第4話 入学の話

あれほど星屑学園について酷いことを言ったが、何も自分からこんな地獄に足を突っ込んだわけではない。

事の発端は小学6年生のある日、既に俺が問題の中二病を卒業した後のことだった。


母さんが何も言わずに、俺の目の前に一つの冊子を出した。

「…何、これ」

「アンタの進学先よ。ここ、受ける手続きしといたから」

唖然。というか、「受ける」ってことは大方私立中ってことだ。面倒なことになりそうなので、とりあえず反発した。

「は? いや俺普通に市立中行きたいんだけど」

「アンタは、一人でいいんでしょ?」

この一言にカチンときた。やっとまともになった子供に取り合おうとしない母親に、どっちが子供だと言いたくなる。

「…あーそう。俺がその考えやめたことは聞いてくれないと。なるほどなるほど。…ここ私立みたいだけど、落ちたらどーすんの?」

喧嘩するのも面倒だからと適当に放ったその一言がなんだか逆鱗に触れたようで、目を閉じて長ったらしく愚痴を並べ立て始めた。目を閉じてるのをいいことに、俺は部屋にこもった。我ながら酷い子供だ。

この感じだと数十分ほどあの状態でじっとしていてくれそうだ。その間どうするか悩んだ俺は、スマホでその学校について調べることにした。

星屑学園。中高一貫校、寮あり、異様に広い校舎に…魔法学?

興味がないわけじゃないが、なんというか…言いようのない不安感がある。まあとにかく、試験だ。

受かりたいとは思ってないが、かといってそれ以外にいい進路を知っているかと問われれば、それもない。とりあえず合格して、ヤバそうなら別の学校に入ればいいだろう。そんな適当な見通しに落ち着いた…


…この時ネットで「クチコミ」のページを見なかったことを、俺は3年程経った今でも後悔している。

非中二病患者の阿鼻叫喚を見て、この運命から逃げ出せたかもしれないのに。

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