第7話 銀髪の少女
「……イッテテテッ! まったく、いつの時代の術式だ。こんな雑な転移は初めてだ。俺ならもっとスマートにできるぞ!」
転移の衝撃でぶつけた頭を擦りながら、顔をしかめてグラビテウスは文句を言う。
まだ日が天高く昇る晴天の下、仰向けの状態で草原の上に転がっていた。
今の状況を掴もうと、その場から立ち上がろうとする。
だが、身体の上に何かものが乗っかっていて上手く動かせなかった。
「ん? なんだ、これは?」
掴んで軽く持ち上げて見ると、それは人の姿をしていた。
日の光を浴びてキラキラと輝く長い銀髪に、見る者を魅了する端正な顔立ち、傷一つない雪のように白い肌、と人並外れた美しさを持っている。
だが、その身に纏っているのは要所、要所を隠してはいるが、断じて服ではないボロきれともいうべき代物だった。
グラビテウスは「ふーむ」とうなって、ゆっくりと少女を身体の上からどかした。
そして、少女の均整の取れた二つの豊かな膨らみの片方に手を添えたその刹那、
「! パンチ!!」
「――ぐふっ!?」
パチッと目を開けた少女の、容赦のないグーパンチで腹を殴られて吹き飛ばされた。
「いきなり何をするのっ!?」
キッ、とこちらを真っ赤に染まった顔で睨む少女。
胸を庇うように両手で隠して、語気を荒げて訊いてくる。
彼女の瞳は澄み切った海のような碧色だった。
「お、俺はただ、お前を起こそうとしただけだ……」
なかなかにいいものを腹にもらい、グラビテウスは息も絶え絶えに、ゆっくりと上体を起こしてから言う。
「女の子を起こすのに胸に触るなんて聞いたことないよ! 私がものを知らないからって嘘言わないでっ!」
「嘘などではない。俺が知っている女たちはそうやって起こすと皆、喜んでくれたぞ?」
これは紛れもない事実だ。
グラビテウスがまだ、自分の城で暮らしていたころ、慕って寄り添う女は何人もいた。
その誰もが先ほどのようにして起こすと、喜んでグラビテウスに笑顔を返すのだ。
「……あなた、一体どんな生活をしていたの?」
少し引き気味に少女が訊いてきた。気持ち、グラビテウスとの距離を離した気がする。
「い、いや、そんなことよりもまず、自己紹介をしよう。先ほどはお互いに名乗っていなかったからな。俺の名はグラビテウスだ。お前は?」
少女の態度から、この話題を続けるのはよくないと、グラビテウスは切り替えて名乗ることにした。
「私の名前はデルニエル。はじめまして、グラビテウス。でも、なんだか変な名前。まるで魔王みたい」
そう言ってボロきれを纏う銀髪の少女、デルニエルは名乗った。
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