生後61日目⑥

 人は嘘をつく生き物である。


 それは利益のため、保身のため、そして時にそれは優しさのためにも為されている。


 そんな世界で生きる俺たちは、いつしか人の言うことを疑うクセがついてしまった。


 それ決して悪いことではない。


 自分や大切な人を守るためには必要なことだし、それがあるからこそ信頼できる人を見つけられた時は嬉しいものだ。


「へぇ〜、大変だったんだなァ」

「……ぅう、……クナイちゃん、……辛かったねぇ」

「……俺に出来ることがあれば何でも言ってくれよ?」


 俺は今、嬉しい。


 先程俺はジョセフ、レナ、ダニーに俺が一度死んで記憶を保持したまま転生したことと、その状態で新しい母親に色々ヤられる苦悩を一通り話した。


 こんな荒唐無稽な話を疑いもせず真剣に聞いてくれ、更には同情して涙まで流してくれている。


 久しぶりの優しさに触れ、目の奥に熱いものを感じる。


 遠慮して、先読みして、恐れながら人と接するのが苦手だった。


 怖いから、寂しいから、俺はいつだって無遠慮だった。


 それのせいで大変なことにもたくさんなった。


 捻りのない真っ直ぐな好意、親切。


 それは俺が死ぬ前から大好きなものだった。


「ならよ、一つ頼んでもいいか?」


「おう、なんでも言ってみろよ」


 こんなにも熱いハートを持った奴らに、常識に囚われた遠慮を向けるなんて失礼極まりないことだ。


 ならばここは、全力で甘えるのが人情と言うものだろう。


「レナの●●●が見たいから協力して欲しい」


 ふむ、届いただろうか?


 俺の熱いハートは。



 3人の方へチラリと視線を上げる。



「「「………………」」」


 あれ? おかしいぞ?


 3人の様子を今度はしっかりと確認する。


 ジョセフは何かを諦めたような顔でため息を付きながら気まずそうに視線を彷徨わせている。


 ダニーはまるで過去を悔いるかのように俯き、黙りこくっている。


 レナは固まった歪な微笑に驚きと呆れを張り付かせながら、変なポーズで固まっている。


 ふむ、…………辛い。


 好みなタイプの女にヒかれるのはいくつになっても堪えるものだ。


 今更ながらに、普通はこんなことこんなタイミングで言われりゃ誰だってヒくってことを。


 そしてもう一つ思いだした。


 俺は、……………………バカだったんだ。


 もしも神がいるのならば、たった一つ願うこと。


 どうか一つ教えて欲しい。


 どうして俺は、…………こんなにもバカなのだろう?

 

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