19話.出て行って。
「愛葉、何やってるんだ。」
知らない声であたしはびっくりして先輩から離れた。
「それにお前は誰だ。」
部屋が暗くてよく見えないけど、あの知らない声の男はたぶんあたしの知らない人だ。
「お父さん…。」
あたしから離れた先輩が怯えた声で言う。
暗い部屋の中でも確かに見える怒りの目をしたあの男はあたしの前に来た。すの次の瞬間、あたしの頭はあたしの意思とは違う方向を見ていた。頬の痛みを感じたのはその次だった。
「お父さん!何やってるの!」
先輩の大きな声を始めて聞いた。
「お前が誰だか知らないが、お前がうちの娘を誑かしたんだろう!」
あの男は大きな声で怒鳴った。
「早く出て行け!もう二度とこの部屋に来るな!」
あの怒鳴り声を聞いてあたしは慌てて部屋を出てまだ乾いてない服をきて先輩の家を出た。家を出る時、とある女の人とすれ違った気がしたけどそんなことは視界に入らなかった。雨はまだ続いていて後ろから先輩とあの男の大きい声が聞こえ、何か破れる音もした。どうしてこんなことになったのだろう。いきなり何が起こったのだろう。
傘もないあたしは雨に打たれながら帰りたくもない家に帰った。
お父さんは久しぶりに日本に帰る機会があったので私を驚かせるつもりで私に内緒で来たようだ。結局、それが悪い結果を生んでしまったけど。
そのおかげで今日、私は親と初めて喧嘩をするようになった。お父さんは遅れてきたお母さんに私を病院に連れていくべきだと主張した。ああいうのとつるんでるからこんなことになったんだと自分の娘は何も悪くないと、病院に行って治療すれば何もかもよくなると、一時の彷徨に過ぎないからきっと大丈夫と。もう我慢できなかった。
「出て行って。」
「何言ってるの愛葉。」
お父さんは私の話を聞こうとしない。
「早く出て行けと言ったの!」
「そんなこと言わずに早く病院に行こう?父さんの知り合いの医者に…」
そう言いながら私の手をつかもうとするお父さんの手を強く拒んだ。
「出て行って!」
そう言いながら振った手は激しく姿見にぶつかった。鏡は割、ひどい音をした。そして私の右手からは血が流れた。
「お願いだから出て行って…。」
半泣きでそう言ってから私は崩れてしまったまま、ずっと泣いていた。気が付いた時にはお母さんが私を連れて行こうとするお父さんと連れて家をもう出ていた。
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