第11話 可能性
「…そういえば、お前中二病じゃないのか?この学園の生徒なんて、皆そんなものかと思ってたんだけど」
ペアワークの説明が始まる前の準備体操の合間、俺は素朴な…と言っても一般に聞くことはそうないであろう…疑問を投げかけた。翔は肩をすくめ、
「彼らのように豊富な語彙があるのならばそう習いたいところだが…生憎そうもいかず。言うなれば俺は『演技派中二病』…と言ったところかな」
「…中二病にも色々あるんだな」
俺はそれしか言えなかった。
「…話題を変えようか。鎌居、君の魔法の腕はいかほどかな?」
翔の言葉に俺は顔をしかめる。
「…それがさっぱり。正直自分に魔法の才があるかどうかもよくわかってないし、ずっと下位クラスでテキトーにやってたからね」
「ふむ…俺の見立てだと、君の実力はくすぶっていて…まだ伸び代があるように思えるが、どうかな?」
「…本当か?」
思ったより明るい答えに、俺は意外さと喜びの混じった返事をする。無いと思っていた才能を褒められるのは嬉しいものだ。
同時に違和感もあった。今まで魔法に大した興味を示さなかった自分が、突然その先にある自分の「可能性」のようなものを示唆されただけで、これほど喜んでいいものなのか?
人の言葉一つで沈んだり浮き上がったりする、そんな自分の変化が気持ち悪い。
蠢く複雑な感情に気づかない翔が、ただ俺と笑顔で向き合っていた。
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