を攫う、子供はバカ、ボクは猫、……いける」
恵はひとしきりうんうんと唸った後、得る時に曲げた右手の親指と人差し指を顎にあて、めいいっぱいのドヤ顔を作る。
「くーくん、……ボクにいい考えがある!」
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