17話.プロポーズ。

 「いや…なら大丈夫けど。」

 先輩が不安そうな目をしたまま言う。ひとみが揺れるのが見える。先輩は今とても緊張していることがはっきりとわかる。

 「千花、少し目を閉じてみて。」

 そう言いながら先輩はあたしの目を隠した。そしてちょっと時間がたってからあたしの首筋に冷たいなにかが感じられた。

 「目を開けていいよ。」

 先輩の声に従って目を開け、あたしの首を見た。そこには星柄のネックレスあった。

 「他の人たち見たいに結婚を約束することもできない。だからこれはたぶん拘束。 千花が私だけのものになってほしいの証。」

 先輩は淡々とそう言った。まるで前々から思っていたかのように。

 「だから私も一緒のものにした。」

 そう言った先輩は制服のボタンをはずし、自分の胸元にある星柄のネックレスを見せた。

 「少しひいたよね。でもこれが私の本気。隠してきた心。」

 先輩が苦笑いする。その笑いを見ると、ちょっと、胸が苦しい。



  私の気持ちをありのまま伝えた。私の執着、私の愛の仕方、私の病んでいる心を千花に見せた。千花がどう受け止めるかはわからない。でもこれで未練はない。

 「先輩、あたしは。」

 千花は言い始めた。

 「あたしは先輩のことが好き。一緒ずっと一生にいたいと思っている。」

 緊張して涙が出てしまいそうだ。

 「だからね。先輩があたしに一生一緒にいたいと言ってくれてとても嬉しい。それとこのネックレスもありがとう。」

 これは承諾だよね、普通。

 「でも恋っていうものはどこまで続くかわからないものでしょう?」

 そうだね。

 「恋の期限は三年までという話あるじゃない。」

 そうだね。

 「あたしのこの感情がいつまで続くのかわからない。先輩のその感情もね。」

 そうかもしれない。

 「それに、あたしたちは確かに差別されるし、忌み嫌われるかもしれない。でもね、この続くかどうかも知れない、周りから嫌われるばっかりのこの恋をあたしは一生大事なものにしたい。先輩と一緒に一生のものにしたい。」

 千花は震える声ではっきりと言った。

 「だからこのプロポーズになれない先輩のプロポーズをあたしは受ける。」

 千花が嬉し涙をしながら言う。

 「何があってもずっと一緒にいよう。ありがとう、先輩。」

 千花がそう言ってくれた時に私は前と同じ感情を、いや、もっと強い感情を感じた。この人を手放せてはいけないと。だからこの人の手を一生握ると。心の中で強く思った。

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