第5話 入学試験

親が勝手に進学先を決めたとはいえ、私立学校として試験は存在した。

反抗期の一端でわざと落ちてやろうか、それとも適当に受かって何もなく6年、あるいは高校で別の学校を受験する算段で3年は居場所を確保するか、という悩みに至り、俺は後者を選択。

「生活能力も備えてないのに追い出されても困るから」という、至極真っ当(少なくとも俺はそうだと思っている)な理由だ。


面接や集団討論に小論文の練習、勿論筆記もある程度勉強して、迎えた試験当日。

恐ろしく大きな校舎の、やけに広い一教室にビシッと座る数十名の学生たち。

全員の机に置かれたのは、一冊の冊子。しかしそこには教科名も注意事項もなく、ただ「星屑学園 入学試験」の文字がでかでかと書かれているのみだった。

試験開始のチャイムに合わせて、ページをめくる。紙の擦れる音が部屋に響く中、目に入った1ページ目にはこう書かれていた。


「この学園に出願した理由と、現在想定している進路を述べなさい。」


…早速、詰んだ気がした。

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