Ⅲ 教室の渾沌
はたまた、すでに皆が帰った後のとある教室でも……。
「――それじゃあ、手作りチョコ選手権、始めたいと思いまーす!」
「イエーイ!」
他には誰もいない教室で、女子生徒三人がくっ付けた机を囲み、それぞれに自作してきたチョコレートを見せ合う品評会を始めようとしていた。
三人ともそれなりにカワイく、きゃぴきゃぴした声に溌剌とした笑顔の典型的なJK達であるが、どうやら色恋沙汰の本命チョコよりも、いわゆる〝友チョコ〟を女子同士で楽しむタイプであるらしい。
三つの机を繋げて作ったテーブルの上には、色とりどりの鮮やかな箱が三つ、その中央に置かれている。
「じゃ、みんな、蓋を開けて! いっせーのーでっ!」
音頭をとる女生徒の合図で、三人は息を合わせて自分の持ってきた手作りチョコレートの蓋を開ける。
「キャぁぁぁーっ!」
だが、蓋を開けた瞬間、やはり中からは煙とともにあのご婦人が姿を現し、三人は同時に甲高い悲鳴を教室内に響かせる。
しかも、今度は箱が三つなのでご婦人も三人だ。皆、これまでと寸分違わぬ姿をしており、その上、三人が三人まったく同じ、まるで三つ子のような風貌である。
「ちょ、チョコがなんでぇ……」
「な、なんか知らないけど……これ、ヤバくない?」
「や、ヤバいよ。早く逃げよ……キャァァァァーっ!」
特に何をするわけでもないのだが、なんだかステージにでも立つかの如く机の上でピンと背筋を伸ばし、ただただ上品な笑顔を湛えているだけのご婦人達の姿に、怖くなった女生徒達は大慌てて教室を逃げ出した――。
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