16話.大事な場所。

 初詣から日は過ぎ、もう桜が咲くころになった。私と千花はあの冬から今まで一緒に色んな、今までしたことのないことをたくさんやってきた。千花の手に導かれ遊園地にも行ってみたし、一緒にバス旅行もしてみたし、普段の私なら絶対しなさそうなことをたくさんした。千花と一緒だからそのどれもがとても楽しかった。そして千花への執着と独占欲は日々大きくなっていった。


 「先輩、今週の週末にあたしとデートでもしない?」

 そう言いながら私を見る千花のほほ笑みは本当に眩しく感じる。私の手に負えないような輝きを感じる。

 「もちろんいいよ。今度は私をどこに連れて行ってくれるのか楽しみだね。」

 私も笑顔で答えた。

 「今度はあたしじゃなくて先輩の好きな場所に行ってみたい。」

 「私?」

 私が好きな場所?

 「うん。先輩が好きな、先輩にとって大事な場所に行ってみたい。」

 「いきなりそう言われても…。」

 「とにかく今週の週末に考えておくこと。」

 そう言った千花は手を振りながら自分ちに帰った。本当にいきなりそういわれてもな。私が好きな、私にとって大事な場所か。


 「千花、今日は高校の時の制服着て来て。」

 電話で私はそう言った。

 「え、制服?」

 「うん。今日は制服でデートしよう。」


 千花は少し照れる感じの表情で私の部屋に来た。

 「久しぶりに着るとちょっと照れるね。」

 そう言いながら自分の頬を撫でる千花を見ていると昔のことが思い出す。

 「私にとって大事な場所というと一つしか思い出せなくてね。」

 「で、そこってどこ?」

 「千花と初めて会った場所。」


 ここに来るのも三年ぶりだ。そしてもうすぐ千花と会って四年目となる。

 「思えばいつもこのベンチで本ばっかり読んでいたよね、私。」

 「その本を読んでいた先輩がどれだけきれいに見えたか先輩はたぶんわからないはずよ。」

 「千花もその時いきなり隣に表れた誰だか知らない女の子がどれだけ可愛かったかわからないだろう?」

 ベンチに二人で座って話していると昔のことが思い出す。

 「あの時、千花のおかげで私の人生は大きく変わったの。本だけが人生のすべてだった私に本以外の世界を教えてくれてたのが千花なの。」

 恥ずかしくて言えなかった話をする。

 「だからね。ここが私には一番大事な場所。一生忘れられない場所。」

 「先輩…。」

 「千花。私は千花と一生、一緒にいたい。私たちは差別される存在。周りの視線からも隠して過ごすしかない。それでもね。私たちは結婚もできないとしても私は千花と一生を一緒にしたい。千花は…どう思うかな。」

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