第114話 リンのデビュー

この世界の音楽と言えば吟遊詩人の物語風の歌くらいしかない。

そもそもメディアが無いのだ。

レコードやカセットテープすらない。

もちろんCDなんてあるわけがない。

ゼロからのスタートになる。

苦労するだろうが、楽しそうだ。


ミクの説得の末、完全には理解できていないようだがリンの協力を得られた。

それで、ミクからピアノとレッスン所をお願いされた。

ブルームーンの城の一角に巨大鏡のあるダンスレッスン室とピアノやギターなどを揃えた演奏室を作った。

ミクとしては、リンのソロの他に5人組でのユニットも考えているそうで、それなりの大きさにした。

早速、リンの歌唱力のチェックだ。

音楽の無い世界で育ったのだから仕方がないのだが、絶望的だった。

ミクがピアノに合わせて見本を見せる。

さすが、元実力派アイドルだ。

引き込まれてしまう歌声だった。

いっその事ミクがデビューすればいいのにと思ったが、それは嫌らしい。

ミクのマネをする形で歌やダンスを覚えていくことにしたそうだ。

デビュー曲だが、残念ながらミクには作詞、作曲の才能はない。

それで、ミクのアイドルグループ時代の曲を使うことにした。

異世界なので著作権の問題は起こらない。たぶん。

リンの歌声にバフ効果を持たせたらどうだろうかという案が出た。

リンの歌を聞くと元気になるとか、そんな感じで話題になるのではないかと。

早速、リンに歌唱力、応援歌、魅了のスキルを付与した。

応援歌はパーティメンバーのみに作用するスキルだが、改良し観客にも効果をもたらすようにした。

そして、もう一人やる気になっている人物が現れた。マリだ。

衣装は任せろと言って、部屋に篭ってしまったらしい。

パーティメンバーのカレンとサユリが困っていた。

リン本人のプロデュースに関しては、ミクとマリに任せることにした。

それとカレンにはギター、サユリにはベース、マリにはキーボードを任せることにし、バンドメンバーとした。

一月ほど経つとリンがアイドルらしくなってきた。

奴隷上がりのためかいつもオドオドしていたが、今では見違えるようになった。

フリフリの衣装もとてもかわいい。

歌唱力も上がり、感動すら覚える。

そこで俺は発表の場を考えることにした。

まずはショッピングモールにステージを作り、そこで歌うことから始めることにした。


デビュー当日、客は疎らだったがこの世界初の音楽が鳴り響いた。

何事かとショッピングモール内の客が立ち止まり固まった。

腹に響く重低音、心地よい歌声、ステージでは美少女たちが笑顔で踊っていた。

慣れてきたのか若者たちの熱狂し始めた。

通行人たちが漏れてくる音楽を聞き押し寄せてきた。

そこでスキルを発動し、観客にストレス解消、スタミナ回復効果をもたらした。

元気になった観客はさらに熱狂した。

アイドル リンが誕生した。

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